企業理念と実際 | 現役課長が気づいた『間違えない会社選び』

現役課長が気づいた『間違えない会社選び』

会社案内では見えない会社の考えを見抜くポイントを紹介します。会社は何を考えているのか?

間違えない、失敗しない会社選びのポイントを会社側の視点から暴露しちゃいましょうか!

入社してからの「こんなはずじゃなかった」の撲滅を目指して!!

最近「お客様第一主義」と多くの企業が声高にアピールをしています。(特に、auのCMでは大々的に言っていますね)


この「お客様第一主義」とはいったい何なのか?


言葉として読み解いてみると、何よりもお客様を第一に、すなわち最優先すべきはお客様であるということである。

言ってみれば、お客様にとって一番よいことをすることが、経営をする上での一番根っこになる基本観としますということ。


こんなことは、言うだけなら非常に簡単なことで、誰にでも言えることですが、それを体現すること、消費者に感じさせることは、非常に難しいことである。


ここで、お客様第一主義を語る上で、伝説となっているひとつのエピソードを紹介します。



アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソン(以下「J&J」)の医薬品部門が扱っていた家庭用解熱鎮痛剤の「タイレノール」。この薬をめぐって、ある重大な事件が1982年にシカゴで起こった。

当時、副作用が少ないということから、家庭用解熱鎮痛剤としてもっともポピュラーで、全米No1のシェアを誇っていた。

1982年9月シカゴでタイレノールを服用した少女を含む7名が死亡。(何者かが、製品の中身を「シアン化物質(毒物)」と取替え、それを服用したことが原因で死亡したといわれている。犯人は特定できず、不明のまま)


当時のJ&J会長のジェームズ・バークは、事件報道のわずか1時間後には、マスコミを通じて、全米に製品の製造・販売の中止、回収を呼びかける。このリコールの発表については、FBIや監督官庁である米国食品医薬品局(FDA)からの、国民に与える影響が大きすぎ、大きな混乱を招く恐れがあることから、捜査の進展を待つようにとの要請を断ってまで、J&Jの信念として、リコールを発表している。


この決断には、『我が信条』 というJ&Jの企業理念が深く関わっており、同社がもっとも大事にするステークホルダーである、消費者を守る最善の選択をしたに過ぎないということである。

これにより、J&Jは1億ドルの費用をかけたと言われており、短期的には、莫大な損害を出している。


事件発覚からまもなくであり、はっきりしたことがまったく分からない中で、J&Jは自社の製品が関わっていること、消費者を守ることを最優先に考えることという非常にシンプルなことだけで、多大な費用が発生するリコールを敢行したのである。


この結果、全米中から回収されたタイレノールの中から、シアン化物質にすりかえられた物が、70錠あまり見つかった。すなわち、J&JがFBIやFDAに言われるまま、リコールを遅らしていたら、70名以上もの犠牲者が出ていた可能性があったということであり、それを企業の決断が防いだということになる。


この一連の事件はJ&J社に何をもたらしたか?


短期的には、1億ドルもの回収費用という損害、売り上げの消滅という大きな「損害」をもたらした。

しかし、それまでも一流の企業であり、知名度、信頼度は高かった同社のそれは、さらに高まったのである。現在でもアメリカでは、「一番信頼できる企業」として、J&J社は不動の地位を築いているのである。




このJ&Jの話は、何を物語っているか?


J&J社は責任の優先順位を『我が信条』 の中で定義している。これは、いわゆる「ステークホルダー」の優先順位を明確にしているということであり、それによると重要なものから、「消費者(お客様)」、「従業員」、「地域社会」、「株主」であると言っている。


このような定義づけは、多くの企業でされているが、本当の意味で実践するということは非常に困難である。


しかし、J&J社はその信条に基づき、決断と行動を起こしている。そして、それが同社に対する信頼や安心というブランドイメージを築くこととなっている。




タイレノール事件は「コンプライアンス」や「企業の危機管理」というものを考える際の題材としてよく取り上げられるが、ここでは、就職活動に役立ててもらうために紹介をしています。


といっても、直接的にこんなことを使う場面は考えられません。

冒頭の「お客様第一主義」を標榜している企業は多くありますが、J&J社のようにきちんとその実践を考えている企業は、そんなに多くないということ。本当に実践しようとすると、企業の価値を一時的に下げる結果にもなり、経営者としてもそんな決断をすることが非常に難しいこと。ゆえに、単なるポーズで言っている企業もたくさんある。それをいかに見抜くかが重要になるということです。


それは、ちょっとしたことで分かります。


ある居酒屋チェーンでのエピソード。


「お客様に喜んでいただくことを我々の喜びとします」という理念を掲げ、毎日営業前に店長以下全員で唱和をしていた。

そんなときに不意に入り口のほうから「すみませーん。もうやってますか?」と数名の男性のグループが入ってきた。

そのとき、店長は「まだ準備中ですので入らないでください。10分後にきて下さい」と追い返して、連絡事項などを一通り従業員に伝えて、開店をした。


こんな店は、だめですよね。「たった10分だから待てよ」と待たせるか、「とりあえず中に入っていただいて、お座りいただこう」と迎え入れるか。ちょっとしたことですが、大きな違い。そして、店の理念を実践しているか、お題目にしているだけか。ここに大きな違いがあります。


こんな、些細なことで、その企業の理念が浸透しているか、会社は本気でやろうとしているか、社員がやろうとしているかがわかります。感じてみてください。