☆J☆









【お疲れさま♪
気を付けて行ってきてね♪】




なんの気ない文面でも、智からのメールだと嬉しくなるのはなぜだろう?


これだけで俄然やる気が漲るって、よっぽど単純なんだろうな、俺って。


午前中は、不動産屋で最後の仕事と、退職の手続きをして。


今は、明日からお世話になる、設計事務所へと向かう途中で、休憩のため寄ったコンビニの駐車場で、智からのメールを確認中…


気を付けてね、のメールに速攻で返信♪


了解!のスタンプと、


午後も頑張ろー♪のスタンプ。




よし!

俺も頑張ろ♪



そして、車を走らせること20分…

明日からの勤務地に到着した。



昼間の空いてる時間帯で20分てことは…

朝の通勤時間帯だと……

もう30分は早く出ないとだめかな。



通勤時間の確認も兼ねての今日の訪問。



3階建てのアパートの101号室。


この部屋を丸っとリノベーションして、建築事務所にしている。


なんと地下を掘って空感を増やすという…


そのおかげで、天井が凄く高い。


この広い空間は、
1階だから為せる技ってやつ。




「こんにちは〜!松本で〜す!」




玄関を開けると、すぐにセメントを打ちっぱなしの階段があって。


そこを下りてくと、デスクと資料が所狭しと並んでる。





「やぁ!いらっしゃい♪」




その隙間からひょっこり顔を出したのが、この部屋のリノベーションを手掛けた…




「明日からお世話になります!」



「急で申し訳なかったね…今日まであそこの不動産屋に行ってたんだろう?休みもなくうちに来ることになってしまって…」




店長…松岡さんの先輩で、
一級建築士の東山さん。

助手を探してる、ってことで紹介してもらって、今に至る。





「いえっ!逆にありがたいです!少しでも早く建築士としての知識を取り込みたいから…よろしくお願いします!」



「やる気が漲ってる、って感じだね。
じゃ、その熱意、さっそく生かさせてあげようかな。」



「……?」



「今度、愛知でコンペがあるんだ。…ついて来るかい?」



「いいんですか!?」



「松本くんもそのうち出場することになるだろうし。どういった感じのものか、体験しておくといい。」



「はい!ぜひお供させてください!」



「うん。……あ、それと…」



「はい?」



「…クライアントとの打ち合わせも入ってるんだけど…それもついて来るといい。」



「はい!」



「まずは何事も経験だね。」



「はいっ!」



「よし!じゃあ、よろしくっ!出発は明日。
10時に空港に集合ね。」



「はいっ!……ぇ?…明日?…出発??」



「うん?…コンペは明後日、名古屋で。で、前のりして、明日クライアントとの打ち合わせ。…が岐阜であるんだ。……あれ?言わなかったっけ?」



「えっと…所々…抜けてたところが……」




今度、って明後日なんだ…

クライアントって、岐阜の人なんだ…

そっか、前のりするんだ…





「あ……そう?…ごめんごめん♪…初日から遠征はキツいかな?」



「いえっ…!大丈夫です!全然!!」



「ん。じゃ、明日ね。今日はもういいから。帰って遠征の準備、しっかりね?…あ、一応これ、コンペの資料とクライアントの資料。目を通しておいて?」



「あ、はい!…じゃ、失礼します…」





…ヤバい…これは忙しくなるぞ……

スーツケースとかあったっけ??

不動産屋時代は出張とかなかったからなぁ…

トラベルセット、一式用意しないと…




車に乗り込み、一旦家へと帰る。

それからクローゼットの中を引っかき回して…

一泊だから荷物はこんなもんかな。

足りない物はあとで買いに行くとして。


…4時か……


智、今日は何時頃終わるんだろ…


迎えに行く前に買い物行っとこうかな。


…っと先にメールしとこ。




【終わったら連絡して?迎えに行く♪】




…明日から名古屋に行くってことは、メールじゃなくて直接言おうと思って。



それから買い物に出掛けて…


智を迎えに行くなら、この辺で時間を潰してたほうが良さそうだな。


車を、智の職場近くの駅のパーキングに入れた。

路駐して待ってるのは気が引けるから…


ここからなら歩いてでも迎えに行けるし。


さてと。


智からメールがくるまで、資料に目を通しておこう。


あと、名古屋名物も調べとこ♪


スマホを駆使して色んなことを調べてた。


30分ほど経って、ついに智からメールが。





【終わったよ〜!今どこにいんの?】




【お疲れ!すぐ近くだよ。5分で行くから、朝降りたとこで待ってて?】




速攻で返信して、車を降りた。

そして小走りで智のもとへ!

たった10時間…離れてただけなのに…

早く会いたいと思うのは…

それほどまでに智にハマってんだろうな。




角を2つ曲がって見えてきた智を降ろした所…


…車、置いてきて正解だった。

大通りも路地も少し渋滞してる。




「…いた♪」




信号2つ先からでも分かる。

智のシルエットだ。




「急ご…」




あまり待たせたくないし。

俺はダッシュした。


近付くにつれ、智が右に左に、キョロキョロしてるのが分かって。


俺がどっちから来るか分かんないんだろう、ずっとキョロキョロしてる。


…あ〜もぉ…その行動さえ、可愛く見えてしまう…


いや、実際、可愛いんだけど。


そしてまた右を向いた瞬間、
動きが止まった。


気付いたかな?


俺は手を振ってみた。


…ふはっ///


そんな…ぶんぶん振らなくてもww


俺に向かって歩み出そうとした時…


智が後ろを振り向いた。


…誰かに声を掛けられたっぽい。


職場の人…かな。


なら、先輩、だよね。


挨拶くらいするだろうから、間(ま)を置いて行くか。


俺は走るのをやめた。


歩きながら、
智と声を掛けた人の動向を見てた。


…智が、ペコっとお辞儀して。


いえいえいえっ…って、手を小刻みに振って何かを拒否してる?


それからまたお辞儀して…


……まだ何か話してる。


これ以上近付くと…邪魔かな。


少し離れた所で待つことに。


しかし長ぇな…


仕事の話…だからしょうがないか。


…なんて呑気に眺めてたら。


その人の行動に、
思わず俺は駆け出していた…









地震…大丈夫でしたか?
震度5強をくらったvioletですが、
大きな被害も怪我もなく…大丈夫でした。
まだ余震が続いてます…
震度3から体には感じない震度1のものまで…
頻繁に地震速報が流れてます…
まだ気が抜けませんね…

これ以上被害が広がりませんように…
皆様もお気をつけください…