潤くんハピバストーリー
完全妄想のおはなし
BLです












「…だ、大丈夫ですかっ!?」





もう一度、声を掛けてみる…


そしたら、う、う〜…と呻くような声が返ってきた!


良かった…生きてるっ…





「頭とか打ちました?痛いとこ、あります?」





ゆっくりと、肩を抱えて身体を起こす。


外傷は…ないっぽい。


どっから来たのかな……


…見た感じ…30歳くらい?


無精髭生やしてて…


靴もズボンも泥だらけ…


…一瞬よぎった浮浪者って言葉。


…だとしても、助けなきゃ。






「ねぇおじさん!大丈夫?動ける??」



『…ぅ……動けねぇ……』



「えっ…頭痛い!?」



『……は…ら…』



「え?なんて?」





弱々しい、小さな声だから聴こえねぇっ…





『……腹…減って…動けね……』



「………ぇ?」



『……飢え死にする…何か食いもん………』



「………はぁぁ??」





やっぱ浮浪者なのか!?


今の時代に飢え死にとかっ…


有り得ねぇっつうのっ!!





「……ったく人騒がせなっ…」





厄介者に出会ってしまったと思った。


でも見捨てるなんて出来なくて。





「……はいっ!トマト!」





荷台から、さっき貰ったばぁちゃんのトマトを1つ、顔の前に差し出した。






『ぉぉ…とまとぉ……くれんのか?』



「死にそうなんでしょ?」



『あぁ…悪ぃな……いただきます…』





かぷり、と控えめに一口齧った。





『……んふふ…うんめぇ…///』





…無精髭には似つかわしくない、八重歯が見えた。


それにこの人…笑うとなんだか幼さを感じる…





『あ〜生き返ったぁ…マジで助かった!ありがとう!!』





あっという間に1つ。たいらげた。


そして、よっこらしょ…と立ち上がった。





「……大丈夫…ですか?」



『おう!このトマトのおかげ♪元気出た!……ぉっとっと…』





元気出た、と言ってる割りには、まだフラフラしてる。


トマト1つくらいじゃ、お腹いっぱいにはならないだろうし。





「まだフラフラじゃん…ほんとに大丈夫?」



『…おうっ…っとっと…』





またふらついてるっ…

…全然大丈夫じゃないじゃん!!





「……あの…この後何処か行くんですか?」



『んにゃ…特に決めてはねぇけど…』



「それなら、少し休んだらどうですか?」





また転んだりしたら…

次こそ大怪我しちゃうかもだし…





『…そぉだなぁ……じゃあ…ここらにテント張って休ませてもらおうか…』



「…テント?」



『そう、テント。オレの寝床♪』



「寝床って……家はないの?」



『あるよ?…ほとんど帰ってねぇけど…』





背負ってた荷物を下ろし、テントを広げる準備をしてる…




「ね、ねぇ!」



『おう?』



「…ばぁちゃんち行こう!」



『……へ?』



「テントで休むより、ばぁちゃんちのほうが断然良いと思う!お腹もまだ減ってるでしょ?…お風呂だって入れるよ?」



『風呂…かぁ……や、でも…そんな迷惑はかけらんねぇよ…』



「大丈夫だよ!ばぁちゃん優しいし!」





どうしてだか、この人を放っておけなくて。


俺は強引にその人を軽トラに乗せ、さっき渡った橋をまた渡ってばぁちゃんちへと向かった。





「ねぇ、おじさんはどこから来たの?」





おじさんのことを、色々聞いてみよ。





『おじっ……おまえなぁ…オレはまだ22だっ!』



「……またまたぁ…どう見ても30くらいでしょ…」



『…そんなに老けてみえる?』



「老けて…ていうか…まぁ、普通に30にはみえるよ?」



『や、だから22なんだって…』



「…ほんとに?」



『…年齢詐称は好きじゃねぇ。』



「…22ってことは、俺と3つしか違わねぇじゃん。」



『…じゃあ…19?』



「そ♪…まだ18だけどね、来月の誕生日で19♪」



『そうか。そりゃおめでとさん。』



「まだ早い〜…言うなら当日に言ってよ…」



『…そん時には居ねぇぞ?オレ…』



「あ…」



『そんなに長居するつもりはねぇよ。少し休ませてもらったらすぐ出発だ。』



「そ、そっか…そりゃそうだよねっ…」





どうしてだか、この人がすぐに居なくなっちゃうことが、すごく悲しくて…動揺してしまった…





「あ、ここだよ。ばぁちゃんち…」



『おぉ…』



「ちょっと待ってて?話してくる。」





俺はばぁちゃんに事情を話して、少し休ませてもらえるように頼んだ。





[あんれまぁ…うちで良ければ休んどくれ…なんも世話は出来んけどなぁ…]



『ご迷惑おかけしてすみません。少し休んだらすぐに出て行くんで…』



[迷惑だなんて……ゆっくりして行きんさいよぉ…ほれ、とりあえず風呂さ入ってきなっさい!]



『あ…じゃあ…お言葉に甘えて……』



「おじさん!こっちだよ!」





風呂場まで案内しようと手招きした。





『だからっ……まだおじさんじゃねぇっつうのっ!』



「…じゃあ名前は?なんて呼べばいい?」



『……どうせすぐに居なくなる奴の名前なんか知ってどうする…』



「……分かった。おじさんでいいんだね?」



『…いいよ、べつに……』



「…なんか頑固だなぁ……」



『…ぅるせっ///』



「ね、おじさんは結局どこから来たの?何しに来たの?行く宛ては?仕事は?」



『……おまえなぁ…マシンガンかよ…そんないっぺんに答えられるかっ!…つうか風呂に入らせろ!!』



「え〜…だって知りたいんだよぉ…」



『だから知ってどうすんだよ…』



「…だって…だってなんか…気になるんだもん…」



『…変なやつだな。こんな…得体の知れない奴のことが気になるなんて…』





自分でもよく分かんない。


なんでこの人のこと、こんなに知りたいのか…


どうして、こんなに気になるのか…




\\…•*¨*•.¸¸♬︎…..//





「あ…」





電話…


やべっ…叔父さんからだ…





【おい潤!野菜貰うだけでいつまでかかってる!サボりすぎだ!さっさと帰ってこいっ!!】





…だよなぁ。





『……じゃあな。…色々助かった。ありがと。』



「あ…」





ピシャン、と風呂場の戸が閉められた。


…風呂から出たらもう行っちゃうのかな…


俺…キャンプ場に戻んなきゃだし……


もう…会えないのかな…




そう思ったら、なんでだろう…


すごくすごく、心が痛くなったんだ…