潤くんハピバストーリー
完全妄想のおはなし
BLです












ミーンミンミンミン…

シャアシャアシャアシャア…






…あ〜…あっちぃ〜…


このセミの声が更に暑さを感じさせてんだよ…


あ〜暑い。


んでヒマ。


…あ〜あ。


せっかくの夏休み…


恋人と満喫するはずだったのに…


…浮気されて別れる羽目になるなんて。


……あぁもぉ!考えたくねぇんだ!!


だからここに来て、がむしゃらに働こうって…


なのに、こんなに暇だなんて。


…聞いてねぇ。






「おい、潤!ダラダラしてねぇで手伝え!」



「え〜だってお客さん来ないんじゃん…」



「さっき1組様ご予約入ったんだよ!ほれ!ロッジの掃除してこい!」



「ぅえ〜い……」





…ここは、都心から車で2時間ほど離れた山奥。


夏は避暑地として有名な場所。


そこでキャンプ場を経営してる俺の叔父に、夏場は忙しいから暇なら手伝ってほしいと頼まれやって来たんだけど…


台風やら連日の大雨やらで、予約は一気にキャンセル…


キャンプ場は開店休業状態…


俺、来た意味ないじゃん…


…でもまぁ……


気晴らし、にはなるかな。


…ついこの間別れたばかりの俺には、現実逃避出来る絶好の場所だ。





「お〜いじゅ〜ん!」



「…はぁいっ!」



「掃除は後でいいから、ばぁちゃんとこ行って野菜貰って来てくれ〜!」



「……はぁいっ!!」





…っとに人使いが荒いんだから……


だけど掃除よりはマシだな♪


軽トラを借りて、川向こうのばぁちゃんちへ。


川を渡れる橋は、ここら辺では1本だけ。


しかも、軽トラ1台がようやく通れるくらいの幅しかなくて。


なのにガードレールみたいな柵もなくて。


せめて少し高めの縁石でも付けててくれりゃ、いくらか通り易いのに。


だから渡る時はいつもヒヤヒヤしてる。





「…ぅわ…雨のせいで水かさ増してる…」





濁流、って言っていいと思う。


そんくらいの勢いで川が流れてる。


普段は穏やかな水流なのに。



こりゃいつもより慎重に走らせなきゃな。


ジワ〜…とアクセルを踏み、ゆっくり進む。






「…おっし!上手い!俺っ♪」





免許取りたての割りには上手いじゃん♪


自画自賛の運転テクで、難なく渡り終えた。


こっから先は、山道を少しだけ走って…





「おっし!到着!!」





広い畑を持つばぁちゃんちに。


ばぁちゃんは…ちょうど畑仕事をしてる。





「ばぁちゃ〜んっ!野菜ちょうだ〜いっ!!」




叫んでみると、ばぁちゃんが手を振ってこたえてくれた。


それからゆっくりと戻って来てくれて…





[今年も手伝いに来てくれたんかぁ!]



「ん〜…ヒマだったし。ばぁちゃんにも会いたかったし。」



[ぅふふ…優しい子だねぇ、潤ちゃんは……あ、お野菜だったね、昌宏から電話もらってたから…もう用意出来てるよ。]





…昌宏、とは叔父さんのこと。


父さんの弟だ。





[ほれ、これだよ。茄子とトウモロコシと…オクラにピーマン…あ、トマトもって言ってたねぇ…]





キャンプに来た人たち用の野菜。

ダンボール箱3つ分を軽トラの荷台に積み込む。





[ほれ、トマトだ。今年はちょっと小ぶりなんだよねぇ…]



「でも真っ赤で美味そう♪…1つ食べてみても良いかな…」



[いいよいいよ、何個でも。たんとお食べぇ…]





がぶっと丸かじり。





「んっ…んまっ…」




甘酸っぱくて瑞々しい。





[そうかい?そりゃ良かったよ。]



「ばぁちゃんの野菜食っちまったら、しばらくは他の野菜食えねぇんだよなぁ♪」



[またまたぁ…調子いいこと言ってさぁ…大袈裟だねぇ…]



「ほんとだって!」



[ふふっ…ありがとうねぇ…]



「…ばぁちゃん、なんか元気ない?大丈夫?」



[あんりゃ…潤ちゃんには分かるかい?…暑さが体に堪えてね…歳には勝てねぇもんだよ…]



「そっかぁ…そしたら夏の畑仕事、1人はしんどいね?」



[んだ。…引退しようにも、畑なくなったら昌宏が困るって言ってさぁ…]



「あ〜確かにねぇ…ばぁちゃんの野菜最高だから…」



[だからさ、手伝い呼ぶことにしたんさ!農家に興味のあるな、若い人!]



「へぇ♪…でもどうやって探すの?そんな人…」



[…んだよなぁ……潤ちゃん誰か知らんかい?]



「さすがに知らないよっww」



[んだよなぁ…昌宏に相談してみっかねぇ…]



「俺が聞いとくよ。ばぁちゃんがこう言ってたよ、って。」



[んだな!潤ちゃんから聞いてくれると助かるよぉ!]





おっけー、任せといて!と約束して。


ばぁちゃんちをあとにした。


帰りももちろん、あの橋を渡る。


土手まで差し掛かると、橋の上に人影を見つけた。


軽の車がやっと通る幅だから、自転車とか人がいたら渡り終わるまで待っててあげないといけない。


ゆっくりと歩みを進めてる。


…背負ってる荷物、重そうだなww


…フラフラとあと少しで渡り終わりそう。


そろそろ渡り始めてもいいかな。


そう思ってアクセルをじわりと踏んだ時……





「えっ…!?マジか…転んだ??」





橋を渡りきった所で、その人が蹴つまづいて転んでしまった…


しかも…起き上がらないっ!?


え…大丈夫……じゃないよな…


動かないなんて…


俺は急いだ。


幅の狭い橋だってこと、気にもせずにアクセルを踏んだ。


渡りきって、車を飛び降り、その人の元へ駆け寄った…





「大丈夫ですかっ!?」





声をかけてみても無反応…


…生きてる…よな?