☆side  J☆








『オレ…おまえのこと……好きかもしんない///』



高校卒業間近のある日の放課後だった。

小さい頃からずっと友達だった貴方からの突然の告白…


まさか、って思った。

だって俺、男だし。


…同性である貴方から好意を持たれるなんてこれぽっちも思ってなかったから……


だから、貴方から告白されて、俺と同じだったんだ、って気付いて嬉しかった。


俺は早くから貴方のこと、特別に想ってたから…


…でも…嬉しかったけど……手放しでは喜べなかった…



貴方のその想いは、一時の、所謂好奇心ってやつかもしれない…

俺と同じ時を過ごしすぎて、感情が麻痺ってるのかもしれない…



そう思ったら、素直に喜べなくて…



だから…


“5年後、気持ちが変わってなかったら、あの駅で待ってて”


そう伝えて、俺は町を出た…


貴方の想いが本物だと願って…





─ そして5年後 ─





ガタンゴトン…ガタンゴトン…





…果たして待ってくれているのか……


…あの時、素直に喜んで俺も想いを伝えていたら、こんな不安な気持ち、抱えなくて済んだのにな。


今更ながら後悔…


…来てくれてなかったら尚更……


5年も経てば、人の気持ちなんて……





「はぁ…」





…こんな格好までして、来てなかったら本当にマヌケだな。


おまけにポケットには…///


…5年も待たせた罪滅ぼし、じゃないけど…


俺がもう限界っていうか。


…受け取ってくれるか分かんないけど。


…いや、その前に、来てくれてるか分かんないけど。





「…はぁ……」




不安だ…


不安しかない…



始発の電車に飛び乗ったものの、こんな早い時間にいるはずないよな…

次の駅で一旦降りて落ち着こう…



例の駅まであと6駅…



1本あとの電車に乗って行けば、昼前には着くだろう。



ホームに降り立ち、深呼吸する。



ベンチに座り、次の電車を待つ。



……もう来て待っててくれてるのかな…



…いや……あまり期待はしないほうが…



でも待っててほしい…





「はぁぁ……」




もうため息しか出ない…


早く行きたいような、行きたくないような…


行かない、っていう選択肢はないんだけど、居なかった時のことを考えると、どうにも足取りが重い…






《…あの…大丈夫…ですか?》



「へ?」




頭を抱えて座ってると、不意に声を掛けられた…


…駅員さん?





《なんか…思い詰めた顔してため息ばっかり吐いてたし…頭も抱えてて…変なこと考えてるんじゃないかと思って…》



「…変なこと……って…」




ぁ…もしかして、自殺…とか考えてるんじゃないか、って?




「違います違いますっ!それはないですっ!」



《そうですよねっ…すみません、早とちりしてしまって…》



「いえっ…俺こそなんか紛らわしくてすみませんっ…」




俺は立ち上がって頭を下げた。




《ふふっ…良かった!……ここにはお仕事で?》



「ぁ、いえ…まだ先の幸来駅まで…」



《ああ!…観光、ですか?》



「いえ…帰ってきたと言うか…」



《あ、地元の方でしたか!》



「はぃ…5年振りに帰ってきました…」



《そうですか!おかえりなさい!》



「ははっ…ありがとうございます…」





…その言葉、アイツから1番に聞きたかったなww





《……何か事情がおありのようですから、時間の許す限り、この駅で気持ちを整えてもらって構いませんから…》



「ぁ、どうも…すみません…」





なんだか気を遣わせてしまったみたいだ…


早々に次の電車で先に進むことにしよう。


20分後、定刻通りにやって来た電車に乗り込む。


そしてまた次の駅で降り、1本あとの電車を待つ…


そんなことを繰り返して、ようやく目的の駅の1つ前…


朝イチの電車に乗り込んだのに、もう空は夕焼けだ…




…よしっ!


覚悟を決めろ、俺っ!!


次の駅にアイツがいなくても、それはアイツが決めたこと!

…試すようなことをした俺が悪いんだ。


奇しくも、次が最終電車…


定刻通りにやって来た電車に、足を踏み入れる。


さすがに最終ともなれば、乗っている人はほぼ居なくて。


俺のほかには、学生服の子が3人と、50代くらいの男性が1人と、若い男女が1組。


…あの密着よう……カップル、かな。


…楽しそう。…かわいい。……いいなぁ。



…いいなぁ、ってなんだよ!



自分が報われないかも、とか思ってるからそんな事思うんだ!


…大丈夫。


アイツは居る!!


揺れる電車の中、ただひたすらに願ってた。



どうか居ますように、と…





\\間もなく幸来〜幸来に到着しま〜す//





いよいよだっ…


緩いカーブの先に目的の駅が見えてきた…


徐々に落ちるスピード…


だんだん大きくなるホーム…


そこに人影は…


居るのか?どうなのか??


…あ〜怖ぇ…


居なかったら、と思うと…


俺ってこんなに臆病だったかなww


…とりあえず、到着するまでは外を見ないでおこうか。


俯き、電車が止まるのを待つ…



キィ…というブレーキ音が鳴り、若いカップルがドアの前に立った。



…よしっ、俺もっ……



意を決したところで、ドアが開き、まずはカップルが降りていく…




『ぁ、すいません……』




……い、今の声って…


ホームから聞こえた小さな声に鼓動が鳴った…


恐る恐る、ホームへと目を向ける。


そこには……


居たっっ!!


…来てくれたんだっ///




俺を見つけた彼は、手で顔を覆って天を仰いだ…


その反応はもちろん…


ホームに降り立った俺に、勢いよく飛びついた彼を、思いっきり抱きしめて受け止めた…






『……遅ぇよ、ばか///』



「ごめん……てか…来てくれたんだ…?」



『…当たり前だろっ…ばかっ///』



「…ばかとか言うなよ…」



『…だって……』



「ほかに言うことないの?」



『……ぉ、おかえり、潤…』



「ふふっ///ただいま、智……なぁ、5年前と変わんない?…気持ち……」



『…だから来てんだよっ///…ぃやでも…気持ちは変わってる…』



「えっ…どういう……」




抱きしめてた腕の力を緩めて、顔をしっかりと見つめる…




『…っ///……そんな見んな///』



「ねぇ!変わったって……」



『増してんのっ///…5年も会ってないのに、日に日におまえへの気持ちが大きくなってって…もう好きじゃ足んない。…大好き…に変わってる…んだよっ///』



「はっ…なにそれ…///…そんなの俺のほうが……」




もう一度抱き寄せて、しっかりと包み込む。




「…試すようなことして、5年も待たせてごめん…俺もあの時から好きだよ。…今も…今は大好き。…いや、愛してる。」



『ふふっ///…大袈裟っ…』



「ほんとだよ?…だからさ、智……」




ポケットから例のものを取り出して、智の前へ…


パカッと蓋を開け…





「…け、結婚っ…してくれませんかっ///?」



『…はぁぁぁ??い、いきなりかよっ///まだ付き合ってもないのにっ!?』



「だって俺もう……耐えられないんだ。智がそばにいない人生なんて…」



『…それはまぁ…オレもそうだけど…』



「じゃあいいじゃん!ね、結婚しよ?」



『…しょうがねぇなぁ///』





なんて言いつつも、顔は照れくさそうで。

俺は智の左手を取り、薬指に指輪をはめ……

はめたけど…これは…





『……ぶかぶかww』



「ご、ごめっ…サイズがっ…」



『んはっ///サイズも分かんねぇのによく買ったなぁ?』



「まさかこんなに細いとはっ…俺の小指サイズじゃん///」



『ふふっ…でも…あんがと///……ふつつか者ですが末永くよろしくな?』



「…こちらこそ。…もう絶対離さないから。幸せになろうな///」








5年前、俺らは互いに違う道を歩き出した

いつか、二人が出会った意味が分かる時がくるって信じて…

そして、もうはぐれないように、離れないように…

過去をそっと抱きしめて、今、愛しい人と新たな道を歩んでいくんだ





〜Fin〜