私は、脚気の一歩手前で、既に末梢神経障害が起きており、中枢神経障害も出現し始め、悪心嘔吐で消化管の機能も失った状態で緊急入院をした。

水さえ喉を通らぬ状況だったので、24時間の持続点滴が一週間続いた。

昔なら確実に亡くなっていたと思われる。24時間の持続点滴は、自由を奪われ寝ても覚めても、点滴チューブが腕に固定されている。

これ程不自由な生活はない。一週間の絶食を経験したのも初めてだった。よくも、こんな状態になるまで治療をしなかったのかと不思議に思われるだろう。

その一番の理由は、自分の状態がビタミンB1不足による脚気の前段階症状と、全く気付かなかった事です。

末梢神経障害が出始め、どんどん症状が重くなるのに、私は、濃いウイスキーを飲み続けていた。中枢神経障害が出始めてもウイスキーは辞めなかった。

24時間の持続点滴が始まった頃、頭は朦朧としており、一日中続くめまいの中で、うわごとを言っていたに違いない。

医師もこの症状がビタミンB1不足による症状と、気づいてはいなかった。たまたま、点滴に含まれていたビタミンB1製剤が効果を発揮してくれた。

徐々に回復しつつあったが、頭がふらふらするめまいには最後まで悩まされた。一週間の持続点滴が終わり、漸く水の様なおもゆを、口にできた時の喜びは、今も忘れることが出来ません。

症状も時間と共に良くなり、何とか食事ができる状態まで回復したので、退院する事が出来た。それから1週間はお粥のような軽い食事が続いた。

九死に一生を得たとは、この様なことだろうと思った。昔はビタミンB1欠乏症で多くの人達が亡くなっていることを知り、現代に生きている自分が、ラッキーだったと思っています。

脚気は気づくのが遅れると、命取りになる重い疾患です。お酒を飲む人はくれぐれもビタミンB1欠乏症に気を付けて下さい。私は、この日を境にアルコールは辞めました。そして、毎日アリナミンを忘れずに服用しています。