垣谷美雨「老後の資金がありません」
共働きで子供は二人とも社会人となり、老後の備えは1200万円。
万全と思っていた篤子だったが、娘の結婚話が持ち上がり、相手の家に合わせて
派手婚をすることになった費用500万円は親である篤子夫婦の負担に。
そこに義父がなくなり葬儀代とお墓の費用で300万円の出費。
更には夫婦とも失職してしまうが、高級老人施設に住む義母への月々の仕送りは
続き、老後のための資金がどんどん減っていく…
食料品なら数十円の単位まで敏感だが、棺桶が4万円、12万円、50万円。
祭壇も然りで、数十万単位のお金が実感のないまま飛んでいく…
リアルやなぁと思いながら読み進めていくと後半、
義母と一緒に年金詐欺の片棒を担ぐという展開にびっくり。
そんなにあちこちで高齢者が長期間行方不明にならんでしょ。
義母が意外にサバサバした人物というのは良かったですが、最後までリアルな感じが
良かったかなと思いましたケロ。
津村 記久子「エヴリシング・フロウズ」
話は中学3年生になったヒロシのクラス替えから始まる。
新しい人間関係が始まり、ヒロシはいつも一人でいる矢澤やソフトボール部の
野末と大土居の女子2人組、絵が得意なヒロシも一目置く女子・増田ら新しい同級生や
中学受験の時に知り合ったフジワラ、女子校に馴染めない自転車少女フルノらとも
ヒロシは背がまだ低くて、そのことを本人も少し気にしているが、
人の気持ちを察することができたり、考えをまとめたりすることができて
“大人っぽい”少年。
進学や将来の夢、家族のことなどいろいろな思いを抱えている中学生たちが、
お互いを思いやる気持ちが切ない感じがしました。
舞台は大正区で少し土地勘があるので、イケアやメガネ橋はおなじみの場所で
ほかにも自転車少女が都島からイケアと聞くと“すごい”と思ったり、
心斎橋のピザ食べ放題のシェーキーズを思わせるお店など知っている場所が多く、
さらに興味深く読めました。
私の中学時代は、少ないお小遣いは漫画に消え、外食など考えたこともなく、
シェーキーズ・デビューは高校生になってからでしたが・・・
ラストはヒロシが高校に入学するシーン。
中学三年の1年間を彼らは互いに寄り添ったように過ごし、その時期が去り、
今後も彼らは彼らの場所で誰かを見つける。
「エヴリシング・フロウズ」すべては漂っていますケロ。
「きりこについて」
「きりこはぶすである」から話は始まる。美男美女の両親から生まれたきりこ。
他人が二度見するほどぶすだが、両親から“かわいい、かわいい”と育てられ、
それを疑うここもなく独特な女王のような風格を持つ女の子に成長する。
ある日きりこは黒猫を拾い“ラムセス2世”と名付け、家に連れて帰る。
その猫は人の言葉を理解する賢い猫に育っていく。
小学校5年になり好きな男の子から“ぶす”と言われたきりこ。さらに他の子たちも
魔法が解けたように、きりこがぶすであることに気づき始めた。
きりこはショックで引きこもり、ラムセス2世が寄り添うだけの状態が続いた。
しかしあることからきりこは外に出る決心をする…
以前にも読んだ本を再読。
西加奈子さんの小説には愛すべき登場人物が多いです。
この小説にはラムセス2世やこぼんさん(長老猫)など愛すべき猫たちも登場。
小説全体に西加奈子さんの「容れ物(外観)」に関しての思いだけでなく、
いびつな中身も容認するやさしさがあふれとても良い本だと思いましたケロ。


