住宅街の一画で、鮮やかなピンクの小屋が目を引きます。下のケージではウサギが静かに草をはみ、その上にはパステルカラーのわたあめが並びます。札幌市清田区にある「うさぎのわたあめ屋さん」本店。ウサギが「店長」を務める、ユニークなわたあめの無人販売店です。運営するのは障害者就労継続支援B型事業所のNPO法人「よつばの会」。利用者(障害のある人)らが心を込めて提供するわたあめが、人々にほほ笑みを届けています。![]()
木造の店舗は高さ1.6メートル、幅と奥行きは1.8メートル。ウサギの隠れ場所やストーブ、トイレも設置されたケージの中では、生後3カ月のうさぎの「ミルク」がくつろいだ様子を見せています。先代の「マロン」に代わり、6月に店長に就いた新米です。![]()
よつばの会理事長のMさんは「早くも新店長の存在が広まって、ミルクを見に来る人もいる」と話します。![]()
わたあめはピンクや水色、黄色など数色がカップに入って1個500円。店先の料金箱に現金を入れるほか、QRコード決済で買うことができます。店舗のすぐ裏によつばの会の施設があり、約20人の利用者(障害のある人)らと職員が月に約240個のわたあめを作っているとのこと。![]()
製造機でわたあめを巻き上げるのは職員で、利用者(障害のある人)がプラスチックカップに3~4色の層になるよう丁寧に詰めていきます。カップには別の利用者(障害のある人)がラベルを貼ります。ラベルに描かれたウサギや犬のかわいらしいイラストは、利用者(障害のある人)がデザインしました。![]()
施設内では犬や猫、金魚も飼われ、カップ詰めを担当する男性は「自宅でも小型犬を飼っているので、動物がいるとリラックスできる」と話しています。ラベル貼りを担う男性も「動物たちとは毎日接していると仲間のように思えてくる。シールが少し曲がっていても手作り感があって、その方が好き」と。![]()
店舗は1店だけではありません。本店から約10キロ南にある札幌市の広場「札幌ふれあいの森」(清田区有明)の入り口横には「有明店」があります。小型の乗用車をピンク色と水色などに塗装し、後ろ側のトランクのドアを開けて、そこにわたあめを置いて販売。週末にはよつばの会で飼っている柴犬の「しゅう」がすぐ近くで「店番」することもあり、広場の利用者に喜ばれています。![]()
開店当初は本店の店長だったマロンが出張していたこともあり、数回購入したという札幌市南区の会社員Sさんは「わたあめは職場で分け合って食べた。ウサギがケージの中で丸まった姿がかわいかった」と話します。![]()
地域の人々を和ませる「うさぎのわたあめ屋さん」だが、2019年ごろまでは「犬のやきいも屋さん」として営業していました。当時の店長は柴犬の「ケン」。テレビで紹介されて人気を集め、店舗前で車の列ができるほどだったとのこと。職員たちがストーブで焼き芋を焼いていたところ、近隣住人から「食べたい」と要望があり、販売を始めたのがきっかけだったそう。![]()
その後、コロナ禍での休業や原料のサツマイモ高騰に見舞われ、2023年にわたあめ店にリニューアル。店長は2021年に当時よつばの会が飼育していたマロンが務めました。マロンは今年6月中旬に高齢のため引退。ペットショップで購入したミルクが新店長になりました。![]()
Mさんは「動物が店番をするというアイデアは、人と接するのが苦手な利用者(障害のある人)が多い施設の特性に合っていた。これからも利用者と一緒に、地域の人にもっと楽しんでもらえる場所にしたい」と話しています。![]()
札幌市立大看護学部のN准教授(精神保健看護学)は、効果には個人差もあるとした上で「ウサギのように小さくて柔らかいイメージの動物が身近にいることは、精神障害者にとって緊張を和らげたり、優しい気持ちを引き出す効果がある。わたあめも視覚や嗅覚に柔らかい印象を与えるのでは」とインタビューで話しています。![]()
「ウサギのわたあめ」店長は、今日も地域の人や利用者を癒やしてくれそうです
。![]()
*「うさぎのわたあめ屋さん」本店は札幌市清田区清田2の1。