☆S☆







【終わったら連絡して?迎えに行く♪】




夕方…終業間際に届いた、潤くんからのメール。


帰りも迎えに来てくれるんだ…


…嬉しいけど…甘やかし過ぎなんじゃ…


こういうもん…なんかな…付き合いたてって…


恋愛経験値が低いオレには分かんないな…


素直に甘えていいのかな…





《新人〜!ちょっと〜!》



『あ、はぁい……』





またこの人……

オレのことずっと使いすぎ……

けど、仕事だから…





『…今度はなんですかぁ?』



《おぉ!新人!コーヒー買ってきて。》



『……ぇ?…コーヒー…ですか?』



《そ。持ってきたやつ飲み干しちゃって。1階にコンビニ入ってるでしょ?そこのオリジナルコーヒー買ってきて。ブラックホットで。よろしく〜》





それは…オレの仕事?

オレが行かなきゃいけないの?

サンプルの確認とか、資料の配達とか…そんなんなら黙ってするけど…

コーヒー買ってこいって…

オレはあんたのパシリじゃねぇんだっ…!!




『……ぁのっ……』
「…ブラックホットね。いいよ、買ってきてあげる。ちょっと待ってて。」





反論しかけて…遮られた…

あ…花沢さんだ…

また助けてくれた?





《……!?あっ……は、花沢専務っ……》





……へ?

せっ……専務ぅ〜??

花沢さんって…偉い人だったんだっ……





《すっ、すみませんっ!専務にそんな…自分で買ってきますっ……》



「……そ?……ついでだから買ってきてあげるよ?」



《めめめめっそうもないですっ…》



「ふ〜ん。……ならさ、最初っから自分で行きなよ。そんなイジメみたいなことしないでさ。」



《ですよねっ……ははっ…すみませんっ…》



「……あ、大野くん、終業でしょ?もう行っていいよ?」




その場で立ち尽くしてたオレに声を掛けてくれた。

…いいのかな…

…この人とまだ話がありそうだ。

オレは居ないほうがいいのかも。

…ぅん…ここは花沢さんの言う通りにしよう…




『あ、じゃあ…失礼します…』




素直にその場を立ち去った。

そして、与えられてたデスクの回りを片付けて、と。

…今日はほとんどここに座ってないけど。




〈大野君!初日、お疲れ様!〉



『あ、先生!お疲れ様です!』





オレの憧れのデザイナー…


いつかオレも…

先生のように、世界に名の通るデザイナーに…





〈…どう?いくつかデザイン画、描けた?〉



『…あ…いえ、それが……』




雑用ばっかり言いつけられて…全然…




〈……そう…ま、明日もあるし!今日はもうあがって、ゆっくり休みなさい!〉





背中にバシっと一発…気合いを入れられた。


…先生に、できない奴、って…思われたかも…





『……はぃ……お疲れ様でした…』





…明日こそは!

今日の分、挽回してやるっ!


荷物を掴み取り、部屋をあとにした。


あ!


潤くんにメール!!





【終わったよ〜!今どこにいんの?】




そう送ったら、




【お疲れ!すぐ近くだよ。5分で行くから、朝降りたとこで待ってて?】




すぐに返信がきた。


朝降ろしてくれた所…


ここら辺…だったよね…


…潤くん、どっちから来るのかな。


見落とさないように、右向いて左向いて…


目を凝らして潤くんを探す。


何回目かで右を向いた時、遠くから走ってくる人が手を振ってるのが見えた。




『…おっ♪あれ潤くんだよねっ?』




オレも手を振って応えた。


んで、潤くんのもとへ行こうとしたら……




「…大野くん?……お疲れ様♪」



『ぁ……花沢…専務…お疲れ様です!』




後ろから声を掛けられた。




「…専務って言っても、形だけだし。」




そうは言っても…やっぱり専務は専務じゃん…


偉い人なんじゃん。


…そんな偉い人にオレ…2回も助けられてるっ…




『あのっ…さっきもありがとうございました…』



「…あれはちょっとね…パシリなんて行き過ぎだよね。よ〜く忠告しておいたから、明日からは自分の仕事に集中出来ると思うよ?」



『ほんと…お手を煩わせてしまって…』



「ふふ…そんな畏まって話さないでよ…できればもっもフレンドリーにさ!」



『え…え…いやいやいや…無理ですよぉ…』





手を小刻みに振って遠慮する。

だって専務だろ?

新人のオレが専務にとフレンドリーに、なんて…

無理に決まってるっ!





「……昼休憩ん時の感じが良かったのになぁ…」




だってあの時はまだ…専務だって知らなかったもん…




「ま、少しずつね。…打ち解けていこう?」



『……は、はい…』




打ち解ける…打ち解ける?

なんで打ち解ける必要が??




「ところで……今から帰るんだよね?」



『あ、はい…』



「……送っていこうか?」



『……へ?……いえっ…大丈夫ですっ!…迎えに…来てくれるから…』





なんで花沢さんはこうもオレに構うんだ??


普通…専務は新人なんて相手にしないでしょ…





「迎え……ぁ、昼間言ってた彼氏?」



『……です///』



「ふ〜ん……どんな人か拝んでいこっ♪」



『……へ?……え…ちょっとそれは……』





潤くんだって困っちゃうよ…




「…大野くんのお眼鏡にかなった人…どんな人か興味ある…」




…ていうか花沢さん…

オレの恋人が男、って知っても態度変わんなかったよな。

…免疫…あるのかな…




『……花沢さんって……』



「…ん?」



『…その……同性同士の…恋とかって…抵抗ないほう…なんですか?』



「…抵抗もなにも……俺もそうだから。」



『へっ?……あ…そぉなんですか…』




…道理で…冷静だと思った…




「分かんなかった?……俺はすぐに分かったよ?大野くんがそうだって。…同じ匂いがしたから。」



『…匂い…ですか??』




クンクンと、
自分で自分の匂いを嗅いでみる…




『……分かんない…です…』



「ふふっ……俺にはね、分かるの。…けど…もっとしっかり確かめさせて?」




そう言った花沢さんは…

オレの肩を引き寄せて…




『ぇ?……ぉわっ……!?』




ふわりと…花沢さんの腕の中に収められ…

オレの頭を撫でながら…

匂いを確かめてる??



……え?


……えっと…


これ…どういう状況??