思いやりを持つ➁ | PADME

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人生を豊かに

感謝を忘れない

 

 皆さんは普段の生活の中で周囲の方々に思いやりを持って過ごせていますか。私たちは他人を思いやり感謝するという事を忘れがちです。特に自分自身に余裕が無くなってしまうと、つい忘れてしまいます。自身が苦しい中、周囲に対して思いやりを持ち続ける事は、とても難しい事です。思いやりとは何をどうすればいいのか?自分の事しか考えていない時は、人のあらを探したり、逆に自分のいたらなさばかりが見えたりと常に苦しみが続きます。

 

 遷化した父は闘病生活にあっても、周囲への思いやりの気持ちを忘れず、何時も感謝の言葉を口にしていました。父は精神的にも肉体的にも辛かったと思います。しかし父が周囲の方々に感謝の気持ちを伝える事が出来たのは、病気になる前からどんなに疲れていても不平不満を言わず、感謝を忘れず、周囲の人に対して思いやりを持って接する日々の積み重ねがあったからです。その思いやりによって周りが救われ、父もまた救われていたのです。

 

 禅の教えの中に、実践する事で人々を様々な苦しみから救済する為の行いである布施、愛語、利行、同時の四つの教え、四摂事が記されています。これは私たちが日常で行う修行であり、菩薩の生き方でもあります。布施とは貪りを離れ世の中の為に何かを行う事、愛語とは思いやりの気持ちを持ち、慈しみの心で接する事、利行とは身分や立場に関わらず、困っている人を助け、他人の為に力を尽くす事、同時とは相手の立場になって考える事です。

 

 父が示した生き方は正にこの布施、愛語、利行、同時の行いだったのではないでしょうか。自身が病気で苦しい中でも私たち家族への思いやりを忘れず、言葉や態度によってその心を示したのです。それにより母や私の子供たちも救われた事でしょう。しかし実は周囲の方々がその気持ちを受け止めた事で、父もまた辛い苦しみの世界から救われていたのです。そうして人の為にお互いに思いやりを持って生きて行く事で、自らも救われて行くのです。

 

 皆さんも御自身の周りに、思いやりや感謝の心を持つ事によって、今よりももっと安らかな気持ちで、毎日を送る事が出来るのではないでしょうか。

 

萬善寺