船戸与一「事変の夜~満洲国演義2~」読了。昭和6年(1931年)満鉄戦柳条溝爆破を皮切りに起こる満州事変、上海事変を描く。軍事力で各地を制圧していく関東軍。明らかに軍部の暴走だが、政府も軍部を抑えることが出来なくなっていき、そして青年将校達が国家改造を掲げ日本の要人達を暗殺するという事態へと進む。
 
国民も満州への期待が膨れ上がっていき、満州制圧を望んでいる雰囲気が描かれている。世界恐慌で大不況となり失業率もうなぎ上り。潤っているのは財閥ばかりで、農村部では人口過剰で娘売りも頻繁にあったという。関東軍の満州での勢いに期待をしてしまうであろうし、侵略は肯定出来ないが、国家改造を叫ぶ青年将校の気持ちも分かる。だがやり方が劣悪だ。
 
主となる敷島四兄弟。参事官として国際協調路線寄りの長男・太郎に対し、どこまでも関東軍に歩調を合わせる憲兵隊中尉の三男・三郎。兄弟の絆をも引き裂かん事態となる場面は胸が張り裂けそうだ。馬賊青龍同盟は解体し、やがて金の為に関東軍の裏工作の手助けをするようになる次男・次郎。一番応援したくなると思える主人公なので今後の展開に期待。四男の四郎は最初からずっと苦しんでいる。頑張って自分の人生を歩んでほしいと願う。
 
満州事変が主軸ではあるが、イギリス国籍でありながらユダヤ人であるジョセフのイギリスに対する復讐心の心情や、大アジア主義の棟梁頭山満の話や、チャンドラボースと中村屋の関係など、まだまだ沢山あるが脇を固める話はどれも興味深い。続きも楽しみだ。

 

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