さて、底辺校の女子Aを受け入れて、指導にかかる。

 

最初はマンガを読むのを、じっくりと観察する。

 

ものすごく「ほんわり」しているが、

地頭は悪くなさそうだ。

(この時点では、そう地頭が悪い、と決める子はほとんどいない。)

 

NBA(全米バスケットボール・リーグ)でシカゴ・ブルズを率いた

フィル・ジャクソン ヘッドコーチはこう言ったそうだ。

 

「俺は、肥溜めの中から、バラの香りをかぎ分けられる。」

 

さすがの名言だ。

マイケル・ジョーダン

スコッティ・ピッペン

マジック・ジョンソン

そして悪童デニス・ロッドマンを発掘した名将の言葉だ。

 

最初から出来る子ばかりではない

最初は出来なくても、その内出来るようになるまで鍛え上げる。

それこそが、この仕事の醍醐味というものだから。

 

まずは「中学レベルが全くできない」という本人の趣旨に従って、中学レベルのことから始める。

(本人は現高校2年生)

英語はbe動詞からスタート。

その同級生の多くは、このレベルからチンプンカンプンなのだそうだ。

 

あちらこちらでつまづきながらも、中学1~2年レベルを一か月でマスター。

 

これは何とかなりそうだ。

 

お次は数学だ。

なんとかしてこれを中学全範囲をマスターしていく。

 

これも2か月で終了。

 

ついでに高1レベルの数学のマスターに取り掛かる。

 

数学ⅠAのレベルだ。

 

やはりトップ校・朝倉高校に比べると、その進度(スピード)と深度(掘り下げ)は劣っている。

 

本人も、それを気にしている。

「そんなに気にする必要はない!」と力説し、淡々と進めていく。

 

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これは以前の記事で散々指摘しているんだが、

トップ校の指導方針は、あまりにも速い。いや、速過ぎる。

 

次の絵を見て欲しい。

 

左側は、入学時点でのレベル別のトップ校と、底辺校の差

 

しかし、ここから偏差が広がっていく。

青と赤のラインがあるが、それが各校の指導の中心ラインだ。

トップ校は青、底辺校は赤。

 

青は、やはり指導もハイレベルだ。(指導している教員のレベルは問わない)

赤は、やはり中央レベルに焦点を当てている。(出来るだけ脱落者を出さないことに焦点を当てている)

 

すると3年後にはグーンと広がり、トップ校と言えども、信じられぬくらいに低下している。

対して底辺校の場合、中には跳び抜けている者もいて、そいつらが成績を上げている。

 

これで分かるだろうか。

入学時の偏差値の差は、絶対的なものではない、ということだ。

 

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円周角の分野では、手こずりながらも何とかマスターし、

内分点・外分点の概念も呑み込み、

接弦定理を理解した時には、

ほぼ高校Ⅰ程度の学力を身に付けていた。

 

その期間、たったの一か月!

 

どうやれば出来るようになるかすら分からなかったAは、

大学名すら知らなかった(東大とAPU(姉が通っている)しか知らなかった)のが、

九州大学・共創学部や、東京農業大学・応用生物の話までするようになったのだから!