時とともに人の好みは変わるもので、時計でいえば私は長らく自動巻きカレンダーつきが良かったけど、近ごろはシンプルな手巻き式を好むようになりました。理由は部品点数が少なくてオーバーホールが楽だから。若いうちは違ったのです。時計の中身は複雑であればあるほど良かったし、やり甲斐を感じた。でも年をとるとダメですね。面倒になる。少し前にヤフオクで61スピードタイマーを嬉しそうに買ったけど、あれを自分で分解する日が来るとは今の私には想像すらできない。だって自動巻き+カレンダー+クロノグラフの三重苦ですからね。無理無理。


手巻き式ではセイコークラウンとシチズンデラックスを最良と心得ます。いずれ劣らぬ名機。時間はよく合うし、タマ数が多いからパーツの入手にも困らない。デザインバリエが豊富だから選ぶ楽しさだってある。そして何より素晴らしいのは、お値段がとってもリーズナブルだということ。私が愛用しているクラウンは7500円で、デラックスに至ってはたったの4500円。そうそう、変わったといえばこの辺も大きく変わりましたね。資産価値とは違うけど、昔は高くても良いものを、分かりやすくて誰の目にも明らかなものを選んで買い求めていた。でも今は違います。そこに価値を置かなくなった。使い込まれ、まっとうに年を重ねた普及品こそが1番と、恐らくは自分がそういう存在であるが故に、そしてそういう自分を受け入れられるようになったが故に、この年にして漸くそう思えるようになりました。


先のことは分からない。でもこの2本、これが私の現在地。悪くない。うん、悪くない。