これまでの話








つづき








星が……すごい……!!




私は急いでCREDOさんを呼びに
部屋へ戻った。


階段を上がって、登山靴を脱いで、
部屋の襖を開けて言った。


「CREDOさん!」


「ふぁっ!?」


襖を開けた音と私の声に驚き、


おきあがりこぼしのように
くゎっと起きたCREDOさんを見て、

最高難度の雑な起こし方だったことに気づき、

申し訳なさと歓喜の二大巨頭に押されて

さらに大きい声が出た。


「あっっ!ごめんなさいっ…!」


「のんちゃん声小さく…」


「ぅあっ、はいごめんなさいっ、CREDOさん!星が見えます!」


「え?ほんと!?晴れてるの!?」


「はい!満点の星空ですよ!!あったかくして行きましょ!」


CREDOさんのフリースをハンガーから外して、
CREDOさんに手渡し、いそいそと部屋から出た。



登山靴を履いて、
手に持っているヘッドライトをつけて、
暗い階段を照らし、

一段一段注意しながら降りて、
夜間用窓口のドアを開けた。




わあ!



すごい!!



すごいね!のんちゃん!満天の星空だね!



はい!



私は願いが叶って嬉しくて、CREDOさんとハグして喜んだ。



やったーうれしー見れたー!ありがとう!ありがとう!ありがとうございますー!


そして暗闇の宝蔵石神社に手を合わせて感謝した。








オリオンが大きい。


星というより
なんだか宇宙船みたいな存在感。


あの三つ星から
何かがやって来そうなほど、
異様に近く見える。


地球に向けて信号を
出しているんじゃないか?

それくらい強く光っている。



東から上ってきたばかりみたいな低い位置にあった。


CREDOさんが言った。


「これから太陽と一緒にシリウスが昇るんじゃない?」


そうだった、ヘリアカルライジング。


そういうことかと、実物を見て認識する。







私たちは頂上へ上がった。


360度遮るものがない全天に
星がびっしりとあった。


そして頭上に天の川が横たわっていた。


子供の頃以来の天の川。




数十年ぶりに見て、なぜかほっとした。



ああ、よかった。



見れてよかった、そうでもあるが
在ってよかったという可笑しな感覚。



日常、たいていの人は忘れてるか、
目を向けることが少ないだろう。



私も忘れていた。この美しい天然ショーが毎晩あること。


それがデフォルトかつ恒常的に、そばにある…というより、


その中にいるのだった、ってこと。





映画館にいるように、映像が展開してゆく。


真っ暗闇に浮かぶホログラム。



アークとイスラエルの民の姿、

イエス・キリストと二人のマリア、
娘サラ、


神剣と平家落人、
安徳天皇、


あたたかい女の人の雰囲気、


豊かな楽園の姿の地球、


地球で最も高度に進化し
繁栄しつづける植物が
光りを映して輝く。


地球にあるものすべて
光を照らし返す。




『人が生きていくのに必要なものは全て与えてある』


火水土伝え文
(ひみつつたえふみ)のメッセージ。







そうかぁ……。



そうなんだ……。



ポータルか……。





そこは純度マックスのエネルギー。


そして圧倒的な幸福感。



こんな幸福感と安堵感に包まれたら

憂いも恨みも嘆きも消えて

愛だけに戻る。





その人たちも見上げただろう星空を

私も今、見ていた。




あの人たちも私も

この星に癒されて

素(もと)へと回帰していった。














懐かしさと安らぎ。


CREDOさんが、天の川と銀河と地球の位置を


天を指差しながら話してくれた。



どうにも位置感覚が理解できずに、

ぽかーんとする私だったが、

ビジョンは宇宙空間。


そして、CREDOさんと私に、もう一つの姿が重なる。


どこかで今も進んでいるあの時の世界の

私とCREDOさん。






面白いな……


これもポータルだからかな?



私の脳か、はたまたエネルギー体が起こす

ホログラフィーを楽しんだ。




CREDOさんは、ゴアテックスを取りに部屋に行った。



戻って来るまでの間、一人で星を見ていた。





古代の人たちは、毎晩この星空を見て、宇宙とコミュニケーションしていただろう。



夜の明かりは、起した炎と星月の光だけ。


闇は闇としてあった究極のシンプルな世界。


宇宙と溶ける時間。


交信、受信、送信……


今の私はやり方を知らないけれど

潜在意識下で何かやろうとしているのか、

微かに感じ取る。




戻って来たCREDOさんと、またしばらく星を眺めた。




正味、三、四十分の間のことだった。


満喫した私たちは部屋に戻り
5時の日の出に目覚ましを合わせ、


つかの間、眠った。