☆J☆
「…智……智……」
6時半には起きなきゃ、って言ってたよな。
…少し過ぎてんだよなぁ。
智のアラームで目覚めたんだけど、智は一向に起きる気配がなくて…
「……智…起きなきゃ遅刻しちゃうよ〜?」
肩を叩き、少し体を揺さぶるも…
『……ぅ〜ん……』
辛うじての返事だけで、全く起きない…ww
…どうしようか……
もっとしっかり起こさないとダメか…
…ていうか…
寝顔…めっちゃくっちゃ…
かわいぃぃ……///
こんな…可愛く気持ち良さそうに寝てんのに起こさなきゃなんてっ……
でもっ…
寝坊で遅刻なんてさせられないしっ…
…あぁっ…智っ…頼むっ!起きてくれよぉ…
今度は、
頬っぺたをぷにぷに摘んで起こしてみる。
「……智〜…起きて〜…」
『………ん……』
「…さ〜と〜し〜」
『………はぁ〜い……』
お?
やっと起きてくれるかな?
両腕をめいいっぱい伸ばし、伸びをしてる。
そしてモゾモゾ動いて……
パッと目が開いた♪
『……わぁっ///』
…目覚めの第一声が、わぁって…
そこはさ?
「おはよ♪」
だろ?
『…おはっ……おはよっ…///』
布団を鼻の頭まで被せて、半分隠れた…
「ふふっ…どしたの?」
『…潤くんだ///』
「…??」
『…一日の始まりが、潤くんのドアップから始まるって……最高ぉ…///』
「なにそれ///……ほら!時間大丈夫?」
朝からニヤけることを言ってくれる///
『ぁ!急いで用意しないと!起こしてくれてありがとっ!』
ぴょんとベッドから降りて、寝室を飛び出した。
…俺も準備しよ。
着替えていると、智が戻ってきた。
着替えるのかな。
『…ぁの…潤くん?』
…どうやら智は…
眠ると1回リセットされるらしい。
もう定着したと思ったんだけどな。
…名前…また、くん付けに戻ってる。
…ま、いっか。
そのうち染み付くだろうし。
それよりも、智は何を言うんだろう?
「ん?なに?」
『…あの……ごめんね?』
「……ぇ?…っと?…何が?」
いきなりの謝罪…
謝られる覚えはないんだけど?
『……起こしちゃった…よね?…ほんとならもう少し寝れてたんじゃない?』
「ああ!……たしかに…智のアラームで目は覚めたけど…一緒に起きるつもりだったし…問題ないよ?」
もう少し眠れてたはず、って…ほんと、細かいところまで気遣ってくれる。
優しいね。
『…いつもならオレ、1回目のアラームでシャキッと起きれるんだけど…今日はその……』
「ん?」
『…なんか…あったかくて、心地よくて…起きれなかった…』
「そんな日もあるって。俺なんかしょっちゅうだよ?言ったでしょ?寝起き悪いって。」
智は何を気に病んでるんだろう…
すぐに起きれなくて、俺を起こしてしまったことに?
「…気にしなくていいんだからね?」
『……だらしないとか…思ってない?』
「…だらしない?そんなこと思ってないよ!…どっちかって言うと、可愛いと思う。」
『……ほえぇ?どこがぁ??』
「なかなか起きれなくて、モゾモゾしてるとことか。」
『…///……やだなぁ…そんなとこ見せちゃって…ちゃんとしっかりしてるとこ、見せたいのに…』
…あれか?
好きな人の前ではカンペキでいたい、っていう…
でもそういうのは…
俺の前ではいらないよ?
「……寝てる時まで気を張らないでよ…ていうか…いつも、いつでも、どんな時でも…気は張らないでよ…自然体じゃなきゃ…疲れちゃうよ?」
『……自然体…』
「そっ♪……そのまんまの智!朝、起きれないとこも、時間ヤバくてワタワタしてるとこも。自然体の智は可愛いと思う。」
『……時間ヤバくてワタワタ?……あぁっ!ほんとだっ…ヤバいっ……電車っ…乗り遅れる〜っ!』
バタバタと、慌てて準備を再開する智。
パンをトースターにセットして、目玉焼きを2つ。ベーコン付きで焼いてくれてる。
時間ヤバいっていうのに、ちゃんと朝ごはんを作ってくれる。
…十分しっかりしてると思うけど。
『潤っ!できた!焼けた!急いで食べてっ!……ぁ、急ぐのはオレだけか!潤はゆっくり食べて!』
ふははっ…やべぇ…
ほらね?自然体の智は超可愛い♪
モグモグ、小さい口をめいいっぱい開けてパンを頬張って。
『…コーヒー、インスタントでごめんね?』
俺が、コーヒーはサイフォンで淹れる、って言ったから…
『…オレも買おうかな…サイフォン…』
「…智が淹れてくれるから…インスタントでも十分美味しいよ?」
『…んなこと…言ったら…サイフォンに失礼じゃん…』
「ふふっ……」
サイフォンにまで気を遣うって…ww
優しすぎだろ…///
でもまぁ…欲しがってんなら…買うのもアリかな。
あ。俺がプレゼントするってのは…
いや、それはナシだな。
俺から贈ると、なんかイヤミっぽいよね。
『ごちそうさまでしたっ!潤くん、ごめんだけどオレ先に出るねっ!鍵は……えっと…』
「あ、俺も一緒に出るよ。」
『…ぁ、うん…』
「送ってってあげる。」
『……ぇ?……送るって……』
「デザイン事務所まで。…今からバタバタ走って駅まで行く必要もないし?満員電車に揉まれることもないし。」
『…や、でも……』
「でも、じゃなくて!ここは素直に甘えるところ!…いい?」
『………。』
また余計なこと考えてる。
わざわざ送ってもらうなんて、俺に迷惑かけちゃう…とか。
そんなことないんだって。
「…少しでも長く一緒にいたい、って思ってる俺の気持ちも汲んでよ…」
『…え?……ぁ///』
「ね?…送らせてよ。」
『……ぅん///……お願いします///』
「よし!…じゃ、行こうか!」
そして車を走らせること15分。
智の職場に到着。
大通りの路肩に停めるのは無理があるから、路地に入った所で車を停めた。
『ありがと…行ってきます///』
「ん!いってらっしゃい!」
『…潤くんもっ!…いってらっしゃい!』
「おぉ♪…じゃあね!」
路地とは言え、通勤時間帯。
交通量もそこそこで。
長くは停まっていられない。
手を振る智に見送られ、車を発進させた。
こんな幸せな朝が過ごせるなんて…
俺は、ニヤける顔を抑えながら、俺も最後の出勤に向かった。
今日が不動産屋勤務、最終日。
明日からさっそく、設計事務所にお世話になる。
きっと忙しくなるぞ…
そしてその予感は的中し、あの幸せな時間を過ごせる日は、しばらくやって来なかった…
※智くんの話し言葉の中で、
“潤くん”と言ったり“潤”と言ったりしてますが。
これは作者が打ち間違えてるわけではなく。
智くんの中で、まだ定着していない表れ…
と、思ってくださいm(_ _)m