レオン・ラッセルが3月に来日するらしい。自分がコンサートを見たのは、 かれこれ20年近く前になる。しっとりとした名曲の作者である一方、映画で 見たバングラディッシュ救済コンサートでは、迫力あるロックを独特のハスキーボイスでシャウトする・・・そのギャップがとても魅力的だったんです。
70年代に人気だった音楽評論家・今野雄二あたりからは、「ジョージ・ハリソン、ボブ・ディランと云う過去のスターとは比べられない位の輝きを放つ、新しいスターの誕生」とか持ち上げられていたが、いつのまにかその名前を聞かなくなっていった。発禁の反戦歌で干されたわけでもないだろうけど。
左からジョージ・ハリソン、 ボブ・ディラン、 レオン・ラッセル
それから幾年月、1994年位だったか、偶然地元のテレビCMで来日公演の予定を知って、そそくさと静岡市文化会館へ行ったわけだけど、客席数4千位かな、その上半分は仕切られていて丸っきり空席、最初からチケットを販売していなかったみたいだった。時代の流れ、一抹の寂しさを感じたなぁ。
前座なし、何の前触れもなく杖をついて現れた超ロングの白髪の紳士は、紛れもなくレオン・ラッセルだった。丁寧にお辞儀をした後、キーボードの前に座って演奏開始。初っ端タイトロープだったかな、記憶が定かでないが、5人組のバンドを従えて歌いだし、自分にとっての夢の時間が始まった。
ぜひ生で聴きたいと思っていたのは、代表曲と言えるソング・フォー・ユー、様々な歌手にカバーされてる名曲マスカレード、そしてカーペンターズによって余りにも有名になったスーパースター。野郎一人で聴く曲じゃないね。
スーパースターは、作曲当時の恋人だったリタ・クーリッジのために作った曲で、自身で歌う事はなかったから、叶わぬ夢と分かっていたんだけどね。レオン自身がピアノを弾いているリタ版より、カーペンターズの方が上だな。
余談だが、リタ・クーリッジはその後歌手のクリス・クリストファーソンと結婚し、その彼は映画俳優に転進してそれなりの成功を収めた。バーブラ・ストライサンドと共演の「スター誕生」なんか代表作のひとつじゃないのかな。
ソロで演ったマスカレードが一番印象に残っている。楽器に詳しくないんだけど、あれキーボードと言うよりシンセサイザーと言った方がいいのかな。 ものすごいヤツで、レッド・ツェッペリンでジョン・ポール・ジョーンズが演奏 していたのより全然すごかった。生とテレビ画面、時代の違いはあるけど。
レコードでも聴ける出だしの仮面舞踏会をイメージしたバロック調の演奏を、レコードよりずっと長い時間を掛けて格調高く演奏し、あの声でもの哀しく切々と歌い上げる姿は忘れられない。締めは映画でも見たジャンピング・ジャック・フラッシュで、ノリノリだった。現在も活躍中とは本当に嬉しい。