今回は、ちくま学芸文庫『隣の病い』より、「霧の中の英国経験論」についてふれてみたいと思います。


前回のブログの「シナプスの笑い 50号」の記事であった、「イギリスの精神医療について」に続いてのイギリスをはじめとした欧米での話しです。

中井先生を含めた4人のグループで、学会発表のためと、「精神医学史」の資料集めにスイス、オランダ、ベルギー、フランスをまわる中での話になります。


この『隣の病い』については、外国での話しが多くでていて、最後はギリシャの詩についてのエッセイになるのですが、私の中では一番この本が理解するのに時間かかっていますてへぺろ


1977年、中井先生は43歳、1ドル270円前後で、欧州旅行は初めてだったそうですびっくり


この英国での経験の中で、さまざまな国の人柄について、中井先生が感じたことがなかなか関心深い内容でした。


たとえばフランスやドイツで道をきいても「知らない」と言われないようですが、自信たっぷりに教えてくれる道が全く違うということが少なくなかったようですガーン


ではイギリスではどうかというと、同伴して英国の国鉄窓口、市の案内所、地下鉄の案内所に、同じ場所にいく道を尋ねて、

『3カ所で同じことを言ってるから多分間違いないと思う。』

といって、切符を渡され、ビールに誘われたそうですが、中井先生はへとへとで断ると、あっさりその方は立ち去られたようです。


この経験から中井先生は「道を聞くことと自尊心のありかと」というエッセイで、こう書かれたそうです。


『どちらが道徳的かと言うことではなくて、英国では「人に嘘を教えること」が自尊心にかかわり、独仏では「知らない」ことが自尊心にかかわるのであろう。』(P236)



しかし、後に中井先生は、


『独仏では自然が優しいから、道に迷っても大したことにならないが、英国ではいのちに関わるからきちんと教えるのだ』(P237)


という説を聞かされたそうですびっくり


この項のタイトル「霧の中の英国経験論」…

なんとなく、タイトルの意味をやっと考えられるようになってきました。