前回からのつづき

 

世間はクリスマス。

 

僕をはじめ、幹部と呼ばれる連中全員の顔は全員深い闇に落ちたような表情だったはず。

 

逮捕されてから50日、ついに保釈が認められて僕たちの前に出てくるのである。サンタでもなく、トナカイでもなく、うちの会社の社長と会長の2トップが、である。

 

 

話は前後するが、この保釈にたどり着くまでも長かった。

 

詳しくは調べてもらえばわかるが、逮捕後48時間は取り調べを受ける。そこで容疑が認められる、られないが判断されたあと拘留の有無が決定される。拘留された後も起訴に至るまでの期限が決められているために、そのたびに外の世界に出られるかどうかが

決まる。

 

今回の事件にしても同じで出られる人はたぶん早く出られるのだが、事件として悪質だったり、常習性がみられた場合は出られない可能性が高くなり、拘留延長になってしまう。

 

この拘留延長かどうかが決まる日は、会社にいても心なしかそわそわしていた。

 

ただ、前提として書かせていただくが、早く出てきてほしいという気持ちからくるものではない。あくまでも個人的には、そう思っていた。

 

 

話を戻します。

 

 

クリスマスイブ、ついに拘留状態から保釈が認められたと聞いたとき、ついにこの日が来たかと思った。

 

 

朝、会社に幹部連中が集合し、全員で弁護士事務所へ向かう。

 

会社に来てもらっては会社の士気も影響するし、すくなくとも塀の中と僕たちがしてきたこととの時間の流れが違うのでややこしくなるという判断。

 

 

とはいえ、これは僕たち社員の考えであって、彼らにしてみれば、一刻も早く顔を見せることで安心するし、させられると考えてたっぽい。そんなわけないのに。

 

 

弁護士事務所へ向かう道中は終始無言。

テンション上がってる・・・はずもない。

 

 

弁護士事務所で顔を合わせるつもりだったのだが、弁護士事務所の駐車場で鉢合わせ。まさかこんなところで会ってしまうとは、予想外。

 

こちらの顔を見るなり、片方は涙をうかべている。

 

 

弁護士事務所にて、幹部と社長会長が相対して着席。

 

 

会長から言葉が発せられる。

 

 

「今回はいろいろ苦労かけたな。言いたいこといろいろとあるだろうから順番に話してってくれるか。まずは言いたいことをなんでも言ってくれたらええわ。」

 

 

幹部連中が順番に現状報告を話す。

 

そのあと、再び会長がそれぞれ言いたいこと、考えてることあるやろうからそれも言ってくれるか?

 

という言葉を受けてそれぞれが自分の意思を表明。

 

「社長と会長が捕まったこと、この事実は事実であり曲げようもないこと。

ついては、社長と会長にはその席を空けていただきたいと考えている。

もし、できないようであれば信頼・信用がない今、付いていくことはできない」

 

ということを伝えた。

 

これは僕自身で考えてたどり着いた結論である。

 

 

お金をたくさんもらっていようが、今のポジションが心地よかろうが関係ない。

おっさんとおばはんと一緒に働くのだけはお断り。

 

これに尽きる。

 

 

ここだけの話、信頼とか信用については、捕まっているときに会社の財務状況についてもある程度知る機会があったので、ものすごく馬鹿らしくなったっていうのも大きい。

 

あとはこの言葉を受けて、社長と会長がどういう意見を言ってくるか、だけである。とはいっても、何を言われても退く気がないならその時点で話はどうなるわけでもなく僕が去るだけのこと。

 

 

そこで彼らは逃げたのだ。

 

 

「今は出てきたばっかりで回答できない。」とだけ答えるにとどまった。

 

 

(つづく)