そして、最後のラッパッパ四天王の1人である人物は、すでに雰囲気で周りを圧倒するように一歩ずつ進んでいた。
手を出そうとしていた相手の生徒たちは、その人物の雰囲気の前にたじろいでいた。
相手生徒B「あ、あれが、ラッパッパ四天王のおたべか……」
相手生徒C「すげぇ雰囲気だ……ウチらじゃ近付けねえよ」
最後のラッパッパ四天王は、再び留年したおたべだった。
そして、おたべは自分のことを口にした相手生徒B、Cを横目で鋭い視線を向ける。
BとCはおたべの鋭い視線を見るや、大慌てでその場を逃げ出した。
それを見たおたべは視線を前に戻しながら、今の気持ちをつぶやく。
おたべ「たく、どいつもこいつも……」
?「……情けないですよねぇ」
言葉の途中ではあったが、別の人物の声に邪魔され、おたべは声のした左方向に視線を向ける。
そこには、ゲッコウの腹心であるツンと、その後ろに矢場久根の生徒6人が立っていた。
おたべは身体毎ツンたちの方へと向いた。
ツン「やっぱり、噂通りの実力みたいですね、おたべさん」
ツンは嫌みな言い方をしていたが、“おたべさん”という所だけは小バカにするように強調していた。
一方、おたべは特に気にする素振りすらなく、普段通りの微笑を浮かべる。
おたべ「どんな噂が流れてるかは知らんけど、ウチはウチのやり方と“マジ”でぶつかるだけや」
それを聞いたツンは鼻で笑い、口を開く。
ツン「さて、同盟組んで人数を多くして来たのに、もう4分の3近くが全滅。でも、アンタを倒せれば、勢いは一気にこっちに来るだろうからね」
おたべ「なるほどな、それほどの評価をしてくれてたんはありがたいな。でもなぁ、今のラッパッパはウチ1人倒れたからって、勢いが途切れるほど柔やないで」
嘘偽りなく、さらに余裕な言い方をするおたべに、ツンも表情を崩して怒りが表れだす。
そして、後ろに立つ生徒たちの方へ振り返り、アイコンタクトを送り、改めておたべの方へと視線を戻して口を開くツン。
ツン「行けっ!」
そのかけ声と共に、ツンの後ろに立っていた6人が、おたべへ向かって駆け出した。
おたべは目を鋭くしてから拳を構える。
まず1人目が、おたべにパンチを仕掛けるが、おたべは難なく避ける。
そして、その相手生徒に脚払いをかけた。その相手生徒はグラウンドへと倒れた。
次の相手生徒が右足を蹴り上げて攻撃を仕掛け、おたべは両手を前で重ねて蹴りを防ぐ。
そのまま一気にに距離を詰めて、右フックを決めた。
その後、残りの4人もおたべにこれといったダメージを与えられず、一瞬で倒されてしまった。
あまりに一瞬の出来事のような光景に、ツンに焦りの色が濃くなっていく。
ツンは自分でもその焦りを分かってはいたが、拳を握りしめておたべに向かって行った。
おたべも一瞬で息を整えて、ツンを待ち構える。
攻撃の射程圏内に入り、ツンは右フックを仕掛けるが、おたべは何事もなかったように避けていく。
さらにツンは続けて攻撃を仕掛けるが、おたべは何事もなく避けていく。
自分の攻撃が当たらないことで怒りを感じ、ツンの動きは次第にいい加減さが増しだしていた。
そして、ツンはおたべの顔面に向かって右ストレートを放った。
しかし、おたべは意図も簡単にそのツンの拳を受け止める。ツンの表情は怒りから焦りに変わり、一方のおたべは、余裕な微笑を浮かべる。
おたべ「……ずいぶんと、軽い拳やなぁ」
そう言っておたべは、受け止めていたツンの拳を解放し、さらにそこから押し出した。
さらに右拳を強く握りしめながら構え、思いっきりツンに右フックを決めた。
ツンは改めて、おたべの拳が重さに驚きながら地面に倒れ、しばらく起き上がれないと悟った。
そして、さくらとゲッコウの大将戦は、さらに熾烈化していた。
序盤はさくらが有利に進めていたが、次第にゲッコウも自分のペースに、さくらを巻き込ませていた。
そんな凄まじい戦いを、遠くから観賞や目視する存在がいた。