小説『三人屋』の続編。悲喜こもごも、味わい深い人間模様を描いています。商店街に密着したヒューマンドラマです。![]()
続編は、三姉妹の人間臭さも表現しながら心温まるストーリーが展開されます。三姉妹の営む「三人屋」を舞台に、日常の中に潜む喜びや悩みがリアルに描かれます。![]()
特に長女・夜月の存在感が際立っています。![]()
“豆腐屋の居候に甘んじて自分を見失っていた正人を見事に掬い上げ、作家の一也が「一行目が書けない」と悩んでいるとき、夜月がさらっと放った「二行目から書けば良いんじゃない?」という一言。これでふっと肩の力が抜けた一也が、自分の生活をそのまま書こうと思いつくくだりなど、彼女がそこにいるだけでみんなの強張った心が不思議と落ち着いていく” 夜月の空気感は唯一無二。彼女は周囲の人々に自然と影響を与えます。まひるや朝日の登場シーンが前作より少なく、夜月を取り巻くオトコ達をメインにした物語とも言えます。
朝日が出勤前に焼いたパンを使い、まひるが朝からランチ時まで売る自家製の玉子サンドイッチが、見映えも良くおいしいと大評判になります。長女のスナックは、ラプンツェル商店街で働き暮らす人々のサロンとしてにぎわいます。ゲイの青年、売れない作家、女泣かせのスーパー店長など、クセの強いワケあり常連客たちが夜ごと来店、三姉妹の色恋沙汰を肴に、互いの悩みを打ち明けあったり、くだを巻いたり…。狭い空間に詰め込まれた人々の姿とあっという間に広がる噂。その意味では「閉塞感」の中での日常とも言えます。起きた出来事がすぐに「他のみんなも知ってる」ということは、現在の私の周辺では日常的にはほとんどありません・・。最後の森野の章で、「そこに行けば誰かがいる」と、商店街の中に親しい人たちが安心して集まれるところがあるのは素敵だと思う。![]()
決して「ほのぼのした人情ドラマ」ではないが、いろいろな生き方や性格の違いはありながらも、それぞれが見事に収まります。キーとなる美味は フワフワ卵サンド。そのレシピの秘密が最後に明らかになります。![]()
*原田ひ香さんの文章は「行間の時間の使い方」が上手で、テンポよい文筆力で深みを増しています。「美味しいサンドイッチの作り方」と同じで「ひと手間」で変化が起きる感じの展開。最後まで引き込まれました。
「帰ってこい」の広告アイディアは秀逸。人情もあるけどSNSなみに伝わる? いまの時代はネットでつながっているので、私達世代には、こうしたアナログに「感じるもの」があります。