総務省はNTTグループに対し、携帯電話と自宅で使う固定通信サービスの「セット割引」を解禁する検討を始める。
KDDI(9433)やソフトバンク(9984)には既に認めているが、巨大企業のNTT(9432)にはこれまで市場の独占につながるとして禁止してきた。
競争激化でNTTの携帯の国内シェアが4割まで低下したため、見直しの必要があると判断した。1985年の民営化以来、NTTを縛ってきた「独占規制」が転換点を迎える。
固定通信サービスには固定電話のほか、インターネット回線も含まれる。解禁後、NTTグループもNTT東西の光回線サービス「フレッツ光」などとNTTドコモのスマートフォンのセット割引を導入する公算が大きく、両方を契約する消費者には負担軽減につながりそうだ。
総務省はNTTへのセット割引の解禁などを検討するため、2月中に情報通信審議会(総務相の諮問機関)の下に有識者検討会を設置。
通信各社の意向も踏まえて今年11月をめどに見直し案をまとめ、2015年の通常国会に電気通信事業法の改正案を提出する。法改正後は、これまで禁止されていたNTT東西とドコモによる「一体営業」の一部が認められる。
競争の激しいスマホ市場で他社からの乗り換えを促す一方、固定通信とともに顧客を囲い込むのがセット割引の狙い。KDDIは自社の光回線や子会社のケーブルテレビに加入する家庭に対し、スマホの通信料を1人・月額1480円下げている。ソフトバンクは家庭向けのネットとスマホの両方に加入するとスマホの料金が安くなる。
13年の携帯の加入契約増加数でKDDIとソフトバンクがドコモを引き離した。一因がセット割引の有無で、02年に55%を超えていたドコモのシェアは13年に40.9%に下がった。シェア低下に苦しむNTTグループは総務省にセット割引の解禁を求めていた。
固定通信と携帯をセットで利用できれば、消費者の利便性も増す。例えば光回線に接続したテレビで見ていた映画の続きを外出先でスマホで楽しむことも容易になる。
NTTは85年の発足時には固定電話を独占していたが現在のシェアは7割。光回線の販売も伸び悩む。携帯だけで生活する人が増えたほかセット割引で攻勢をかけるKDDIなどに押されている。総務省は「支配力は弱まった」と判断している。
KDDIやソフトバンクはNTTへのセット割引の解禁に反対の立場。NTTが整備した光ファイバー網を他社に開放するよう求めており、セット割引を解禁する代わりに要求の実現を迫る可能性もある。