『改めまして♪ご指名ありがとうございます♪アオイです♪よろしくお願いします♪』




名刺を差し出され、受け取る…





「こ、こちらこそっ!」





源氏名…だよね、これ。


アオイ…くん…


まだ若いよね…いくつなんだろ…





「ぁのっ…アオイ…くんは何才なんですか?」



『21です♪んふふ♪敬語なんて使わないでください♪リラ〜ックスしましょ♪えっとぉ…なんとお呼びすれば?』



「あ、潤です。…松本潤……」



『潤さん♪お名前もカッコイイ〜♪』



「……///」






そんな…

いとも簡単に名前を呼んでくれるなんてっ…






『潤さんはおいくつですか?』



「…30歳に…なったばっかで。今日…」



『えっ…今日お誕生日!?』



「じつは。そうなんです///」



『わぁ♪おめでとうございます♪…でも誕生日にこんな所、来てていいの?』



「…誕生日だから、来てるんだ。…誰かに祝ってほしくて…///」



『ご家族とか…お友達は?祝ってくれないの?』



「…親は…いないから……18ん時に俺がゲイだってことカミングアウトしたら離縁されてしまって…」



『そんな…じゃ、それからずっと1人で誕生日過ごしてたの?』



「…友だちも寄り付かなくなって…新しく作る気にもなれなくて…」





俺は、愚痴るように自分の置かれてる状況を話した…





「恋人なんて以ての外で…だから30になってもまだ……その…恥ずかしながら、み、未経験で…」



『…そういった方、多いんです。この店に来られる方は特に。なので恥ずかしがらなくていいんです。……そのような方を、癒し、慰めてあげるのがボクら猫の仕事ですから♪』





…仕事。


そう…なんだよね。


ここにいる子はみんな、仕事として俺らみたいなのを相手にしてるんだよな。





「…ちょっと立ち入ったこと、聞いてもいい?」



『…?なんですか?』



「その……お客ってさ、色んな人が来るんでしょ?…中にはさ…この人は無理だぁ…って思う人はいないの?」



『…ボクはまだ…あまり接客はしてないですけど…でも、ぶっちゃけ、この人からの指名は避けたいな、って思う人は直感的にいますww』



「いるんだ!?ぶっちゃけるねww」



『ボクらも人間ですから。好き嫌いはありますよ…でも仕事ですから♪指名されたらちゃんとしますよ?』



「…そっか……このお触り発動ボタン押されても?」



『はい♪』



「……大変だよね…けど…ほんと…俺にはココしか頼れるとこがなくて…」



『……指名してくれたのが潤さんで良かった、って思ってますから…大丈夫ですよ♪』



「ぁ、ありがとう///」





お世辞でも…付いた人みんなに言ってることでも…


そう言われると、ホッとする。





『……今日この店に来られたってことは…やっぱり目的があるからですよね?』



「…ぅん……30歳になったのを機に…その……」



『…童貞を捨てようって?』



「うっ…///…まぁ…そんな感じ…です…せめてその…ヌいてくれるだけでもいいから…///」



『ふふっ…控えめ〜♪……じゃあボクがお相手しましょうか♪?』



「えっ///!?…い、いいんですかっ!?」





そんな…そんな簡単に!?


でもアオイくんになら…してもらいたい…///





『ぇへっ♪冗談です♪』



「……へ?」



『ごめんなさい…こちらからはお誘い出来ない決まりなので……』



「で、ですよねっ…」



『でも…もし潤さんが…ボクでもいいって思ってくれたら……ボタン、押してもらって構いませんから♪』



「え…それってつまり……」





俺の猫になってくれるってこと!?





『お待ちしてまぁす♪』



「ぁ…じゃあ…今すぐにでも……///」



『んふふ〜まだダメです〜♪もしかしたらボクよりいいな〜って思う子、いるかもですよ?色んな子と話してみないと♪』



「そ、そうかな…」





まだアオイくんとしか話してないから、イイかも、って思うのかな…


…けど、そもそも俺のタイプだし。


アオイくん以上の子はいない気がする…





『てことで、ボク一旦捌けますね〜♪』



「え……ぁ…そんな……」





無情にもアオイくんは行ってしまった…


…どうしよ。


代わりの子を呼ぶべき?


…だよなぁ。


せっかく足を踏み入れたんだから、色んな子と接したほうがいいよね…


…よしっ。


次、ブースの前を横切った子に声掛けよ。


…って意気込んでたら……





「あ♪今空いてます?僕入ってもいいですか?」





って、背の高い男の子がやって来た。





「えっ…ぁ、はいっ……どうぞ……」



「ありがとうございます♪えっと…初めまして、ですよね!僕、ミヤビっていいます!よろしくお願いしま〜す!」



「ぁ…はぃ…どうも…」





元気のいい子だ…





「どうですか?こういうお店…やっぱ緊張してます?」



「あ〜まぁ、最初は…でもだいぶ解れましたよ?」



「それは良かった♪…いい子、見つかりそうですか?」



「ぁ、はい…実はもう…」



「えっじゃあ早くボタン押さないと!人気のある子なら今日できないかもですよ!」



「や、さっき押そうとしたんですけど、他の子とも話してみなきゃ、って…」



「…アオイちゃん、そんなこと言ったんですか!?」



「え?……なんでアオイくんだと?」





俺、彼の名前、言ってないよね?





「あっ…それは…さっきドリンク運んでるとこ見たから…」





誰がどこのブースに入ってるか、把握はしてるってことかな。





「…アオイちゃんてば、せっかくのチャンスを…」



「…チャンス?」



「ぁ///……いえいえこっちの話です♪松本さんが、いいなーって思ってるなら、構わず押しちゃって大丈夫ですよ♪…それとも、アオイちゃんの言う通り、他の子とももっと話してみます?」



「ん〜…そもそもタイプなんだよね…アオイくん…だから他の子とはいいかな…」




…あれ?


俺、ミヤビくんに自分の名前、名乗ったっけ?





「わぁお///そうなんだぁ!朗報朗報♪」



「…朗報?……誰にとっての?」





なんだか、さっきから言ってることに違和感がある…





「アオイちゃんですよぉ!……ぁ、やべ…///」



「…どういうこと?」



「えっとぉ……詳しくは本人からっ///…早くボタン押してくださいね!てことで俺は退散しますっ!お邪魔しましたぁ!!」



「え、あ、ちょっとミヤビくんっ!」





…なんなんだ?一体…


どういうこと??


アオイくんが俺を狙ってるみたいな言い方だったような…


これはもう、本人に確かめるしかない!!



俺は勢いよく、タブレットのお触り発動ボタンをタップした。