☆J☆
…あの日…
夜は…なんとか堪えたんだ。
俺にしっかり抱きついて眠る智を撫でながら…
眺めながら…
悶々としながら眠ったのを覚えてる。
そして、翌朝…
ふっと目が覚めて…
智が隣りにいなくて…
夢だったのかって…焦って飛び起きて……
顔洗ってる智を見つけて思わず抱きしめて…
ふっ……
なんか……色んなこと、思い出してきた…
「……よし……っと……」
『…終わった?』
「ん〜…もう少し。…あと図面入れたら終わるかな。」
もう少しだけそばにいて、って言ったら、
ここにいるから終わらせちゃいな、って…
そう言ってずっと隣りに座っていてくれた。
急ぎの案件を任されたってことは、信用されてるからだろ?って…
だから期待を裏切っちゃダメだ、って…
…相変わらず、仕事に対して厳しい。
…あの日もそんな感じのこと、言われて…
諭されたんだった…
「…でもちょっとだけ休憩〜…」
ずっとパソコンにかじりついてたから、体が固まってる。
手も足も、めいいっぱい広げて伸びをした。
『…ほい!コーヒーのおかわり〜♪』
「あ…ありがとっ!」
いいタイミングで淹れてきてくれた…
よく見てんなぁ…
「…ヒマ…だったよね?……ごめんな?ワガママ言って…」
『ん〜ん!ワガママじゃねぇし、ヒマでもなかった!』
「…?…何してたの?」
『…へへっ♪…仕事に没頭してる潤を描いてた〜♪』
「……え///……俺を!?」
小さめのスケッチブックをパラパラ捲って見せてくれた。
『…この…伏せ目がちな横顔…綺麗なんだよねぇ…あとねぇ…顎に指当ててんのもねぇ…いいよねぇ♪』
「…いつの間にこんなにっ…///」
しっかりとした絵じゃなくて、鉛筆で、下書きみたいにささっと描いたような感じ。
だけど、雑さを感じない。
繊細な…俺…
それが何枚も……
『ふふっ♪…お仕事中の潤もイイ男♪』
「……///…それはどぉも///」
さっきから…すっげぇ褒められてるから…
綺麗だとかイイ男だとか…
素直に嬉しい…し、照れる…し……
はぁ///
変わんないよなぁ…
智って、いつも俺のやる気を引き出してくれるんだ。
…本人は無意識だろうけど。
やる気っていうのは…
もちろん仕事のことも、だけど……
…無邪気な笑顔を見せられてさ?
俺のこと、めっちゃ褒めてきたらさ?
…俺……ムズムズして…ズクズクして…
…つまり……違うヤル気も引き出されちゃうわけ。
……ちょっとだけ…
ダメかな…
また怒られちゃうかな…
「……智…」
『…んぁ?……ぁにぃ〜?』
…まだ描いてるww
「…智も休憩したら?」
『…ん〜…オレのは仕事じゃねぇし……』
鉛筆持つ手が止まらない。
……智の邪魔をするのも…悪いか。
…今は大人しく……
さっさと残りの仕事、終わらそ…
終わってから、思いっきり……
よしっ♪
再びパソコンに向かって作業を進める。
…どれくらい作業していただろう……
気が付けば外は夕焼け…
…結局、一日中仕事してたな…
「ふぅ!」
終わったぁ…
あとはこれを所長にメールして…っと。
「よしっ!…完了〜…!」
『おっ!終わった?お疲れぇ♪』
ずっと隣りに居てくれたんだ…
『終わって良かったね?』
「ん。…智のおかげだよ。」
『…ふふっ?なんでだよ…オレはここに居ただけだし。』
…それがね、俺のやる気をね、出してくれたから…なんだよ?
『……ねぇ潤…?』
「ん〜?」
『……もう…くっついても…い?』
「…へ?」
『お仕事終わったからっ…いいよねっ!』
そう言うと、俺の返事を待たずに…
ギュッとしがみついた……
「……え///……なに…どうした///?」
『……(ぎゅ〜ぅっっ)…///』
何も答えず、ただギュッと…
……もしかして…
寂しかった…とか?
「……ごめん…」
構ってやれなくて…
そして…
さっき絵を描くのを止めなかったのは…
俺のためだったんだよね?
手を止めてたら…俺のイチャイチャ攻撃を受け入れてしまうから…
俺の仕事が中途半端にならないように、って…
終わらせられなかったら、俺の信用が落ちてしまうって思って…
それでずっと…俺の気が散らないように…
待っててくれたんだね…
「…ありがと…」
両腕で、しっかりと智を包み込む…
…温かいよなぁ…ほんと…
この温もりに、いつも支えられてる。
『……ふふっ…変わんないねぇ…♪』
「…ん?……なに?」
『……オレがくっつくと…潤の心臓、速くなんの。…あの頃からずっと…変わんない♪』
今日は智もあの日のこと、
思い出してたんだよね。
「…あ〜…///……それはね…あの頃と変わらず、智のこと好きだからだよ///」
『……良かった…まだ…飽きられてない♪』
「あ……だからそれは!……もう!…一生飽きないって言ってるしっ!……智は特別だって!飽きるどころか…日ごとに…好きが増してるよ…///」
『分かってるよぉ///…ちょっと…からかってみただけ!』
「…コラ。
…むやみにからかうんじゃないよ…」
…智と付き合う前のことは…
俺の黒歴史なんだよ…
『ふふっ♪……ごめんごめん♪』
「…もぉ…」
智がゆっくり離れて…
俺の肩に頭を乗せて凭れかかった。
『……2年も経つのにさ、変わらない…っていうか…むしろ増してる、って……オレらすごいね///』
「…そう…なのかな。……他の人たちってどうなんだろ?2年も経つと…マンネリ化したりすんのかな?」
『…する人もいるかもねぇ…』
「俺らには…来ないよね、マンネリ。」
『だねぇ…日ごとに…増してるからねぇ…』
それは智も、ってことでいいの?
「いつまでもラブラブだね?」
『おう!』
力強く言いきった!
「ふふっ…///」
嬉しいねぇ…///
『なんかさ…あの日…初日にさ、色んなこと話したじゃん?お互いの恋愛遍歴?……あれがあったからさ、なんか……隠し事がないって言うのかな…それで潤のこと、真っ直ぐに見れたから……潤の裏側…みたいなことまで知れたから……安心できたって言うか…』
普段はあまり多く語らない智が、あの日のことを振り返って、ゆっくりだけど、思いを伝えてくれてる。
「うん……俺もそう思う。初日から話し合えたのは大きかったね。」
『ね!そうだよね〜♪』
上目遣いで俺を見上げて、可愛く微笑む…
…変わんないよなぁ///
なんでそんなに可愛いんだろ…///
『あっ…潤、携帯鳴ってる!』
仕事に集中できるように音消してたんだ…
画面が明るくなったことで智が気付いてくれた。
「え?…あ…ほんとだ……ぁ…所長だ…ちょっとごめんね?」
さっき送ったやつのことかな…
手直しがあるのかも……
「はい!松本です、お疲れ様です!」
【お疲れ様!あの案件の資料、確認させてもらったよ。】
「あ、はい!……どう…でした?」
【松本に任せて正解だったよ。すぐに先方にも見てもらったんだけど、すごく気に入ってくださってな、あのまま話を進めさせてもらうよ!】
「本当ですか!?ありがとうございます!」
【礼を言うのはこっちだよ。休日返上で仕上げてくれたから…先方にも迷惑かけることなく話が進められるし…本当助かったよ!】
「お役に立ててなによりです!」
【今後も期待してるよ!】
「はいっ……頑張ります!」
【あ、そうそう!明日、振休でいいから!】
「…え?……いや、大丈夫っすよ?」
【だ〜め!休日だった今日働いたんだから、しっかり休まないと!明日は休みなさい!……いいね?】
「えっと…じゃあ、お言葉に甘えて……ありがとうございます!」
【うん、じゃあ、また…明後日!】
「はい!お疲れ様でした〜!」
ふぅ。
『……手応えあり?』
電話の内容が気になってるみたいだね。
「ありあり!大あり!さっそく話を進めるって!」
『そっかぁ!…良かったな!』
それもこれも、智のおかげ。
だからお礼も兼ねて…誘ってみよう。
「ねぇ、明日さ、ドライブ行こっか。」
『へ?…ぇ?……ドライブ!?
あ…え?でも、仕事は??』
「休みになった♪
…今日の分、振休くれた!」
『まじ??…すげぇ優待遇じゃん!信用されてる男は違うねぇ♪』
…だから……
そんな男にしてくれたのは智なんだって!
「行く?どうする?」
『行くぅ♪やったぁ♪潤とドライブだぁ♪』
素直に喜んでくれると、俺も嬉しくなる。
…きっと何年経っても変わらない。
智を愛おしく思うこと…
智といると、心が温かくなること…
智の、一つ一つの言動が、俺の力になってるってことも…
ずっとずっと変わらないよ。
智と出逢えた喜びを噛みしめて…
これからもずっと……
…おしまい♪
後ほどあとがき的な記事をあげます〜