今回もちくま学芸文庫「隣の病い」より、『ある臨床心理室の回顧から-故、細木照敏先生を偲びつつ』について、触れてみたいと思います。
『医師は非常に古くからある職業である。また非常に大きな権能を与えられてきた。』
このような書き出しから、この項ははじまります。今でもそうですが、非常に大きな権利を与えられている『業務独占』のお仕事であるかと思います。続いて、
『臨床心理学の開拓者は多くが医師である』
と中井先生は書いておられ、フロイト、アドラー、ユング、ロールシャッハ、ラカンといった方を例に挙げておられます。
そう言われると、臨床心理士をされている方にとっての悩み…「医師とは違う積極的なものは何か」…
ただ中井先生は先程例に挙げた「臨床心理学の開拓者」について、こう書いておられます。
『臨床心理学に貢献した医師たちは、医師の中では座りの悪い、辺縁にいる人たちある。
医学では光に当たっていない盲点に目を向けた人たちである。』
『(中略)といって、彼らが医師の世界で阻害された被害者であるとか、あるいは医学を嫌って、周辺に向かった逃避者であるという評は当たっていないと私は思う。』
先程あげた開拓者のなかでも、光の当たっておられた方もいらっしゃったり、精神科病院以外から始まっている方もいらっしゃるようです。
おそらくですが、今でこそ人権を大事にと言われていますが、そこには混沌とした悲惨な状況があったようですが、その開拓者の方々が他の医師たちとは違ったのは、
『「ここに宝がある」と感じたことである』
と中井先生は語られています。
精神科医二年目の中井先生に、
『この病院は宝の山だよ』
と声をかけられたのが、この項のタイトル
『ある臨床心理室の回顧から-故、細木照敏先生を偲びつつ』
とある、細木照敏先生という方だったそうです
(つづく)