1,997年(平成9年)、一年間育てた苗木の植樹である(写真8参照)。

写真8/平成9年の植樹地
先に述べたピートモスを利用した方法で、幅30cm間隔で格子状に植樹した。
苗木が細かったせいもあるが、成長には時間がかかった。
5年後の状況である(写真9参照)。

写真9/平成9年の植樹地から5年後の平成14年の状況
私達の仮説では、バッコヤナギが生育をはじめると地表温度が下がり、
種子の発芽条件が改善され、自然に野草が進出してくるというものであったが、
先行しているライオンズクラブの植樹地を観察しても、
野草の進出は芳しいものではなかった。
バッコヤナギは活着したが、野草の進出は見られない。
そこで、富士山に自生する野草の種子を採集し、散布することにした。
ピートモスと種子を混ぜ合わせ、バッコヤナギを植樹したところに散布する。
そうすることによって野草の進出を助けようというのである。
その結果は、年によって大変な違いがあった。
発芽率も良く、秋まで成育を続けた年もあれば、
夏場を越えられない年もあった(写真10参照)。

写真10/一面に野草が発芽している
それだけ、その年の気候に影響されたのであろう。
しかし、自然のままではほとんど野草が生えないところで、
このように野草の発芽、生育がみられたので、今後、期待を持たせた。
夏の自然観察会でのことである。保坂貞治2代目会長は、
植物の成育にとって、日陰の重要性を指摘された。
野草が自然に進出している場所を指摘され、
そこにある共通点を言われるのである。それが適度な日陰である。
一本の木の抗、倒木、岩陰、そこに野草が進出しているのである(写真11参照)。

写真11/倒木のちょっとした日陰に
そこで、閃いたのが、バッコヤナギの植樹の方法である。
30cm間隔で、格子状に植えるので、
落ち葉の堆積による土壌の改良を期待しても、風に飛ばされてしまう。
バッコヤナギの少々の日陰では、地温の低下も保水力も十分に得られない。
だとしたら、バッコヤナギを円形に植えてみたらどうだろうか。
直径30cmから40cmの円形に、8本の苗木を植える。
その円形の内側に野草の種子を播く、という方法である(写真12参照)。

写真12/バッコヤナギを円形に植える
円形に、それも密度高く植えるので、落ち葉が円形の中に堆積しやすい。
陽射し除け、風除け効果も高いと考えられる(写真13参照)。

写真13/野草が芽を出し、翌年も芽を出した
野草進出効果は、グーンと上がった。
野草の成長が数多く観察されるようになった。
また。落ち葉など有機物の堆積も数多く観察された。
陽射しを防ぐことの効果が十分に証明されたのである。
草原化は着実に進んでいるのである(写真14参照)。

写真14/植樹して4年芽の姿野草の進出も多く見られる
そんな時、孟宗竹によって、里山が被害を受けているというニュースに接した。
人々のくらしに竹が使われなくなった、
竹の子は安い中国産に圧されている、などの理由から、竹林が放置され、
その結果、周辺の里山、茶畑、畑などが荒らされているというのだ。
周辺の竹林を観察してみると、まったくその通りで、竹林は荒れ放題であった。
そこで閃いたのが、竹の使い道があれば竹林の管理はすすむ。竹の使い道はないか。
有った。竹で竹柵をつくり、その中に植樹したらどうだろうか、というものである。
竹柵が陽射し除けになり、風除けになり、
ひいては、オフロード車の進入防止になるのではないか、というのである。
さっそく実験にかかった。
竹で柵をつくり、柵の前に、円形に、バッコヤナギを植樹する。
そして、野草の種子を、バッコヤナギの円形の中だけでなく、
竹柵の根元にも散布したのである。効果は高かった。
翌年観察してみると、
竹柵の根元に、しっかりと野草が進出してきたのである(写真15参照)。

写真15/竹柵の根元に野草が進出し成長を続けている
寒冷紗を被せたらもっと効果が高いのでは、という意見もあり、実験した。
たしかに大変高い効果がみられた。
しかし、寒冷紗は結構値段がかかり、
また、覆うための作業も大変ということもあって、
大々的に行うことはあきらめた。
そして、植樹をはじめて10年の歳月がたった。
今では、竹柵を1.8m四方につくり、
その中にバッコヤナギを円形に植樹するという方法が定着してきた。
これによって、竹林の整備はすすみ、富士山の緑化もすすんでいるのである(写真16参照)。

写真16/竹柵づくりの作業風景
私たちが植樹を始めた10年前は、
御殿場口の駐車場から富士山を望むと
全面的に真っ黒な砂礫地帯が広がっていた(写真17参照)。

写真17/植樹活動を始めた頃の御殿場口からの風景
今は、あたり一面、緑が広がっている。感無量である。
しかし、砂礫地帯は、須走口にむけて、4kmに渡って、続いている。
また、この10年間、植樹地は大きな被害は受けていない。
しかし、いつ又雪崩被害が発生するかもしれない。
たとえそうなっても、あきらめることなく、
「実践・継続こそ力なり」を胆に命じて力をつくしていきたい。
続く・・・
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