中学生人生初日。




その日は、もうこれで終わりだ。





下校は、やっぱり真優とする。




自転車に乗って、


もちろんメットはかぶらないで。



1年生で、かぶらないのは、


絶対先生や、先パイにお世話になるな-


と分かっていながらも、





やめようとしない、あたし等。





ただ、真優の話を聞きながら、



少し気になっている事があった。





あたし等の、5つくらい前を、



自転車をこいでいる人がいた。





夢雅。





引っ越してきたけど、



青川地区だったんだ。





それにしても、青川の男子達に、



絡まれてる。




転入生、って分かったんだ。




まぁ、無理もないか。



青川地区は、


他の3つの地区と違って、



1つだけ、反対方向だから。



そりゃぁ、分かりやすいよね。




だけど、それにしても夢雅、



すっごい馴染んでる。



元から友達みたいだ。





まぁ、友達が出来ないタイプとは、



全く正反対そうだもんね。





真優と分かれる道に来た。





『ばいば-い』



真優が手を振る。




『ばいば-い』



同じ様に振り返す。





そして、双方とも振り向きもしないで、



自分の帰り道に出る。




あたしは、田舎に住んでいる。



自慢が出来るかどうかは、分からないけど。





だいたい、今の中学校学区全体が、



田舎って言う分類に入るんだけど、



その中の、そのまた田舎に住んでいる。




まぁ、土地は広いから、



結構住みやすいって言えば住みやすいけど。



窓開けたら、隣の家。  



な-んて事は、夢でもありえない。





真優と別れると、誰かに出会わないかぎり、



ずぅっと、1人で帰ることになる。



もう、慣れた。





だけど、今日は、目の前に、



気になる人がいた。





夢雅。





なんでこんなに夢雅が



いっぱいいるんだろう?






その後、田舎ロ-ドに入っても、



夢雅は目の前にいる。




もぉ、だいぶ田舎の方まで来ていたので、



あたしと夢雅しかいなかった。



だから、あたしは、



自転車のスピ-ドをあげて、



夢雅の隣に並んだ。





いつも、こんなことしないのに。





『夢雅、道迷ってる?』




あたしは聞いた。




『は?塚、梨乃こそ、


 なんで俺についてきてるん?』



『ついてきてないよっ


 家、こっちやし。』



『ふ-ん。


 俺も、こっちやよっ』



『引っ越してきたんって、青川やったんやな-』



『そうやで。


 びっくりした?』



『別に-?』




その後、しばらく沈黙が続いた。




あたしの家が、だんだん近づいてきているって言うのに、



夢雅は、まだあたしの隣にいる。



と言うか、少し前に。




『ねぇ、夢雅本当、どこまで行くの?』



『梨乃だって、こっちいるやん。』



『そ-だけどさぁ!!!』




これは、いくらなんでもおかしすぎるな-



って思った時に、夢雅が指差した。




『あれが、俺ん家やよ。』




びっくりした。



あたしん家から、徒歩5分くらいだった。




『えぇッ』




思わず、声が出てしまった。




『あたしん家、あれ。』




『えぇッ』




全く同じ反応をする、夢雅。




『俺ら、運命やんけ-っ』



夢雅は、笑いながら言う。




そういえば.........


真優の声が、頭に響く。



梨乃ん家の近所に、


 あたし等と同級生の子が引っ越してきた


 って聞いたんだけど・・・』




真優、大正解だよ。




『そんじゃ、俺ココやしっ


 ほななっ』




夢雅が、自転車から降りて、


手をあげる。



『ぢゃ-ねっ』



あたしは、真優の時と同じ様に、



手を振った。




だけど、真優の時と1つだけ違うこと。









あたしは、振り返ってしまった。









夢雅を、目から、少しでも、






離したくなくて。


あたしは、目を逸らした。




だけど、もう一度見た。



見ずには、いられなかった。



あまりにも、顔立ちがキレイだったから。




地毛なのに、少し茶色く、


男子にしては、長めの髪。



鼻が高くて、目が大きい。


口元は、普通にしていても、


口角があがっている。




すごく、キレイだった。




『何??』




あまりにも、こっちを見ていたから、


(と言っても、あたしも、そっちを見ていた訳だけど)


声をかけずには、いられなかった。





『名前、梨乃って言うんやな-』





夢雅が、あたしの机においてある、


真新しい生徒手帳を見ながら言った。




『うん。なんで?』





『いや、名字一緒やったし。』





『そっか。

 

 そや、さっきは、ありがと。』





あたしは、少し小さめの声で言った。






『えぇよ、えぇよ。

 

 当たり前。』





あたしの前に、親指を突き出し、


ニィって笑ってくる。





『俺さぁ、梨乃って呼んでいい?

 

 水瀬って言うと、自分呼んでるみたいやし。』




『うん-


 そやなぁ。


 いいよっ、梨乃で。』






あたしは、平然を装っていたけど、



内心、心臓が破裂しそうだった。



よく読む本とかで、こういう言い回しがあるけど、



こういう時に使うんだな-って思った。





『そうだ、


 始め、この名簿みた時、


 ムガって思っちゃったんだ-』





本当の事を言った。






『やっぱり?


 俺、いっつも間違えられるねん-


 ほんまは、ユウガ やしな^^』




『んじゃぁ、


 ユウガって呼んでいぃ?』




『嫌。』





びっくりした。



普通にokもらえると思ったから。




『なんでなぁ-


 あたしは、梨乃って言うくせに』





『本気にしやんで-』





夢雅は、笑いながら言った。





『冗談やよっ


 夢雅でいいでなっ』



この時あたしは、本当に安心した。





『んじゃぁ、夢雅って呼ぶ-』





あたしも、ニィって笑った。




『そぉだ、


 夢雅って、元何小?』




これは、ずっと気になっていた。



あたしが通う中学校は、



まわりの、4つの小学校が



集まって出来た、中学校。





その中の1つが、あたしの通っていた


 アオカワ

『青川小学校』   通称 青小。




そして、他の3つが、



 アラキ

『新木小学校』   通称 新小。

 

 アケノ

『明野小学校』   通称 明小。


 アサタニ

『浅谷小学校』   通称 浅小。




たまたまなのか、何なのかは、


分からないけど、


どれも始めの文字が


『あ』から始まる。



↑どぉでもいいかw




夢雅は、あたしの通っていた、青小にはいなかった。



あとの3つ。



どこだろう?



あたしが聞くと、夢雅が答えるまで、



一瞬の間があった。



聞いちゃいけない事聞いたかな?



すると、夢雅が口を開いた。




『俺、中学からこっち来たんだ。


 だし、知ってる奴1人もいなくて。


 唯一、梨乃?』




わぁ-お。


まさかの。


転入生だったんだ。



一瞬、頭の中で、



---ライバル多くなりそうだな。



なんて、考えてしまったのは、


気にしないでおこう。



そういえば、


まわりに男子の友達が来ていない。


夢雅と喋った男子を、今日1人も見ていないや。



そういう訳か。




『もしかして、大阪の方から来た?』



『なんで?』



『すごい、関西弁混じってるから。』



『よぉ分かったなぁ。』




だからか。



結構、関西人やな-とは、思ったんだけど。




そこで先生が、入ってきた。




話は中断されて、夢雅が前を向いた。







すごく、すごく。




他愛のない会話だった。




だけど。




すごく、すごく。




嬉しかった。




だけど、これって誰でもあるよね?





特に、夢雅が特別、なんてないよね。





あたしは、そっと。




先生の方に目を向けた。















入学式が終わって、


体育館から出ると、真優が真っ先に、


こっちに向かってきた。




『入学式、真剣だるかったぁ----ッ』



『本当だねっ

 塚、校歌さぁ、先生しか歌ってなかったよね』




多分、この時真優は、気付かなかったと思う。



たしが、『入学式がだるかった。』


と言う話から、少しだけ逸らしたことは。




『だって、小学1年生じゃないんだからぁ』




真優が笑って言う。





そのまま、教室に着いた。




多分、8組はすごくうるさいクラスになると思う。



入学初日で、それが分かるくらい。



だけど、まだ、他の学校の子と喋れないから、



グループの中の、1人の席にかたまって、喋っていた。




あたしは、一瞬真優の席に行こうかな、と


思ったけど、


なぜか、何もしていないのに、


自分の机の上が、自然に皆の机より


グチャグチャだったので、


端っこに寄せようと思って、


自分の席に戻った。




真優も、自分の持ってきた本にはまったのか、


こっちに来ようともしないので、


あたしはイスに座って、


丁寧に机の上を片付けた。




ふと、あたしは顔をあげた。


視線を感じたから。




そしたら、








夢雅の顔が、








こっちを見ていた。







あたしは、







多分、真っ赤になっていただろう。




































体育館に入場した。


吹奏楽部の演奏が耳に入ってくる。


2、3年生の先パイ達の目が、


あたし達に向く。


というか、あたしに? 真優に?


まぁ、目ぇ付けられてもおかしくないか。


あたしは、そんな事で怯まない。



名簿順に横になって並ぶ。


水瀬 夢雅と、横になった。




この時、初めてチラッと、顔を見た。



いつだって、背中ばっかりだったから。




水瀬 夢雅の横顔は、


期待と、希望に満ち溢れている感じがした。


多分、あたしとは正反対だ。



多分、あたしの顔は、


『かったりぃ』


って顔してんだろうなぁ....



そんな事を考えていると、


水瀬 夢雅から、目を離すのを忘れていた。



視線を感じたのか、水瀬 夢雅が、こちらを見る。



----目が合った。



急いで目を逸らして、何事もなかったかのようにする。



自分で言うのもなんだけど、


こういう動きをするのは、昔から得意だ。




小学校の時に肝試し大会があって、


怖がりの子の肩を後ろからトントンってした事がある。



始めは、その子は、



『もぉ、誰-?』



みたいな、冗談交じりだったけど、


あたしは、何もやってなかった様に、


振舞っていたから、


その子が真剣におびえていたのを覚えている。




だけど、あたし、本当はそんな事しないからね?



こう見えて、意外にいい子なんだ-←



その子の事がスキな男子に、頼まれてやっただけ。



そのおかげで、その子と、その男子は、


結ばれたんだから。



恋のキュ-ピッドってやつ?



まぁ、その後その男子には、


しっかりおごってもらったけど←





そんな事を、思い出した。



座っていると、清水が、1の8の席をまわり始めて、



小声で、


『名前呼ばれたら、返事しろよ-』


などと、小学生並の事を言う。



まぁ、つい2ヵ月くらい前までは、


あたしも小学生だった訳だけど。



そうしているうちに、


1の1から、順番に名前呼びが始まった。



1の8、最後ぢゃん。



しかも、『み』ずせ って、後ろの方だし。



そんで、ボ-ッとしていると、



----櫻井 真優



と言う声が、耳に入ってきた。


真優の返事の声は、これっぽっちも


耳に入ってこなかった訳だけど。




ぇ、もうすぐぢゃん........




そおだ、もうすぐ、


水瀬 夢雅の名前が分かるんだ.....




そして・・・



----みずせ  ゆうが


----はい。



ぁ.....


今、【ユウガ】って・・・



----水瀬 梨乃



今、ユウガって言ったよね?


夢雅って書いて、ユウガって読むんだぁ.....


変わってるなぁ-



と、その時、




夢雅に肘で小突かれた。




ぇ??




まわりも、こっちを見ている。



ぁ-・・・



----ガタッ



すっかり、立つのを忘れていた。



夢雅のせいだぁ------ッ





だけど、先生は、あたしが立つと、


普通に続けていってくれた。



ないす!! 先生*



空気読めるぢゃ-んッ




ほんと、夢雅最悪-



だけど、あたしの事立たせてくれたのも、







ユウガ なんだね.........







あたしは、小声で、



聞こえるかどうかくらいの声で、



『ありがと......』



って言った。



口から、飛び出してきたんだ。




そしたら、夢雅が、



ニィッ    って、



下ろしている手で、ピ-スサインをつくりながら、




笑ってくれた。






あたしは、





昔の肝試しのように、






普通に、








いられただろうか------










キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン...



ガラガラガラ....




チャイムが鳴り、先生が入ってきた。



チャイムの音が、小学校と少し違うので、


違和感をおぼえた。



『はい、今日から1年8組を担当する、


 清水で-す。


 よろしくお願いしま-す。


 んぢゃぁ、もう、入学式、ね、


 始まると思うので、いったん廊下に出て-』



清水.....


男の教師。


小学校を入れて、


3年連続男。


って言っても、2年間は、みねくん なんだけどw



第一印象は、とにかく『チャラい』だった。


チャライあたしが言うのも、なんだと思うけど。



今日は、入学式だというのに、


黄色のTシャツの上に、


薄手の黒のパ-カ-。


相場丈?の、パンツに、


多分車のキ-、とか、携帯とかが


ジャラジャラついている。




見た瞬間に、真優と目配せをした。




雰囲気が、みねくんに似ていたから。




その後、ちょっと間が空いて、


隣のクラスとかの廊下に出る音が聞こえたので、


あたし達8組も、廊下に出た。



入学式だから、男女混合の名簿順に並ぶ。


だから、水瀬 夢雅 の背中を見ることになった。




あたしは、この時に、心に誓っていたことがあった。



って言っても、すごくしょおもない事なんだけど。




水瀬 夢雅 の名前を、絶対に聞き逃さないように、と。




----意識してる?



一瞬、心の中に認めたくない声が出てきた。


けど、すぐに訂正した。



----名字が一緒だから。

   名前の字が変わってるから。

   何て読むのか気になるだけ。