もうひとつの幻想 35 | Another やまっつぁん小説

Another やまっつぁん小説

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 しばらくして、フロートやリクも攻撃を再開する。
 スカッシーたちは相変わらず爆発で宙を舞い、ほかのものたちは自分から海に退散したり、逃げまどったり、気絶して寝ていたり。


 大混乱の海岸で、変わらずフロートは走り回っている、と思いきや―――
「あれ?フロートの後ろになんかひっついて来てない?」
 ハーブが指さす。


 目を凝らすと確かに走るフロートの後ろを明るい光がひっついていた。
「さっきの蝶?」
 つぶやく私をフローラが見る。


「あの、もう少し、魔法使った方がいいですよね?」
「ん?あぁ、そうだな。ほかに呪文を試すなら、やればいい」
 次は蝶ではなく、もう少し大きなものを出してもらいたいものだ。


「それでは次の呪文を試してみます」
 そしてフローラはさっきと同じように呪文を唱え始める。
「―――ゴカウナサモシヤイヌ ”ウサギ” ホタキンロ 目映き炎の変わり身よ!」
 ウサギ?
 今度は兎を出すのだろうか。
 フローラは目をつぶったまま今度は両手を差しだし、大きく広げる。
 


 するとさっきの数倍ほどの大きさのある炎が出現した。
 あまりの眩しさに私たちは思わず目を覆う。
 


 しばらくしてゆっくりと光が弱まり、目の前を覆っていた腕をよけると、炎が下に落ちていくところだった。
 炎が十分遠ざかってから、ハーブとクイットが崖下をのぞき込む。
 私も崖の淵に立つフローラの横に並んだ。
 すると炎の様子がよく見えた。


 さっきと同じくゆっくりと落ちていった炎は、途中で落下を止める。
 今度は全員固唾をのんで見守っていた。
 フロートがあまりの眩しさに炎と距離をとるのが見える。
 リクもかなり距離をあけたところを飛んでいた。


 そして、炎は少し膨らみ、眩しさを増す。
 さっきよりもずっと眩しく、再び私たちは目の前を覆った。
 しかし今回私は腕に少し隙間を空け、どうにか何が起こるのか確認する。
 すると、しばし膨らんでいた炎は唐突に弾けた。


 あちこちに炎が尾を引いて飛んでいく。 
 そして飛んでいった先で炎はぴょんぴょんと眩しさを保ったまま跳ね始めた。


「兎だ!」
 今更のようにハーブが叫ぶ。
 どうも今回も呪文をよく聞いていなかったらしい。
 クイットも大喜びだ。


 丁度スカッシーと同じくらいの大きさの、兎の形をした炎が走り回っている。
 微笑ましくそれを見ていた私だったが、不意に横から発せられた緑の光に思い切り驚いてしまった。


「何?」
 と振り返るハーブも驚く。
 私の横から発せられるその光はフローラのイヤリングの宝石が発しているもの。


「魔女のイヤリング!」
 思い出したようにクイットがつぶやく。
 私は思わず一歩下がった。
 フローラが不安そうな顔でこちらを振り返るが、私にはどうしようもない。


「あ!フロートさんも!」
 不意にクイットが海岸を指さした。
 見るとフロートの方からも黄色い光が見える。
 あっちのイヤリングの宝石も光っているのだろう。


「あぁ!見て!」
 ハーブもフロートの方を指さす。
 もう見ている!と返事を返そうと思ったが、よく見るとハーブが指さしているのはフロート本人ではなく、フロートの後ろ。


 私は驚き息をのんだ。
 フロートの後ろを今までフローラが出した蝶や兎が追いかけていたからである。
 おびただしい数の光が集まり、たまたまフロートの近くを走っていたスカッシーが何匹かうずくまっている。
 どうも眩しさのあまり気絶してしまったようだ。
 ぴくりとも動かない。


「どう・・・って・・・るー!」
 下からフロートの叫び声がした。
 所々聞こえなかったがどうなっているのか聞きたいようだ。
 残念ながらその質問には答えられない。
 聞きたいのはこちらの方である。


「とりあえず気にせずに戦えー!!」 
 私は思いきり叫んだ。
「しゃ・・・ねー・・・な!!」
 フロートはもう一度叫んだかと思うと攻撃を再開する。
 こういう時相手が単純だと助かる。
 余計に心配したり考え込んだりしない。


 だが少しは心配した方がいいかもしれない景色が広がっていた。
 フロートの後ろに集まっていた光が徐々に合体しているのだ。
 フローラが2回に分けて出した炎を会わせても、その量を遙かに超える光が集まりつつある。
 よくフロートは眩しいと思わないのだ。