*Sside*
特別なんかじゃないぞっ…
絶対にっ…特別なんかじゃ……
「………さん?…お〜い…大野さ〜ん?」
『ん……ぁ?』
「眠いの?だったらちゃんとベッドで寝なきゃ…」
『…ぅ、ん……ぇ、ごめん、今何時?』
「0時回った!」
『そっか…』
結構飲んだな…
危うく寝てしまうとこだった…
「……大野さんも眠そうだし…そろそろ帰ろっかな…」
『……ん…』
…帰れ、って言ったのはオレだしな。
だって帰ってくんなきゃ…
酔った状態で傍にいられたら…
オレ…何しでかすか分かんねぇもん…
だけど…やっぱり…
「…だいぶ酔ってるね?…1人で平気?」
『………。』
平気か、って聞かれれば平気だけど…
だけど…平気、って言ったら帰っちゃうよな。
…いや、帰れって言ったのはオレだけど。
……あぁっもぉっ…
頭ん中グルグルしてるっ…
帰ってほしいような、ほしくないような…
「……大野さん?…大丈夫?」
『…らいじょおぶぅ……』
「……じゃなさそうなんだけどww…」
『らいじょおぶだからっ…早く帰れよぉ…』
やっぱ帰ってくんなきゃ困るっ…///
「…じゃあせめてベッドに行って?それを見届けたら帰るから…」
『ぁい。……ょいしょっと…っとっと〜…』
立ち上がった時、少しよろめいてしまった…
「あぁっ…もうほらぁ…危なっかしいなぁ…ほんとに大丈夫なの?」
『らいじょおぶっ!』
…って言ってるのに、オレを支えてくれて…
「…ほら、寝室は?どこ?……っとに…いつもこんなんなの?」
『…いつもじゃないもん…今日は特別……』
「……へぇ///……ぁ…ここ?寝室?…入るよ?」
『…ん///』
ベッドまで連れてきてくれた…
「……お水いるよね?持ってくるから…そのまま寝ないでちゃんと着替えるんだよ?」
『…ぁい。』
至れり尽くせり…優しいなぁ。
…誰にでもこうなんかなぁ……
一緒に呑んだ相手が酔っちゃったら…
こうやって優しくお世話してんだろうなぁ…
チクッ…
ヤダなぁ…と思ってしまうオレはワガママな奴。
優しくお世話するのは、オレだけにしてほしい…なんて。
ただのメンバーが何言ってんだか。
そう、あいつにとってオレは、ただのメンバー。
優しくお世話してくれるのは、具合悪くさせると明日の仕事に支障をきたすから。
…ただそれだけなんだよな。
「…大野さ〜ん?お水〜……あれ?寝ちゃった?」
『…んにゃ…起きてるよ…』
「ぁ……はい、お水…」
『…あんがと。…もうほんとに大丈夫だから…』
「ぁ、ぅん……じゃあ…帰るね…」
寝室を出ていく後ろ姿を見送る……
…いいんだ、これで。
特別扱いなんてしない。
あいつは、メンバーで、仲間で、友達で…
だから…オレの特別な想いを悟られちゃダメなんだ。
…ダメなんだけど、やっぱり帰ってほしくないっ!
『……松潤っ…』
オレは寝室を飛び出し、玄関に急いだ…
「おぉっ!?なに?どうしたの?」
靴を履きながら、なんか忘れ物してた?なんて言ってる松潤の服の裾を掴んで…
『……やっぱ…もう遅いしさ?…もし…帰るの面倒だな、って思ってんなら……泊まってってもいいぞ?』
「……え?」
『…ゃ、もう遅ぇじゃん?タクシーもすぐ捕まるか分かんねぇし…帰って寝るだけなら、オレんちでもいいんじゃねぇかなぁ…って思って……』
「……いい…の?」
『だ、だめなら提案しねぇし……それに…』
…それに、オレが…まだまだ一緒にいたいから…
朝までずっと…松潤のいる空間にいたいから…
「…それに?」
『……なんもねぇっ///…で、どうすんの?泊まる?帰る?』
「…そりゃもちろん…泊めさせていただきます///」
『んふっ…急に敬語!…じゃほら、靴脱いで!シャワーかかって寝んぞ!』
「うんっ…ぁ、ねぇ、確認なんだけど…」
『んあ?』
「…この家に泊まったことあるメンバーって…」
『いねぇよ!家に入れたことすらねぇんだから…』
「てことは、お泊まりも俺だけ…」
『だな。……あ、言っとくけど!』
「ん?」
『特別なんかじゃねぇぞ?おめぇが初めて、ってだけだかんな?』
「ふふっ…うん、分かってるよ…///」
そうだよ、特別なんかじゃねぇんだ。
おまえは、メンバーで、仲間で、友達。
自分の胸に刻み込むように、何度も何度も唱えてた…