船戸与一「雷の波濤~満洲国演義7~」読了。マレー侵攻から太平洋戦争開戦を描く。
 
小説としては今迄で一番面白かった。特に次郎が上海から船で香港へ、更に海南島へと渡る時に海賊の襲撃を受け激戦となる。その後ハノイからサイゴン、そしてマレーシアへと渡る旅は今迄とは一線を画し、冒険ものか?と思えるほどワクワク感があった。

大東亜共栄圏、この構想は素晴らしいと思うがやはり足並みを揃えるのは至難の業だ。インドやビルマなどは帯同したが、支那やホーチミンのベトナム共産軍は抗日を展開する。しかし、アジアはインド・ビルマ・マレーシア・シンガポールはイギリスに、ベトナムはフランスに、フィリピンはアメリカに、インドネシアはオランダにと散々ヨーロッパに占領されてきたのだ。アジア解放を訴える気持ちは賛同する。
 
●敷島四兄弟
太郎は特務機関の間垣徳蔵から近衛首相暗殺を企む大尉暗殺の手助けをさせられる。
 
次郎は特務機関からの要請でインド独立を目指す為、上海でインド女子部隊へ軍事訓練を施す。続いてビルマ独立の為にビルマの若者を海南島へ運ぶ依頼を受ける。その後陸軍中野学校卒の玉名克樹と出会い共にハノイへと向かい、その後サイゴン、そして英領マレーからシンガポールへと渡る。
 
三郎は帝国陸軍のマレー侵攻に帯同する。
 
●日本情勢
米内光政政権崩壊、第二次近衛文麿政権発足。
 
第二次近衛内閣崩壊、翌日第三次近衛内閣発足。これは松岡洋右外相を更迭する為だった。
 
第三次近衛内閣崩壊、東条英機内閣発足。
 
●日本軍部
軍部は南機関というビルマ独立支援機関を設立する。仏領インドシナ北部(現ハノイ)へ進駐を開始、東亜新秩序建設の協定に調印させる。第25軍、南部仏印注進でハノイからサイゴンへ。
 
日独伊三国同盟締結
日ソ中立条約締結
 
ついに日米英開戦。陸軍はマレー侵攻、海軍は真珠湾攻撃を開始。第25軍は英領マレー東海岸コタバル港に上陸、またタイ領のシンゴラやパタニから上陸、飛行場のアロルスター飛行場を占領。その後ペナン島ジョージタウンに上陸して占領。英印軍とオーストラリア軍はシンガポールへ撤退。その後はマレー半島を南下。
 
香港攻略も同時に進行、英軍は降伏を申し出る。また第14軍はフィリピン・リンガエン湾に上陸後、ラモン湾を押さえる。真珠湾攻撃に成功した海軍は太平洋の要衝ウェーク島に上陸、翌日に制圧完了。

 

年が明け昭和17年、第14軍はフィリピンの首都マニラを制圧。第25軍はマレーの首都クアラルンプールに突入、その後南下しクアルンを制圧。
 
英軍を攻めると共に、インド軍にヨーロッパからのアジア解放を訴えインド独立へと画策する。
 
クアルンからシンガポール上陸。ついに英・オーストラリア軍は降伏。山下奉文司令官は無条件降伏を勝ち取る。日本軍はマレー・コタバル上陸から70日弱でシンガポール攻略に成功する。
 
第16軍はオランダ領、スマトラ島を占領。重要地区パレンパン油田地帯の石油確保に成功する。
 
●ヨーロッパ情勢
ドイツの電撃的侵攻が続く。デンマーク、オランダ、ノルウェーが降伏。英仏連合軍はドーバー海峡に面した要衝ダンケルクからも撤退を始める。イタリアは英仏に宣戦布告しフランスへ侵攻開始。フランス軍はパリから撤退、仏政府はボルドーに移転、レイノー内閣は総辞職し後継は英雄ペタン元帥が指名される。ドイツ軍はパリに無血入城、ペタン元帥は降伏を声明。ペタン元帥の部下ド・ゴールはイギリスへ亡命し、対独抗戦組織を作る。
 
イギリスはヒットラーとミュンヘン協定を結びナチスドイツに対して宥和政策を採り続けたチェンバレン首相からチャーチル政権へ。
 
フランス、イギリスと断交。チャーチルはドイツがフランス艦隊にイギリス攻撃を命じる可能性を恐れ、フランス艦隊へ砲撃、フランス艦隊のほとんどが航行不能となり1300名近い死者が出た。
 
ハンガリー・ルーマニア・スロバキアなど東欧諸国が三国同盟に参加。
 
ドイツ、ソ連へ奇襲攻撃を開始。
 
米英蘭と支那によるABCD包囲網を完成させ、ルーズベルトは対日石油禁輸に踏み切る。
 
チャーチルとルーズベルトは北大西洋の公海上で共同宣言「大西洋憲章」発表。
 
米英ソ三国間の議定書調印。
 
アメリカ国務長官ハルは、日本が提出した甲・乙案に対し最終的基礎案を突き付ける。とても日本が呑める条件ではなく外交努力も空しくついに日米開戦へと向かっていく。
 
●アジア情勢
独英の戦争を機にインドとビルマ(現ミャンマー)の独立運動が激しくなっていき、仏領インドシナのサイゴンでも独立蜂起が起こる。タイではメコン河西岸の領有権を唱えて仏領インドシナに攻め込み、日本の斡旋で仏印カンボジアのほぼ全域を押さえ平和条約に調印。
 
仏領インドシナが共産党を中心とするベトナム独立機関を発足、ホーチミンを筆頭に反仏、反日の武装闘争を開始。
 
日本軍の快進撃によりタイが英米に宣戦布告。またビルマも独立義勇軍が日本の第15軍と共に対英戦争を開始。
 

 

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