日本株の問題点、純利益急増でもROE停滞 | マクロ経済のブログ

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株式市場で注目されそうな経済のニュースを取り上げています。個人的な独断が多少入っていますが(^^)

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 株式市場は消費増税決定を巡る政治イベントを消化し、企業業績の季節に突入した。10月下旬から本格化する上場企業の2013年4~9月期決算発表を機に「通期業績予想が上方修正され、日経平均株価は5月22日の高値(1万5627円)を目指す展開も予想される。

 だが現在は米財政問題への警戒や下期入りに伴う利益確定売りに押され上値が重い。純利益の大幅な増加が見込まれる中、資本効率の改善が遅れていることも、海外勢が日本株投資をためらう要因となっている。

 「914円、8.7%」――。日経平均の月末終値、日経平均採用銘柄のPBR(株価純資産倍率)、予想PER(株価収益率)という3つのデータを使って算出した「13年9月末時点の予想1株当たり当期純利益と、予想ROE(自己資本利益率)」だ。

 1985年からのヒストリカルデータと比較すると、1株当たり利益は07年10月末に記録した過去最高益の946円に接近していることが分かる。これに対してROEは同年同月末の10.7%に迫っているとは言い難い。

 純利益が過去最高の更新を視野に入れつつあるのに、肝心のROEが出遅れている。日経平均が13年9月末時点で1万4455円と、07年の1万5307円(12月末)~1万8138円(06月末)のレンジに届いていない原因も、この辺にあると推測できる。

 ROEは純利益を自己資本で割って求める。純利益が最高水準に達しながら、ROEが相対的に低迷しているのは、自己資本に問題があることは明らかだ。

 問題の実態は公式の統計で確認できる。東京証券取引所の決算短信集計の長期統計(2006~12年度)によると、東証1部上場企業の「自己資本」は12年度に246兆3679億円と前の年度に比べ9.2%増加した。

純利益が12兆3925億円と17.9%増加したにもかかわらず、配当金を5兆5854億円と4.7%増にとどめた結果、内部留保が急増。自己資本はピークだった07年度の239兆4547億円を上回り、他の指標に先駆けて過去最高を更新した。

 内部留保は将来の設備投資やM&A(合併・買収)など利益成長のために使う重要な資金だ。しかしROEを維持できる資本規模を超える利益が生まれた場合は、ROEを維持・改善するために増配するか自社株買いを行う必要がある。

 純利益をリーマン・ショック以前の最高水準まで回復できたとしても、内部留保を増やして資本効率を悪化させ、企業価値を損なってしまっては元も子もない。配当や自社株買いという株主配分を強化するのは、株主のためだけではなく、企業価値の希薄化を防ぐという重要な目的がある。

 過剰な内部留保という錘(おもり)を抱えたまま、飛躍できないでいる日本企業のROE。その憂鬱に早く気付いて対処することが株価の本格上昇につながる。