『痛風二十二年物語』二十二話 -二十二年前の回顧その1- | 『 痛風二十二年物語 』・『 桜 と 痛風 』

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『痛風二十二年物語』二十二話

“二十二年前の回顧その1”ヒマワリ

 

入院前、夏休み恒例の家族旅行があった。

足の状態はすこぶる悪かったが、

長男に運転を任せ出かけた。

貸別荘は長野県上田市の武石村にあった。

横浜から高速を使って約3時間半のドライブだが、

案外見慣れた景色を眺めながら、わいわいがやがや、

途中一回だけサービスエリアで休憩を入れ、

目的地へ到着した。

 

だが、私にとってこの二泊三日の旅情は、

しみじみとした苦痛の日々となったのである。

 

家内や子供達にとって、歩けない私を別荘に残し、

後ろ髪を引かれながら、

出掛けることは、快いものではなかっただろう。

 

バルコニーの椅子に腰かけ、

すがすがしい木々の緑に囲まれ、

出かけ前、家内が淹れてくれたコヒーを味わう。

溢れんばかりの木漏れ日達を見つめていると、

何やら囁きが聞こえた。

おい、お前、・・・お前だよ。」

こんなになるまで、

一体 何をやってきたんだ・・・」

「えー!なに?・・・ 俺は、

ここまで家族のために一生懸命やってきた!・・・」

「悪いことなどなにもない・・・」

そうじゃない、そうじゃない、その身体・・・

その身体だよ・・・」

緑の木漏れ日の真ん中に吸い込まれるように、

遠い遠い二十二年前のその日を思い起こしていたんだ。

そう・・・あれは、ある日突然やってきた

 

現役サラリーマンバリバリの三十八歳だった。

毎日とても忙しかったが、公私とも充実していた。

そんなある日の明け方、

被った布団の足元が、異様に重重しく

指先が窮屈に感じた。

う・・・、う・・・、何だ痛いな・・・痛い。

眠りから覚めた瞬間、激痛が左足に走ったんだ。

「ぐあ・・・!」思わず金切り声で、呻いていた。

「いた・・・!」足がすごく痛い。

その痛みは薬指付け根当たりだった。

普通じゃないその痛みは、薬指が折れてると思った。

もんどり打つ私をみて、家内が飛び起きった。

? ・・どうしたの・・・パパ!」

「ね!どうしたのよ・・・」

もう大騒ぎである。

 

この朝、約4時間、氷嚢で患部を冷やし、我慢を続け、

家内の運転で、病院開門一番駆け込んだのである。

診療所の先生は、ピンク色に腫れあがった

私の患部を診て、うすら笑いを浮かべ、

痛む患部を触手したあと、こう告げた。

「小林さん、こりゃ・・・痛風だね。」「痛風。」

「は・・・?」

ぴんと来なかった。

どこかで聞いたことのあるような響きだった。

「でも先生、この指先、折れてます・・・

・・・すごく痛いし。」

「いや、折れてたらこんなに腫れないな・・・」

と言いながら、やおら患部を指先で突っ突くのだった。

「いた!・・いてて!」

そして再び「これは痛風。痛風です。」

私の抵抗にもめげず、先生はそうおっしゃったのだ。

「うちでは、痛風の治療はやっていないので、

最寄りの内科へ行って、検査と処方を受けて下さい。」

「・・・そうですか。」

看護師が、患部をシップで覆い、

軽く包帯を巻いてくれた。

 

家内を見ると、少し笑っているように見えた。

 

― 続きは今度。よかったらまた読んで下さい。―

 

         夏休みの草原  晴れ  晴れ  晴れ  しっぽフリフリ