ノーマライゼーション、再確認① ナオキさんのこと

ノーマライゼーション、再確認② 人の多様性を認める社会をめざしたい

と書いてきて、やっと今回再会したユウコさんについて書きたいと思います。

 

「ナオキさんのこと」で最後に書いたように、
彼は「ふれあい広場活動(ノーマライゼーション啓発活動)」での活動が認められ、
障害者海外派遣研修に参加し、アメリカやカナダを視察研修してきました。
その報告会が、恵庭のふれあい広場事業の一環として開催されたことを皮切りに、
札幌などでも行われたようです。(道社協の事業だったから、当然ですが)
そこで出会ったのが、今日紹介するユウコさんなのです。

それからしばらく経ったある日、遠道さんからビックリする話を聞きました。
「ナオキさん、彼女ができたんだよ。M駅から電車に乗って札幌まで行ってるんですって」。


健康な男性がデートするために電車で行くというなら、何もビックリはしませんが、
車いす利用者がエレベーターもエスカレーターもない高架駅を利用することはとても大変なのです。
駅に電話をして、利用日や時間を伝え、駅員にお願いして移動介助をしてもらい、
電車に乗るのも降りるのも、また帰りの電車についてもお願いしなくてはなりません。
そのようなことが普通のこととしてできるようにすることがノーマライゼーションなのですが、
当時はまだまだそのように行動する人は少なくて、きっと色々大変なことがあったのではないかと想像します。

当然、私は本当に嬉しく思いました。
「視察研修の報告会で出会ったようだよ」と聞いた時は、本当に良かったと思いました。
彼が無理してでも会いたいと思う女性と出会い、楽しいデートの時間を過ごしているのだと思うと、私までもワクワクしました。
その後、ふれあい広場の会場でナオキさんと一緒のユウコさんを見た時、私は二度ビックリ!
背の高いスラッとした美人で、かつ知的な雰囲気の人でした。
しかし、今となってはお二人に失礼な話ですが、一抹の不安も心をよぎってしまったのです。
(どうか彼が傷つくことになりませんように…)

私のそんな余計な心配をよそにお二人は交際を続けたのち、結婚することになりました。
その時の私は、なんと表現したらよいか複雑な気持ちだったと思います。
交際と結婚とは全く違うものですし、私自身の結婚観の範囲では考えられないことだったからです。
私の結婚観はひと時代昔のものでしたから、そこはご想像ください。

ナオキさんの身体の障碍は重度といえるものでしたし、
結婚前後に彼が学生無年金障害者であったことを知った私は、
経済的にも妻のユウコさんが支えていることを知り、さらに驚きました。
ユウコさんはしっかりした職業をもっていましたし、経済的に妻が支えることについては異存のない私でしたが、
それに加えて介護や家庭生活全般を支える覚悟で結婚したんだと思った時、
世の中には私の想像を超える愛の人がいるのだと思いました。

ナオキさんは障がい者の作業所で働いていたので、私が思いがけずB型作業所の管理者になってしまった時、
彼の作業所に行って色々と教えてもらったこともあります。
また、学生無年金障害者訴訟の原告となった彼の関係する集会に行ったこともありました。
今書きながら、そんなことが次々と思い出されますが、

彼は愛する人と共に自分ができることを精一杯頑張って、充実した人生を生きたと思います。
その彼が、ユウコさんが不在の時に亡くなったと知ったのは、もう18年も前のことになります。
遠道さんと一緒にお別れに行った私は、本当に久しぶりにユウコさんとお会いしました。
その時の少しの会話で、彼女は心から彼と出会い一緒に過ごしたことを感謝していると感じた私は、
何度目かの深い感動で心も体も震えました。
それは、結婚という形の多様性への感動だったかもしれません。

私はずっと、彼らの結婚を本当に理解はしていなかったと思います。
というより、どうしても共感や納得にいたらなかったということかもしれません。
魂と魂が出会い、ひかれあい、支え合う形は人それぞれ違います。
その結果、結婚という形をとってもとらなくても、二人か一番良いと思う形で支え合い思いやることこそが美しい。
ナオキさんとユウコさんの姿を通して、私が気付かされ学ばせてもらったことがどれほど多かったことか。

私自身はいまだに、少し古い価値観の中で生活していると思います。
でも、私とは違う選択をした人たちを非難する気持ちにはなれません。
ただ、子どもができた場合には、やはり子どもの幸せについてよく考えた行動はしてほしい。
多くの場合、恋愛の延長線上に結婚しますが、恋愛感情はそれほど長続きはしないものです。
その先に、お互いの生き方への尊重で裏打ちされた、同志としての本当の愛が深まるのではないかと思っています。

先日お会いしたユウコさんとは、ふれあい広場活動の思い出話や、近況報告的な話題に終始しましたが、
この人から本当に色々なことを考えさせられ、学ばせてもらったなあと思っていました。
遠道さんは、出会いのきっかけとなったふれあい広場や、当時の世話役だった私に感謝してくださるのですが、

私の方が何倍も何倍も感謝しなくてはならなかったような気がします。
人との出会いはほとんどの場合偶然ですが、私の人生にとっては遠道さんやナオキさんとの出会いは必然&必要なものでした。
本当に心から感謝しています。

次は、当時出会った若者たちのことも書きたいと思います。