ベトナムのインフラ計画、遅延懸念、日本企業にも影響 | マクロ経済のブログ

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ベトナムの大型インフラ計画が相次ぎ遅延・停滞する恐れが出てきた。原子力発電所や高速鉄道は当初計画よりも5~10年ほど導入が遅れる見通し。

 空港や港湾の開発も遅れが目立つ。計画立案時に比べて経済成長が鈍化するなか、大型投資には批判がくすぶる。財政赤字も膨らみ、政府は慎重姿勢を強めている。

 「原発着工は2020年に遅れるかもしれない」。1月中旬に開かれたエネルギー関連の会議で、ベトナムのズン首相は漏らした。

 ベトナムは南部ニントゥアン省に第1原発(2基)と第2原発(2基)の建設を計画。第1原発は14年着工、20年に運転開始の予定だった。政府は現時点で着工延期を正式決定していないが、最大6年間、稼働が遅れる可能性がある。

 福島第1原発の事故、人材育成や法整備の遅れなど遅延理由は幾つかあるが、最大の原因はベトナム経済の失速だ。

 同国が原発建設を検討し始めたのは01年。その後10年間の経済成長率は平均7%弱を記録したが、12年、13年は5%台にとどまった。13年の財政赤字は9千億円超に膨らみ、公共投資削減を求める声も高まる。原発1基で約5千億円とされる巨額投資は決断が難しい。

 日本の新幹線方式による南北高速鉄道も実現が遠のく。日越政府が協力して20年にも一部開業を目指していたが、ベトナム運輸省は昨年12月、時速350キロの新幹線導入は「30~50年に検討する」との修正計画を首相に提出し、当面の新幹線計画凍結を認めた。

 計画見直しの理由は巨額投資への批判の声だ。同計画は6兆円弱の建設費に反対論が相次ぎ、10年6月の国会で承認案が否決された。その後も日本側が費用を抑えた試験線建設案などを提案したが、ベトナム側は慎重姿勢を崩さなかった。

 総事業費70億ドル(約7100億円)をかけて南部ドンナイ省で建設予定のロンタイン国際空港にも昨年、「無駄遣いだ」などの批判が噴出。慌ててズン首相が計画推進を念押しする一幕もあった。

 日越で共同開発するラックフェン国際港でさえも昨年末、両国間で開発手法の意見が食い違い、計画見直しの瀬戸際に追い込まれた。

 なぜ、公共事業見直しが頻発するのか。ベトナムは16年に5年に1度の共産党大会と総選挙を控える。党・政府関係者や国会議員は既に次期体制をにらみ始め、土地収用が必要な大型インフラは「有権者の反発を招く恐れがあるため及び腰になっている」(外国金融機関の関係者)。

 同国にとり大型インフラ計画は国威発揚の意味合いも強かった。インフラ計画の変更は同国が経済実態に即した現実路線への戦略転換を進めている証しでもある。

 この転換は受注を目指してきた日本企業にも影響する。原発は三菱重工業(7011)、東芝(6502)、日立製作所(6501)などが、新幹線は川崎重工業(7012)や住友商事(8053)などが受注を競ってきた。

 日系商社のベトナム法人トップは「同国でのインフラ開発は時間がかかりすぎて効率が悪い。農業など有望産業に投資を進める」と話す。日本が官民で進めてきたベトナムへのインフラ輸出戦略も練り直しが迫られそうだ。