「こんなに一生懸命やったのに、全然覚えてない。私って、頭悪いの?」

 

などと悲しい想いをしている人は、予想以上にいるみたいです。

 

そんじゃ、科学的根拠をもって、その間違いを正してみましょう!

 

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①再読(繰り返し読む)

時に、7回音読して丸覚えしてしまう、という山口真由さんみたいな才女(東大法卒、弁護士)がいましたが、

 

実は「音読」には効果があっても、

繰り返し読むことには効果はほとんどありません。

 

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コロラド大学の大学生たちを対象としたある研究では、

約1500~1700語の文章を再読するグループと、再読しないグループに分け、

内容をできるだけ思い出してもらう試験や短答形式の試験を2日後に受けてもらいました。

 

文章を続けて2回読んだ学生と、1回読んだ学生では、

2日後の試験の成績に有意な差(統計学的な分析に基づいて評価された差)はありませんでした。

 

また、別の研究でも、

教科書や科学雑誌からの異なる文章(学生にある程度馴染みがあるトピックやあまり馴染みのないトピック)を、

再読するグループと、1回だけ読むグループに分けて、

多肢選択法や短答形式などの問題を大学生たちに解いてもらいました。

 

この研究では、直後、そして1日後の試験での正答率は、

再読した学生と1回だけ読んだ学生の間で、ほとんどの場合に有意な差がなく、

再読に大きな学習効果がないことを裏付ける結果となりました。

 

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要は

再読した方が文章に慣れてしまい、『分かったような気がする」ため、

さらに理解したり、論理的に考えられなくなるんです。

 

このような、表面的に情報が処理しやすくなったことで、

実際には内容を記憶し深く理解していないにもかかわらず、

覚えた気になってしまう、理解した気になってしまう心理的な現象は、

流暢

りゅうちょう性の錯覚(幻想)(The fluency illusion)」

と呼ばれています。

 

例えば、英単語帳をパラパラとめくっていると、

「お、知ってる単語が多いじゃないか。結構覚えているんだな!」

と思っていると、いきなりテストでは惨敗してしまう、なんてことありませんか?

 

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さて、その2、になります。これはたま~にいるのですが

②ノートにきれいに書き写す・まとめる。

私も経験あるんですが、

恐ろしくノートを「清書」してまとめている友人がいました。

 

たしかに良くまとまっていて、読みやすいのですが、

残念なことに、その友人にテストで負けたことはありませんでした。

 

そもそも考えてみたら、そんなことに数時間かけているわけで、

参考書にもう、まとめて書いてあるわけだし、

そんな暇があったら、さっさと問題を解いた方が1000倍効果がありますし。

 

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高校生を対象に、ノートの取り方についての学習効果を調べた研究をみてみましょう。

 

この調査では、次のような複数のグループに学生を分け、アフリカの架空の部族に関する2000語の文章を高校生に読んでもらいました。

・Aグループ:各ページを読んだあとに、短く3行に内容をまとめる(要約)
・Bグループ:読んでいる時に重要だと思う文章が出てきたら、自分の言葉でノートに書く(パラフレーズ)
・Cグループ:重要だと思う文章を3行そのまま書き写す
・Dグループ:文章を読むだけ

そして、勉強直後と1週間後に内容についての試験を受けてもらい、学習効果を調べました。

結果は、文章をそのまま書き写した生徒は、ただ文章を読んだ学生と変わらないというものでした。

 

書かれた文章をそのまま書き写す作業は、

文章を記憶したり理解したりしなくてもできるうえ、

脳で負荷のかかる処理がほとんど行われないため、学習効果が低いと考えられます。

 

それでは、自分の言葉でまとめたときの学習効果はどうでしょうか。

 

この研究では、

パラフレーズしたBグループと、より短く要約したAグループの点数は同等で、

ただ読んだ学生や、そのまま書き写した学生よりも高い点数となりました。

 

読んだ文章を自分の頭の中で処理して言い換える、まとめることには、

一定の効果があるとする研究報告は、このほかにも複数あります。

 

しかし、注意しなければいけないのは、何かを「要約」するという場合の方法と、その質です。

 

どれくらいの基礎知識があって、

どこの部分を重要と判断し、

どれくらいの量の情報を、

どれくらいの文章にまとめるのかなど、

要約する能力と、要約した情報の質には、かなりの個人差があります。

 

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あの有名な東京大学・英語の第一問「大意要約問題」

昭和35年から、もう60年以上続けて出題される「難問」ですが、

それを駿台文庫は「大意要約問題の解法」として、出版しています。

いわゆる

「次の英文(100~300語)を読み、その趣旨を100~150字の日本語で書け。」

とかいう奴ですね。

その解説たるや、あの伊藤和夫氏において

「人によって、点数が変わる」

「模範解答と一致しなくても構わない」

 

ましてや20年後の高橋喜昭氏においては

「満点を取ることなど不可能」

「本書は、合格点をとるための最低限の方法を提示する」

・・・とまぁ、半さじを投げているような書きっぷりだ。

 

 

要約をうまくできるようになるための特別な訓練を行うと学習効果が高まる、という報告もありますが、

そうした特別な訓練を多くの人が受けているわけではありません。

 

さらに、後述するいくつかの学習法と比べても、要約の学習効果が低いことが報告されています。

 

わたしの記憶だと、

成績が抜群に良かった友人(九州大院卒・現F社でSE勤務・スパコン「京」の開発メンバー)のノートが印象的でした。

 

そのノートには、先生がついでにしゃべって笑いをとった雑談や、

オマケで喋った内容までも、ノートの片隅にしっかり書き込んでありました。

それを読んだ途端、

数日前のその先生の授業が、詳細にわたるまで鮮明に記憶に蘇ってきたのです!

 

彼はその集中力で、旧帝大合格を勝ち取ったわけですが、そこまで奥義を極める必要はありません

 

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最後は、最も多いやつだ。

③アンダーラインやマーカーを引く

よく「チェックシート」などで暗記する人を見かけます。

 

もはや戦後の「墨塗り教科書」みたいな、というのは言い過ぎか。

 

 

だが、その努力量に比例して、成績が伸びることは全くと言っていいほどないんですよね。

 

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例えば、アメリカの大学生を対象とした研究では、

・学生を8000語の文章をマーカーするグループ、

・マーカーしないグループ、

・他の人がマーカーしたものを読むグループ

に分け、1時間かけて読んでもらいました。

 

1週間後、10分だけ文章を見直してから内容についてのテストを行ったところ、

どのグループでもテストの点数に差がなかったことが報告されています。

また、1992年に報告された大学生を対象とした研究では、

大学で使う歴史の教科書の章を、

・下線を引きながら読むグループ、

・引かないでただ読むグループに分け、

その1週間後に15分間、教材を見直してから内容についての試験を受けてもらいました。

 

2つのグループの試験の点数には差がないどころか、

興味深いことに、推論問題については下線を引きながら読み、それを見直してから試験を受けた学生たちのほうが、点数が低いという結果でした。

もしかしたら、

下線が引いてあるところだけに気が向き、全体の内容を関連づけて理解することが阻害されてしまった可能性があります。

そのほかにも、マーカーを学習に取り入れていた学生のほうが、試験での成績が悪いという報告もあります。

 

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これはかなりのショッキングな報告ですねぇ。

 

人による、とでも言いましょう。

 

とにかく、歴史や英語の本で言っておきたいのが

 

「最初の方は、マーカーを入れるな!2~3周してから入れろ!」

最初の方は、どこが大事なのかわからない。

だから、マーカーを塗りまくる。

 

塗りまくった挙句、2~3周したころにはマーカーだらけで

「一体、どこが大事なのかわからん」

という事態になってしまう。

 

これが2~3周した後だと、大事なところが確認できるので、効率よくマーカーが引ける、ってもんです。