Galerie 1月と7月 多治見 武昭さん
INNOVATION ストーリー vol 2
Parisに関わりのあるクリエーターの方々にお話を伺います。
多治見武昭さん (Galerie 1月と7月)
インタビューvol2
お店の食器について
Paristree
お店にいらっしゃったフランス人の方のエピソードで、
印象的だったことを教えてください。
多治見さん
お店を開く前は、海外の方は作家ものの器を「食器」としてはあまり使わないのかなと思っていました。オブジェとして家に飾る用途などで購入されるのだろうと。
しかし、大半のお客様が、食器として使うと仰るのです。
「このカップにはコーヒーを入れても大丈夫か」といった質問を頂くことも多く、驚きました。*
また、フランスでは今でも、揃いの食器で食べる文化があると思っていました。
ですので店をはじめた頃は、ある程度の数を揃えられるよう意識し、買い付けをしていました。
とはいえ、手で形を作り、窯で自然の力にまかせ焼いているものですから、工業製品のように全てが同じというわけにはいきません。
もちろんそのような「ゆらぎ」が大きな魅力となっているわけでもありますし。
ですので、例えば近いサイズのものを複数枚、という仕入れ方ですね。
渡辺隆之 いこみ白 湯のみ
7 x 10.5 x h5cm
真冬日の夜、おしゃれな老紳士がウインドウ越しにうちの店を覗いていらっしゃったんです。
ドアを開けお話を伺ってみましたら、「今日おいしいチョコレートをふたつ買ったので、それを乗せるための小皿が欲しい」と、伊豆の陶芸家「渡辺隆之」さんが作った、陶胎漆器の小皿を買っていかれたのです。
パリらしい話だなあと思いました笑。
自宅で使うための食器を一つ一つ揃えていくというお客様が多く、びっくりしましたね。
*これは、アメリカではまた事情が異なるようです。
お取り扱いをさせて頂いている作家の一人「二階堂明弘」さんから「パリとニューヨークの展示販売会で売れるものが全く違う」というお話を伺ったことがあります。
1000ドルを超える大壷など、食器ではなく、どちらかといえばリビングに飾れる、オブジェに近いものが中心に売れるようです。住宅事情にも依るのかもしれません。
Paristree
フランス人の方のお宅に呼ばれた際、食卓の様子を見て感じたこと、
また、レストランで使われている食器を見て、日本と異なると思ったことはありますか。
多治見さん
現在、食器を購入してくださるレストランの方は、日本人シェフのレストランが中心です。
あまり大勢のスタッフを抱えていない、小規模なお店が多いですね。
フランス人シェフの方もいらっしゃるのですが、予算オーバーで断念されることが多いようです。
食器は工業製品を、安価で大量に卸問屋から、という共通の認識が、まだある程度存在するように感じます。もちろん例外はあるはずですが。
例えば星付きの大規模なレストランになりますと、お客様の数も非常に多いため、使用している食器が割れるリスクも高く、そこまでの予算はかけられない、という事情もあるようです。
Paristree
フランス人の方々に、どのようにこのお店の食器を使って欲しいですか。
多治見さん
期待したお答えとは違うと思うのですが… そういった「思い」のようなものは一切ないのです。自由に使って頂くのがいいと思います。
もちろん置いている作品は「素晴らしいもの」と思い選んでいます。
ただ、私に出来ることは、窯場に行き、作品を選び、それを店に並べるまでです。
廣谷ゆかり 南蛮小鉢
φ15 x 7
あとは食器を買ってくれたお客様が、食卓で使って嬉しいかもしれないし、使ってみたら
「やっぱり普段の洋食器の方が使いやすいな」と思うかもしれないし、何か物を作っている人で、購入した作品から何かインスピレーションを得て創作の糧とされるかもしれない。
ただ、日本の陶芸作品についての情報を欲している方もいる。
日本にいて知ることが出来るパリのことがほんの一部であるように、パリにいて(インターネットなどを通じ)知ることが出来る日本のことも、また一部でしかありません。
そういった興味のある方にとって、いわゆる “お土産物屋さん” ではない、日本の現代の食器店と大きく変わらない店がパリ市内にあるというのは、意味のあることなのではないかと思っています。
Galerie 1月と7月
11 Rue des Grands Augustins 75006 Paris

