船戸与一「灰塵の暦~満洲国演義5~」読了。南京事件をメインに描く。日本軍の暴虐ぶりは確かに酷い。しかしその背景には蒋介石率いる国民革命軍の反乱による暴虐への復讐心があった。自分は右でも左でもないし、戦争時の日本を美化するつもりもない。この時代はどこの国も歪んでいる。どこかが一方的に悪いという見方だけはしないようにしようと思う。
 
この小説の主人公敷島四兄弟。太郎は出世し国務院外交部政務司長となり新京へ。次郎は調査の為に渡満していた東北帝大の外岡教授が抗日連軍に拉致されたことを知り救出に動き無事救出。しかしここも次郎にとっては悲しい局面が。。。そして次郎はこれを機に馬賊から足を洗う決心をする。三郎は憲兵隊大尉として各地を駆けずり回る。四郎は天津で<庸報>の新聞記者となる。次郎はどこへ向かうのか?一番気になるな。
 
日本では広田弘毅内閣から林銑十郎内閣へ。しかしそれも崩壊し近衛文麿内閣発足。そして日独伊防共協定締結。
 
支那も揺れ動いている。
西安事件。張学良は蔣介石を拉致し西安へ連行。蔣介石は張学良の抗日容共の要求を受け入れる。北平占領。支那事変、第二次上海事変を機に日支全面戦争へ。北支、東条兵団が大同を占領。上海制圧、そして南京事件へ。
 
ヨーロッパ情勢。
スペイン内戦は熾烈を極める。モロッコで反乱を起こしたフランコ将軍はスペイン全土を席巻しつつある。これに対し人民戦線はバスク地方のゲルニカにバスク自治政府を樹立させて対抗させるとともに、ソ連の共和国政府援助を取りつけ、フランコ側をイタリアとドイツが支援していると批難。ナチス・ドイツはフランコ将軍を支援するためにバスク地方のゲルニカに無差別重爆撃を加える。ヒットラーのナチスドイツは一段とユダヤ人への締め付けを強化する。フランスでは人民戦線が過半数を占めてブルム内閣が誕生。イタリアのムッソリーニはエチオペア併合を宣言。