ネットに次の記事が載っていました。紹介します。![]()
“大のミュージカル好きでもある作家の小川洋子さんが、短編集『劇場という名の星座』を出しました。舞台と創作への思いを聞きました。
『劇場という名の星座』の収録作は、いずれも帝国劇場が「舞台」です。
「劇場は本当に奥が深いんです。閉じられた空間なのに、行けども行けどもという感じ。何度も取材して、そう感じました。表からは見えないたくさんの仕事があり、いろいろなお客さんもいる。この本は、ほぼ実話といってもいいくらいで、充実した取材ができました」
取材した劇場関係者は30人を超えます。
「取材用に部屋を用意していただいたり、お弁当をお裾分けしていただいたり、普段は見ることができない、けいこ場も取材できました。それだけに、帝劇に命をかけて働いているような人や長年のファンの方たちをがっかりさせたくない。そんな気持ちで書きました」
「舞台にかかわる人もお客さんも『熱い』ので、発散する熱量が違います。それを浴び、私の小説にも抑えがたい影響が出ました。これまで私は登場人物が泣くシーンをあまり書いてきませんでしたが、今回はわりと自然に泣く場面が生まれました。出会う題材によって作品も変わる。題材から得た気づきや喜びなど、作家は題材によって書かせてもらっているんですね。今回はその典型です」
縁の下で黙々と
巻頭の「ホタルさんへの手紙」は帝劇の案内係の物語です。盲目の父の遺品にミュージカルのパンフレットと案内係からの手紙をみつけた娘が帝劇へ。そこで知った亡き父の思いとは…。
「最初に取材したのが案内係の人でした。その方があまりに魅力的で、この話はあまり考えずに書けました。案内係は目や耳の不自由な方や車椅子のお客さんなどに細やかなケアをしているんですね。そこで短時間でも密接な関係が生まれ、ドラマになる。案内係の方が、お客さんからもらったお礼の手紙をポケットに仕事をしている場面は実話です。私は普段、見ているようで視界に入っていなかったけれど、劇場にはドラマチックなものを集める磁力があるのでしょう。客席にも物語が渦巻いています」
劇場で産気づく女性客の話、特異な存在感を放つ常連客の話など、収録作はいずれも劇的です。
「役者は舞台で熱を発散する。私には、その裏で黙々と一生懸命働く楽屋係や付き人のような人たちが好ましく、引きつけられました。目立たない場所で情熱的に仕事をしている人たちは、ある程度は予想していましたが、予想を超える働きぶりでした。台本は役者が読むものだと思っていたけれど、通訳や照明、エレベーター係など、たくさんの関係者がそれぞれの視点で台本を読み込んでいることも分かりました。ひとりではできない仕事を、みんなが集まって仕上げていく。そこが小説の現場と違い感動的で、うらやましいと思いました。でも、自分にはとてもできないと(笑い)」
取材を重ね、舞台を見る目が変わりました。
「先日も、大劇場の千秋楽で出演者が感動的なあいさつをしているなか、私はこの裏でいま、セットを解体する工事の人たちがヘルメット姿で待機しているんだと想像してしまう。チケット代が高いのも納得できるようになりました(笑い)」(後略)”![]()
小川洋子さんは「どうでもいいことに熱をあげられる社会でこそ幸せ」とインタビューで話しています。本当に大切にしたい言葉ですね!![]()
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*小川洋子(おがわ・ようこ);1962年岡山県生まれ。「妊娠カレンダー」で芥川賞、『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、『小箱』で野間文芸賞、『サイレントシンガー』で毎日芸術賞を受賞
