雨の日が多くなり、少し本を手に取る時間が増えました。

本を開けても、すぐに寝落ちすることが多いですが、ぼちぼち…

 

今回の3冊です。

 

寺地はるな「ガラスの海を渡る舟」

大阪の空堀商店街で祖父から受け継いだガラス工房を営んでいる道と羽衣子の兄妹。

道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、みんなと同じことが

できず、羽衣子はコミュニケーション能力があり、なんでもそつなくこなすが、

道の作品のような

魅力を出せないと感じている。

二人は互いに苦手意識を抱いており、工房の経営についても衝突が絶えない中…

溶解炉の中のガラスを『燃える海』に例えられ、道は作業の竿を持つときに海を渡る

小舟が頭に浮かぶといいます。

燃える海はまぶしく自分の進む道もはっきり見えない。それでも竿を動かし舟をこぐ

苦手なことが多い道が、黙々と慎重に生きる姿が浮かびます。

二人がしっくりしだすまで10年。緩やかに認め合う過程が描かれていますが、

決別とならなかったのは、相手の魅力を互いに認めていたからだと思いました。

空堀商店街の様子も描かれていて興味深かったですケロ。

 

 

 

小野寺 史宜「まち」

小学3年の時、宿屋を営んでいた両親を火事で亡くした俊一は、群馬県尾瀬ヶ原

近くの村で歩荷をしていた祖父に育てられ、祖父の勧めで高校卒業とともに

上京する。

引越の日雇いバイトをしながら荒川沿いのアパートに住んで四年、

アパートのお隣の母娘と知り合いになったり、バイト先で仲間もでき頼られる

存在になり、時間があれば街中をランニングするなど、街に溶け込んでいくが、

祖父のいる故郷が気になっている…

特に変わったことは起こりませんが、故郷を離れ、東京で暮らし始めた青年の

日常が丁寧に描かれていて、俊一が自立していく姿が清々しく感じられました。

登場人物もいい人ばかりで、このような出会いが世界中のあちこちであり、若者

たちが成長していくのだと思うと、人や街との出会いは不思議な縁だと思いました。

物語を読みながら、俊一のランニングコースを地図で確認したり、お店を検索する

のも楽しく、特に東京の地形が興味深かったです。

歩荷をしているおじいちゃんがとても素敵でしたケロ。

 

 

 

柚木麻子「ナイルパーチの女子会」

実家暮らしで大手商社の総合職として働く30歳の栄利子は、「おひょうのダメ

奥さん日記」というタイトルのブログを愛読しており、そのブログを書いている

専業主婦の翔子と、偶然出会うこととなる。

出会って急速に親しくなり、栄利子は親友ができたと感じ、翔子も東京に(しかも

キャリアウーマンの)友人ができたと喜んだ。しかしブログが更新されず、連絡も

とれないという事態に栄利子はパニックになり、ブログの1ファンという立場から

逸脱しストーカーのような行動へと変容する…

今まで友人関係を作ることができず、そのことで暗い経験すらある栄利子が、翔子を

引き留めようとしてとる行動が本当に怖かったです。

ブログやTwitterの内容から行動パターンや住んでいる場所や今現在の場所がわかる

現在、発信も気をつけないといけないと思いました。

それにしても栄利子の思考や行動は怖かったですケロ。