*この回だけアオイ目線で進みます*
『てことで、ボク一旦捌けますね〜♪』
「え……ぁ…そんな……」
腕を掴まれそうなのを振り解いてブースを出た。
やべぇ…やべぇ…やべぇぞっ///
バックヤードへと駆け込んで、心臓を落ち着かせる…
「おおちゃん!…じゃなかった、アオイちゃん!どうだった!?」
『…イケメン過ぎて死にそう…///』
「ぅひゃひゃっ♪そりゃ、好みのタイプなら仕方ないよっ!…どう?猫やれそう?」
『……分かんねぇ///…もうキャラ作るのに必死で…気ぃ抜いたら失神しそうで…だから無理かも…』
「そんなぁ…せっかくタイプの人が来たんだからさぁ…どうせ癒すんなら、そういう人のほうがいいじゃん!」
『それはそうだけどぉ…でもほんと、無理なんだって…松本さん、カッコよすぎて…恥ずかしすぎて…オレなんかが癒しちゃダメなんだ…』
「…他の人にされてもいいの?」
『うっ……ヤダけど…でも…』
「……アオイちゃんが無理なら俺がいただいちゃおうかなぁ♪」
『えっ…本気か!?』
「くふふ♪じゃあね〜♪」
『ちょっ…雅紀っ…』
…どうしよ……
ほんとに雅紀と別部屋に行っちゃったら…
…けど、松本さん…オレに相手してほしそうだったし…///
…や、でも…ここに来るってことは、結局は誰が相手でも良いんだよね。
…目的が果たされれば。
…うぅ〜…考えたくな〜いっ…
松本さんが雅紀とあの部屋に入るのなんてっ…
…よし。
阻止しよう。
…でもどうやって?
あ、オレがあのブースの前をウロウロしてれば…
松本さんの目に留まり、また声を掛けて…
《あ……ぁの…キミ、今空いてる?》
ぬぉぉっ…
松本さんのブースの隣りから声掛けられたぁ…
『…はぁい♪…お邪魔してもよろしいですか〜?』
くそ…
阻止失敗だ…
どうしよ…
《もちろんだよ〜!キミ、可愛いね〜初めて見る顔だなぁ…名前は?》
う…オレの苦手なタイプ…
だけど仕事だ、仕事!!
『ぁ、初めまして!アオイ、といいます…』
《アオイちゃんかぁ…綺麗な肌して〜何才?》
『21…です…』
《んん〜いいねぇ…ピチピチの20代に舐められたら……ムフフ…あ〜元気出るだろうなぁ…》
……ゾワッ…
やべ…想像したら鳥肌たっちまった…
《アオイちゃん、歴は長いのかなぁ?》
『ぃえっ…実はまだ始めたばっかりで…』
《ぁ、じゃあ、ほぼ素人?》
『…すみません……』
《…いいねぇ…いいよぉ!素人のほうが好きなんだよぉ…たどたどしい感じが可愛くてねぇ…興奮するんだよぉ…》
ゾワゾワっ…
…やべぇ。この人とは生理的に無理だわ。
頼む…
ボタンなんか押すなよ??
《ふふふっ…決〜めたっ!》
タブレットを操作し始めた…
…おいおいおいおいっ…
押すな…やめてくれぇ…
\\ヴヴッ!//
タブレットと連動してる腕時計が反応した。
…お触りボタンが発動された合図。
…マジかぁぁぁ……
仕事とはいえ、コイツのを……
…はぁ。
《……あ〜あ…アオイちゃん、予約済みなんだ?残念…仕方ない、次回のお楽しみってことだね。》
…ん?
予約済み?
この人より前に、オレを選んだ人が??
『せっかくお声掛けくださったのに申し訳ありません……この後もゆっくり猫ちゃんを探してくださいね?』
《は〜い♪ゆっくり吟味させてもらいますよぉ!アオイちゃん、またね〜♪》
はぁぁ…
マジ助かったぁ…
誰だか分かんねぇけど、良いタイミングで押してくれたよ…
あの人じゃなきゃ誰でもいいや。
…ん〜とぉ?
オレを選んでくれたのは誰だぁ?
松本さんは…今ごろ雅紀と……だろうから…
「おおちゃんっ!ゴメンっ!!」
『へ?…てか、名前な?ここではアオイ!』
「あ、うん!アオイちゃんゴメン!」
『だから何が?』
「…松本さんに…その…なんとな〜くバレた?」
『は?何が?』
「や、だから…アオイちゃんが松本さんのこと狙ってる的なこと?」
『なっ…てか、狙ってねぇしっ///』
「でも…松本さんが店に入ってきた瞬間、“カッコイイ〜あんな人とやりた〜い♡”って言ってたじゃん!」
『…っ///言ったけどっ…オレはイケメンが好きなんだっ!』
…ていうか……
けっこう前から知ってたんだ、松本さんのこと…
よく行くコンビニで何度か見かけてる。
その度に、カッコイイ人だな、って///
だから店に来た時はビックリした…
…せっかくだから、オレが相手してやりてぇって…思ったんだよ///
「だからね、そういうのをね、チラっと教えてあげたからさ、松本さんに♪“どういうこと?”って言ってたから、詳しく説明してあげてね♡ほら、早く行かないと♪待ってるよ?松本さん♪」
『…ぇ?』
そういや、なんで雅紀がここに?
松本さんとあの部屋行ったんじゃねぇの?
……もしかして、ボタン押してくれたのって…
【ブースNo.24 アオイ】
これって松本さんがいるとこだ…///
「1つイイこと教えてあげる♪」
『…なに?』
「松本さんね、アオイちゃんのことタイプなんだって♡」
『えっ///………それマジ?』
「マジマジ♪他の子なんて興味ないって感じ〜」
『…そ、そうなんだ…///』
「アオイちゃん!ファイっ!!」
両手でガッツポーズしてみせる雅紀…
…もしかして、探りに行ってくれてたのかな…
『…あんがと///…頑張ってくる///』
松本さんの目的が果たされるように。
その相手に、オレを選んでくれた松本さんを…
満足させてあげられるように。
仕事なんだ、恥ずかしいとか言ってらんねぇ!
オレ、松本さんに可愛がってもらえる猫になるっ!!