「鋼の錬金術師」「銀の匙(さじ)」で知られる荒川弘さんの新作「黄泉(よみ)のツガイ」がとてつもなく面白い。著者は十勝管内幕別町出身。酪農を営む生家を手伝いながら、漫画家デビューを果たした来歴をもちます。![]()
そうしたルーツゆえ。荒川作品は「骨太な死生観」を本質とします。![]()
「鋼の錬金術師」はファンタジーだが、人は何かを差し出さなければ何かを得ることはできないとする等価交換の法則を世界観の根幹に置く。無から有が生じることはない。誰かの死と引き換えに、誰かの命がつながれていく。その残酷な真実に主人公がどう向き合い、どう抗(あらが)うのか…という物語が展開されていきます。![]()
「銀の匙」は荒川さん自身が通った北海道の農業高校が舞台。主人公は大事に育てた家畜の命を奪うことに葛藤する。ここにも人が生きることの露(あら)わな真実があるが、しかし葛藤の向こうに主人公は生きる道を見いだしていきます。![]()
「黄泉のツガイ」は現代日本が舞台のファンタジー。神とも物の怪ともつかないツガイと呼ばれる、一対の人ならざる存在がいる世界観の物語。主人公の少年ユルは狩猟を生業としながら、幼い頃から命を狙われる境遇で生きてきました。殺意を向けられたら躊躇(ちゅうちょ)なく攻撃。ここでも現代日本では異質な、骨太な死生観が描かれます
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特殊能力を持ち、人間に仕えるツガイは「左と右」といった対称となる一組をもって意味を成す。白か黒か、0か100かという二元論ではなく、対照的なふたつの世界観が必ず並立していることに意味があります。どちらを選ぶかという二択ではなく、その間のグラデーションから最適解を見いだしていく試みにこそ、希望があると示唆しているように思えます。![]()
誰が読んでもわかりやすくて面白い王道少年漫画。それでいて、その本質はとてつもなく深くて太い。たくましくて美しい。夢幻の建前の理想論ではなく、現実を生き抜くリアリティーに裏打ちされた夢や希望を語れる作家。それが荒川弘さんです!![]()
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