・讃衡蔵

「中尊寺の文化財を収蔵、展示している施設だ。 

 説明は要らないね。見ての通りだ」

 撮影禁止と有り、直ぐに三体の仏像が並ぶ。佐々木だけでなく、千田も頷いた。

「前に来た時も観たんだ。

 大きいって、覚えていたけど、今見ると小さくも見える」

「ハハハ、それは千田の背丈が伸びたからだよ。だから今に小さく見えるんだ。

 でも、座像でいながらこの高さだと・・・。二メーター五十(センチ)は有りそうだね。

 三体揃ってあると、見応えがあるね」

 言いながら自分の頭のてっぺんに右手の(ひら)を造った佐々木だ。

 側に有る(三体の)説明書きを読むと、丈六仏(じょうろくぶつ)とは仏様の立ち姿が一丈六尺(約四メーター八十五センチ)に成るのを言うらしい。

「仏様って、(みんな)、そんなに大きいの?」

「これより大きい仏様は大仏様と呼ぶんだって!」

「へー、鎌倉?奈良?皆、大仏様だもんね?」

 観光客らしい若い女性の会話を耳にした。

 声の方を見ると、二人は黙ってお辞儀をする。思わずこっちもお辞儀をした。

 向かって左に閼伽(あか)薬師(やくし)と呼ぶらしい薬師如来坐像、真ん中に阿弥陀如来像、右に(みね)薬師(やくし)と呼ぶ薬師如来像が並んで居る。

三体とも、中尊寺の境内(けいだい)、元々あった場所からここに移設したとも紹介している。

 阿弥陀如来像は昭和三十年まで本堂の御本尊だったとある。少し面長(おもなが)のお顔だ。

「ミイラに人魚(にんぎょ)の話が出たけど、俺達もこの先ずっと薬と関係があるね。

 阿弥陀様にもそうだけど、両側の薬師如来様にこの先、事故の無いようにお守り下さい。そのために精進努力をしますと改めてお祈りするか」

 千田の提案に、佐々木も俺も改めて三体に合唱し、祈りを(ささ)げた。

 照明を落とした館内は観光客が多いのに変わりない。だけど表と違って静だ。

 髑髏(どくろ)を手にした千手観音(せんじゅかんのん)菩薩(ぼさつ)の立像。ガオーと叫んでいるような獅子に乗る文殊菩薩(もんじゅぼさつ)。その文殊菩薩を守る四体の仏像に、四天王とか十二神将。何体もの仏像を見ていると、その迫力に別世界に入り込んだような気がしてくる。

 佐々木と去年の夏休みに京都、大阪、奈良を巡った時に見た、奈良(県)の新薬師寺(しんやくしじ)(奈良市高畑町(たかばたけちょう))を思い出しもした。

「展示品を見よう」

 佐々木の一声に吾に返った。

 先に目を遣ると、展示品は凄い数だ。初めて見る佐々木よりも千田の方が、気が高揚している。

「小学校(生)以来だからね。

 仏像の印象が強かったのか、こんな展示品を殆ど覚えていないよ」

 言いながら、眼は展示ケースに行ったままだ。

 佐々木は拡大鏡を持ってくれば良かったと言う。金色堂の柱を飾っても居る夜光貝の螺鈿細工だ。それが展示されていた。繊細かつ緻密な出来をここで見るとはと驚いている。

 腕輪なのだろうか象牙で出来ている品、耳飾りだろうか首や頭を飾る物なのか宝石の数々。漆蒔絵の施された調度品。一つ一つが藤原三代の栄華を語っていた。

「これは凄い、何て言うの?」

 佐々木が目にして聞くのは、国宝、紺紙金銀字交書(こんしきんぎんじこうしょ)一切(いっさい)(きょう)だった。

「本物、レプリカ?」

 聞かれても分からない。一行ずつ金と銀で交互に書き写された経典だ。

 その経典の前に書かれてある金泥の仏様、山水等の絵図と、経典を納め置く漆塗りの経箱は正に藤原三代の栄華を改めて彷彿(ほうふつ)させる。