写真は東京大学・数学の解答用紙である。

 

 

(当然、本物は入手できないので、本物に最も近いと言われる代ゼミ・東大プレテスト用の解答用紙だ。)

A3サイズの用紙に各問B5サイズの解答欄が2つある。
ここに標準~難レベルの問題(文系4問・理系6問)を解くわけだが、東大受験を知っている人が使うテクニックがある。

B5サイズの解答欄に縦線を入れて2分割する、というものだ。
そこに左上→左下→右上→右下と、写真のようにみっちりと解答するのだ。

( ´∀`)「そんなことなら、私もやってるよ(笑)」と仰られる方もいるだろう。

そう、難関大志望の学生のみ知っていたこのテクニックは、

今から10年程前、マンガ「ドラゴン桜」で世間に知れ渡ったのだ。
(注:底辺高校から1年で東大合格をする、という、受験テクニック満載のマンガ。ドラマ化もされてよく再放送されている。)

おそらく、これを見た先生方が
「この手があったか!これならノート1ページみっちり宿題出せるぞ。汚く書き散らす生徒もいるからチェックも楽だな、こりゃ(笑)」
ということで「ホームワーク・ノート」の書き方で指導するようになった、というわけだ。
(注:HWノートとは、中学で「教科は何でもいいから1ページだけは勉強しなさい」という趣旨で提出させるノート。)

これを小学生にさせるのは大賛成だ。
計算をタテ書きするので計算ミスも減るし、見やすいから復習も楽にできる。
中学受験レベルでない限り、これで十分書くスペースは確保できる、というわけだ。

しかし、中学になると話は変わってくる。
前回「センター試験」において、こう話したのを覚えておられるだろうか。

m9(・ω・)「グラフと図形はデカく書け!」

この2分割方式では、グラフと図形をやたらと小さく書く癖がつくことが多いのだ。
 

中1ならともかく、中2で一次関数や合同の証明などが出てくると、小さく書く生徒の中に苦手になる子が続出する。
 

中3で二次関数や相似の証明になると、こんな狭いところに書き込むこと自体が難しくなってくるが、何とか書き込むには時間をかけて丁寧に書かねばならない。
 

そして、そのことに無駄な時間が費やされ、勉強の量そのものが低下する、という本末転倒な事になるのだ。

この2分割方式に、高校になっても固執している生徒がいるが、もう例外なく数学や英語が苦手である。

なぜ、こんな方式で書くのか、というと、これが「入試」であるからなのだ。

入試においては、この空白に自分の学力で問題をきっちり解答し、東大教授に採点してもらわねばならない。
 

そのために教授の心象が悪くならないように、できるだけ丁寧に書き込まなければならない。
(東大は、答えが間違っていても、途中まで論理的に書いていれば大幅に部分点をくれるのだ。成績開示でそれは証明された。)

ところがコレを普段の勉強に持ち込むと、大きく書けば理解できる平面幾何(図形などの問題)や関数のグラフの理解が無駄に難しくなる。

見にくいから丁寧に書く。
見にくいから蛍光色のマーカーで色分けする。
見にくいから定規とコンパスでさらに精密に書く。

どれもこれも、数学の本質の理解とはかけ離れたものだ。
 

こんな無駄なことをするのなら、せめて分割した左側を図形やグラフのスペースに、右側を式と計算のスペースにすれば大幅に改善できるのだが。

高校2年生の数学が「図形と方程式」「三角関数」という分野に入ると、小さく書く生徒は9割がた「撃沈」である。
 

そんな生徒にはタテ2分割ではなく、上下2分割にして上にグラフ、下に式と計算をするように指導することもある。

とにかくこの東大のマネした「2分割したHWノート」は、勉強しなくて成績の悪い生徒には何らかの効果があるかもしれないが、進学校志望の生徒には百害あって一利なし、と断言する。

どうしても2分割を強要されるのなら、せめて分割線をはみ出してもいいからグラフと図形は大きく書くようにすればいい。

一旦理解できれば、それからは小さく書いても大丈夫だ。

「分割線に縛られて成績急降下」
=「勉強しているのに成績が上がらない」
 =「私って(;ω;)アタマ悪いの?バカなの?」

こんなくだらない思い込みにはまる事だけは止めてくれ!