「第8回方言漢字サミット」の会場に入ると”博士ちゃん”の撮影クルーにビックリ!

「第8回方言漢字サミット」2025/12/13に開催されました。

・場所:八潮メセナ・アネックス(八潮市民文化会館 駅前分館)
・主催:八潮の地名から学ぶ会

<はじめに「方言漢字」ってなに? そんな方のために

方言漢字」という言葉に聞きなじみがない。そんな方のために”八潮の地名から学ぶ会”制作のリーフレットより引用します。

方言と同様に、各地に存在する地域性を持つ漢字を「方言漢字」と呼びます。各地域の歴史と文化を反映し、魅力的な漢字が数多くあります。
身近に潜む「方言漢字」を見つけ、その豊かな世界に触れてみませんか。

何度か紹介してきた八潮市「垳」は、全国で唯一無二の地名です。
でも、もっと驚いたのは埼玉県の「埼」です。埼玉県は県名ですから全国の人が知っています。その「埼」も方言漢字なんです!
つまり日本国内で、ごく限定的にしか使われていない漢字なんです。

八潮の地名から学ぶ会のリーフレットより、方言漢字に関係するものを一部撮影しました

「埼」の説明についても、やはり”八潮の地名から学ぶ会”が制作した「方言漢字マップ」(埼玉県編)より、ここでは要約して引用します。

「方言漢字」は希少性だけでなく、見慣れていても使用範囲が限られた漢字も含まれます。その代表例が「埼」です。「埼」を含む自治体名は埼玉県と佐賀県神埼市(かんざきし)のみで、全国的にも用例は多くありません。「埼玉」の由来は行田市埼玉(さきたま)にあり、古くは「前玉」「崎玉」とも書かれましたが、平安時代の文献では「埼」が主に用いられていました。
海上保安庁では、「埼」を水辺に突き出した地形を表す漢字として用い、灯台名や海図でも区別しています。
こうした歴史を踏まえると、「埼」は地域の自然と営みを映す、重要な漢字であることが分かります。

「方言漢字」を知って約1年。2022年春に八潮市に来て以来、変わった地名の多さを感じてきましたが、日本唯一の地名や珍しい読みが多く、その背景にある歴史を知るほどに、このまちがより身近で大切に思えるようになりました。

「第8回方言漢字サミット」の会場

もう一例だけ、ご紹介。
大阪府の「阪」も方言漢字! 『方言漢字事典』の「阪」という項目の冒頭には、
──大阪府と三重県に集中的にみられる地域文字。──
「阪」と「坂」の用例や歴史、大阪府という名称が定まったことで「阪」の使用が地域に広がっていった過程も、とても興味深い内容です。
こうした話に「エーッ!」と驚き、もっと知りたくなる。そんな人たちが、年に一度、全国から八潮市に集まる――それが「方言漢字サミット」です。

「方言漢字」について、少しご理解いただけたところで本題に入ります。

「第8回 方言漢字サミット」 地域文化を支える漢字と言葉

笹原 宏之 氏、基調報告の様子「ガケと地名 ―改めて『垳』の字について考える―」

2025年12月13日(土)午後、八潮メセナ・アネックスで「方言漢字サミット」が開催されました。

専門性の高い報告が続きましたが、「方言漢字」を知ったばかりの私にも、その面白さを実感できる内容でした。全国から約150人が会場に集まり、用意された資料はほとんど配布終了、懇親会も定員を超える盛況ぶりでした。

このサミットの魅力をすべて紹介することはできませんが、以下では特に印象に残った点をいくつかお伝えします。

1. 基調報告
  「ガケと地名 ―改めて『垳』の字について考える―」
   笹原 宏之(早稲田大学教授)

笹原 宏之 氏、基調報告の様子「ガケと地名 ―改めて『垳』の字について考える―」
基調報告の冒頭で笹原さんより、楽しい話題を紹介していただきました。

ミステリー作家の宮部みゆきさんまで、「読売新聞」の書評欄で『方言漢字事典』を取り上げてくれた。初めはフェイク事典だと思い、その1年間(2024年)で最も驚いたようで、総集編となる書籍版『宮部みゆきのおすすめ本 2020~2024』《中公新書ラクレ》では、「事典」を「辞典」と間違え、 末尾の句読点も打ち忘れている。 それほど驚いたのであろう。

「方言漢字」は、一般には認知度が高くはないかも知れません。
初めはフェイク事典と思われたのに、おすすめ本に紹介されているのは、知らなかったことを知って、きっと大いに興味を持たれたのではないでしょうか。

笹原宏之編著『方言漢字事典』(研究社)、この本は「方言漢字サミット」から生まれました
ようやく、笹原さんの本論です。
「ガケと地名 ―改めて『垳』の字について考える―」
日本列島の地形と「ガケ」に着目し、言葉や漢字、地名や姓の中でどのように受け継がれてきたかが語られました。

八潮市大字「垳」という自然堤防上の集落として存し、地名は「みずかけ」「はけ」の転訛といい、垳地区には「垳川」が流れ、「垳の万人塔」もある。

八潮市は関東平野南東部の沖積低地に位置し、シルト~粘土主体の軟弱地盤が広く分布する地域です。道路陥没事故をきっかけに、こうした土地条件を踏まえた対策の重要性を改めて感じています。

地名を変えてイメージだけを飾ろうとするのではなく、土地の特徴を表しうる「垳」を地名として維持存続させることで、行政は対策の強化と市民への啓発を図り、住民もまた備えの意識の保持につなげていくことが大事であろう。
宮城県の「閖上」も方言漢字を用いることで、災禍の記憶と防災の大切さを伝えようとしたと考えられる地名であった。

これは、地名が土地の性質や記憶を伝える、重要な手がかりであることを示しています。閖上が水と深く関わる土地の性格を表し、災禍の記憶と防災の重要性を伝えているように、八潮市でも「垳」という地名を、将来に向けて大切に守っていきたいと感じました。

2. 報告「宮城県北部の方言漢字『埣・𡉻
  (ソネ)の分布状況と字体について」
  菊地 恵太(東北大学 准教授)


菊地 恵太 氏(東北大学 准教授)の報告

宮城県北部・大崎市

報告では、「ソネ」という地名の成立や地形的特徴、分布の広がりをたどるとともに、地図サイトでは確認できなかった異体字「土卆」の使用例を、現地調査により電柱表示などから紹介していました。

「埣」を含む地名が70か所以上あるのに対し、「土卆」は一部に限られています。その背景として、埣=JIS第2水準、土卆=JIS第4水準、という文字コードの違いが、地名表記の継承に影響している可能性が示され、考えさせられる内容でした。

3.報告「日本橋蛎殻町の表記」
  佐々木 絵美(東京都江戸川区 在住)


佐々木 絵美 氏(東京都江戸川区 在住)の報告
仕事上、日々漢字表記と向き合っておられる佐々木さんから、日本橋蛎殻町の表記についての報告がありました。

新聞の漢字表記ルールは、原則として

1.常用漢字表・人名用漢字表に準じる
2.それ以外の漢字は、正字(いわゆる康熙字典体)を使用
3.各社独自の用字用語の取り決めに従う

に基づいて運用されているとのことでした。
記録の正確さを大切にしつつ、表記の変化をできるだけ抑え、読者が内容に集中できるようにする。それを前提として、扱う漢字の多さに加え、そこに文字の揺れが生じることで、非常に大変な作業なのだろうと想像します。

「蛎殻町」と「蠣殻町」の掲載件数を、全国紙の全国版・都民向け紙面、さらに地元紙で年別に比較すると、全体としては常用漢字式の略字による「蛎殻町」表記に近づいてきているようでした。ここには、漢字変換のしやすさや書きやすさといった、要因も影響しているのでしょうか。

笹原さんの総括の中で、「お品書きなら『蠣』のほうが美味しそうではないですか?」に会場から笑いが!

4. 報告「八潮市の新設小学校の校名決定を振り返る」
   昼間 良次(埼玉県八潮市 在住)


昼間 良次 氏(埼玉県八潮市 在住)

新設小学校名決定までの経緯について、ここでは要約を記載します。

  1. 2025年7月31日、八潮市議会(総務文教常任委員会)、及び8月8日の八潮市議会(本会議)の審議により「花桃小学校」が校名決定しました。
  2. 課題としては、行政施策は市民感覚と一体であるべきだが、今回の名称案決定では継続性や意思決定の過程が見えにくかった。手続きは自治基本条例の趣旨に沿っていたのか、市議会は民意を十分に反映できていたのか。
  3. 新設小学校名に「垳小学校」を求める請願書には、四千筆の賛同署名簿を添えました。

5. 11月16日/第3回 方言漢字ウォーキング大会
  「垳地蔵の歩んだ道」実施報告
   黃 詩琴(早稲田大学大学院 特別研修生)


黃 詩琴 さん(早稲田大学大学院 特別研修生)

ウォーキング大会に参加するきっかけは、

  • 中国広東省に現存する唯一の地名用漢字「笹」の発見と調査でこの地名が消滅してしまう不安
  • 日本唯一の地名「垳」とウォーキング大会の情報を知り、ぜひ現地を感じたいという思い

ウォーキング大会の報告(要約)

八潮市の「垳」から台東区清川まで、全行程およそ12km。
「垳」が電信柱の表示で「桁」に置き換えられていたことや、区画整理や住居表示法による地名の変化が印象に残りました。

垳地蔵は、 かつて旅人や人々の延命利生を願って造立され、 現在の地に遷されたといいます。 場所は変わっても、 長い道のりを見守ってきた存在であることに変わりはありません。

実際に「垳」を見て歩き、中世の街道である下妻道をたどる中で、地名や文字もまた、人と同じように旅をしてきたのだと感じました。

このような大会が、八潮市だけでなく、『方言漢字事典』掲載の各地へ広がっていくことを楽しみにしています。

※ 当日の詳細は、【八潮市】380年前に垳地蔵の歩んだ道・下妻道を辿る12km、12/13「方言漢字サミット」も注目! でもご覧いただけます。

6.「方言漢字」書道展 出品作紹介


「方言漢字」書道展 出品作の数々

会場の壁に飾られていた作品です。一つひとつの作品にストーリーがあるのですが、またの機会にご紹介できればと思います。

7. 「方言漢字」に関する地域伝承・故郷自慢
  報告「北海道の地域文字『咾(いかん)』
      の由来にまつわる異説」
   角鹿 脩斗(宮城県在住)


角鹿 脩斗 さん(宮城県在住)

明治期の北海道には、「咾別(いかんべつ)村」という地名がありました(現在も神社名などに残っています)。この地名は、アイヌ語で「水があふれる川」を意味するとされ、漢字表記では「いかん」に「咾」という珍しい字があてられています。

しかし「咾」は、中国の字書にも載るものの意味の説明は簡単で、日本語の読み「いかん」との関係は分かりにくい漢字です。そのため、「老人の口癖だから『いかん』」といった、日本独自の解釈が語られてきました。

報告では、こうした通説とは別に、「咾」には本来「いがむ」という読みがあったのではないか、という別の見方を紹介し、それを裏づける文献資料についても紹介されました。

方言漢字サミット会場は、
  ”博士ちゃん”の撮影・インタビュー会場に!!


”博士ちゃん”の撮影・インタビューの様子

全ての報告が終わり、本会の終了後にも、方言漢字論議があちこちで続き、会場内の数ヶ所で取材が続いていました。

テレビ朝日「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」の取材に協力しました
 その様子が、次の日時で放送されます。
 ご関心ある方は、視聴してみてください。会場の様子や熱気が伝わることでしょう。
 ・番組名:テレビ朝日(5ch)「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」
 ・日時:1月24日(土)午後6時半~8時
 ・内容:企画「漢字ロマン博士/難読名字さん巡り in 埼玉」
<参考:番組HP>
 テレビ朝日「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」

「方言漢字」懇親会(忘年会)
懇親会では、皆さんの前に垳に因んだ八潮名物? 満載のレジ袋!

ここでも自己紹介は、方言漢字談議につながることが多く、いつまでも話が尽きません。
「垳っぷちまんじゅう」の菓子道楽杵屋のご主人、村山さんもおまんじゅうを持って駆けつけました。

食事は、ごま塩「垳」赤飯おにぎり、「垳」いなり寿司・・・・。

「方言漢字サミット」から生まれた『方言漢字亊典』


参加者が購入した著書にサインをする笹原さん

笹原さんの報告の項でも触れましたが、このサミットから『方言漢字事典』が生まれています。懇親会の席で、今回の多彩な報告や質疑、自己紹介より派生した豊かな情報から、第二の『方言漢字事典』のお話も出て、とても楽しみです。

皆さんの報告から学ぶほどに興味が尽きず、『方言漢字事典』を購入してサインをもらい、読み進める度に「それぞれの方言漢字が息づく現地に行ってみたい」と想像を膨らませています。

<2025年12月13日/第8回 方言漢字サミット

 地名とまちづくりを考える
「第8回方言漢字サミット ― 地域文化を支える漢字と言葉 ―」
・日 時:2025年12月13日(土)午後2時~5時
・場 所:八潮メセナ・アネックス(八潮市民文化会館 駅前分館)

2025年11月16日、第3回 方言漢字ウォーキング大会「垳地蔵の歩んだ道」にて撮影

2026年2月22日/第2回 「垳」サミット開催のお知らせ

八潮の地名から学ぶ会主催により「第2回垳サミット」が行われます。

 第2回「垳」サミット ―「方言漢字」の聖地から報告 ―
・日時:2月22日(日)午後2~4時 (開場:1時半)
・会場:八潮市立資料館(視聴覚講座室)
 [八潮市南後谷763-50/東武線「草加」駅からバス、駐車場あり]
・内容:
 「同人誌『徘徊通信別冊 垳の号』を発行して」(仮題) 
   みくまり(弘前市在住)、kT(品川区在住)、すくとり(北上市在住)
 「中国の地名に見られる笹・椥について」(仮題) 
   黃 詩琴(早稲田大学大学院 特別研修生)
 「垳レポート」(仮題)
   昼間 良次(八潮市在住)


同人誌「徘徊通信別冊・垳の号」

・事前申込:不要(入場自由)
・参加費:なし(会場費・資料代他として、カンパ制で行っています。趣旨をご理解の上、ご協力ください)

<主催・問合せ:八潮の地名から学ぶ会>

TEL:090-4389-4895 FAX:048-998-4451
E-mail:gake840@yahoo.co.jp
※「方言漢字サミット」に関心を持たれた方は、2026年11月ごろに八潮市で予定されている次回のサミットにぜひご注目!!

※「方言漢字マップ」(リーフレット)入手ご希望の方は、やしお生涯楽習館、八潮市立資料館に設置しています。郵送希望(資料請求)は八潮の地名から学ぶ会 事務局まで

詳細は、⇒「垳」を守る会ブログをクリックしてご覧ください。