二十四 捕鯨と国防
昨夜は久しぶりに家族も使用人も忘れて皆での宴となった。五三と六が床に入っても、大人は宴だ。大酒を飲んだ。
非番だと言うに、早速に堀田様からの使いだと語る者が来るとは思いもしなかった。
医者溜まりに一旦顔を出して、再度、己の身体に酒の匂いが残っていないかとそれさえ気にした。
北海道における探索行動をお聞きした、また広大なノウチクスリ(釧路)湿原の秋の草花に鳥類が事もお聞きした。それからに、イギリスが事よりも北の国防が事の話になった。
(江戸に)帰って来たばかりである故か、オロシヤ対策を口にする侯だ。
「思いもしていたよりも、島々にオロシヤ人の姿が有った。
神代の昔から北国の地は日本の物、島々は吾国の物と語る近藤(近藤重蔵)が説は兎も角に、東蝦夷に探索に入った者からも西蝦夷(の探索)に行った者からもオロシヤ人の姿を見たとの報告じゃ。
幸いに、戦がために組織された者達よりも北国の海獣等の毛皮を求める者、海の幸を当てにする者の出没じゃ。
ここは日本の地だと標柱を建てる行動も是認できるが、いざという時のための物には為らぬ。何ぞ良い方法は無いかの?」
「蝦夷地と(その周辺の)島々を、まずは吾国の物と世界に知らしめることが第一に肝要で御座いましょう。
そのためには標柱を建てることもさりながら、蝦夷地をシッカリ管理する拠点を定め置くこと、また、そこに在って、いざと言う時に紛争の解決を指揮する者と、戦えるほどの人の数が必要とされましょう。
松前が地はその拠点に成りますまいか。また、蝦夷地は東北の一大名の管理するところとして封国の封君(藩を治める大名)の親戚、重臣を配置させるは如何でしょう?。
派遣される大名の親戚、重臣の妻子は本城私宅(従来通りの地元)に留め置き、先ずは大名が、家臣、家の子郎党を引き連れて蝦夷(地)に渡る。オロシヤ等の襲撃を防禦できるよう現地に要害を構築させる。
松前は米の取れないところとも聞いておりますれば、暫くの間は治める大名の領地から藩米を回し、米を都合する必要もあろうかと存じます。
また、海を渡った大名の家の子郎党は日頃は捕鯨業を生業とし、海防訓練を積み、いざという時に捕鯨船を軍艦代わりにして戦うことも、船を自在に動かすことも出来る兵士と成るようにして置く。それが最高の北の備え(軍備)に成りましょう。
捕鯨船はいざと言う時に軍船の役目を果たしますし、鯨用の鉾などは戈戟(武器)にも成ります。
おまけに、捕鯨が盛んになればなるほど政府の財源確保の一助になると考えます」
吾の今にも思って居る北の国防を語って来たが、それで良かったのだろうか。堀田様は吾の顔を見、時に思案顔をして何ぞ思っても居た。
最後に、桑原の倅も其方の倅も随行した者(藩士)の健康管理が事に良く気を配っていたとお褒めのお言葉を頂いた。嬉しくも有り、玄幹に伝えねばなるまい。