前回に引き続き、ちくま学芸文庫「精神科医がものを書くとき」の『近代精神医療のなりたち』の続きを書いていこうと思います。
私が前々回くらいに『世界史が苦手』と書いていたのですが、この「中世」「近代」という表記がいつを指すのか、わからなかったんですよね
記憶中心の学習では限界があるなぁと、今更ながら気付かされてます
中世のヨーロッパ(4世紀末のローマ帝国の分裂、ルネッサンス〜16世紀はじめの宗教改革くらい)の医学史の特徴は感染症との闘いが中心でした。
「暗黒の時代」と言われるようにペストの大流行があった時代です。
小氷河期と言われる16世紀くらいから気候変動が激しくなり、農業の生産が不安定な時期だったそうです。
またこの時期は神、キリスト教が中心の時代でありました。宗教を理由にして、戦争や魔女狩りが出てきた時代です。
ただ近代医学において、この魔女から教わった薬が結構あるみたいで、心臓の薬である「ジギタリス」というものがあるようです
17世紀に入ると、キリスト教のカトリック派で行っていた魔女狩りに反対する意見が出たようです。近代精神医学の父ヨハネス・ワイエルという方が、同じキリスト教の枠の中で魔女の存在を否定せず「そんな魔女ごときで神の御意思が左右される事は無い。魔女の大部分は気の毒な精神病の人たちであるから、病気として治療しなさい。」と言われたそうです。
そこから「要するに魔女は働かないのが問題である」として、オランダで最初に作業所ができたようです。また宗教的に「神の御意思にかなう唯一の道は働くことだ」としたカルヴィニズムの精神が広がっていきました。
『このあたりから精神医療が始まった』
と中井先生がかいてるので、17世紀が精神医療の起源と言えるのでしょう。
ただ近代医学でも使用している薬が、現代では患者とみなされるであろう「魔女」達によって作られていたことを知って、なんとも言えない気持ちになりました
また「働く」ということに関しても、ずいぶんキリスト教のカトリック派の意思に影響されているのだとあらためて知ることができました。
中井先生も書いておられるように
『話し始めたらきりがない』
と言われてるように、掘ったらどんどん水が出る感覚に共感しています。
この項の最後に書いておられる中井先生の文章です。
『日本という国は、常に他国と比較しながら、遅れているところを叱咤激励していくことによって進歩しています。これからも歴史を鑑(かがみ)として頑張っていきたいと思うわけです。』
2022年に国連の勧告により、日本の障害者施策の見直しを迫られてます。以下NHKのサイトからの引用です。
私としては、今から60年ほど前にあった「クラーク勧告」からどう変わったのか、もう一度見たほうがいいかと思い、『こころの健康図鑑』というサイトに載ってましたので、こちらもご参照ください。
https://kokoro-zukan.com/wp/wp-content/uploads/2017/06/fba3e8806cb540b5d4f1ac910fa25b72.pdf
今年の医療・障害・介護の制度改定から、やっと世界に向けて動き出したような気がします。
これも他人事ではなく、わがごととして考えてゆき、行動していけたらと思っております。