脱がせてと言った。私を見つめる瞳は真剣だった。顔が強張(こわば)って見えた。彼女の背中に回していた手を彼女の両肩に持って行った。それ以上どうしたらいいのか戸惑った。彼女は自分からピンクの長袖のポロシャツを脱いだ。

 白いシュミーズを通してピンクのブラジャーに包まれた膨らみのある胸が目の前だった。そのままの恰好で私の背中に手をまわして軽くキスをすると、私の視線に構わず今度はスカートもシュミーズも脱ぎだした。

 ブラジャーと同じ色をしたピンクのショーツだった。ブラジャーもショーツも同じ花柄の刺繍が施されていたけど何の花なのか、自分にそれを知る余裕が無かった。あの時も今も私は分からない。

 私の首に手を回して今まで以上に強い、熱いキスをしてきた。そして一時(いっとき)の感情の高まりが収まると、今度は私の学生服の胸前のボタンを外し始めた。

 彼女の手を押さえ、首を縦に頷くと自分で後のボタンを外し、ワイシャツを脱ぎ、ランニングシャツを脱ぎ、学生ズボンを脱いだ。ベッドに腰掛けて靴下も脱いだ。腕時計も外した。腰掛けて右肩に頬をすり寄せて居た美希さんを、振り向きざまに抱きしめた。そのままベッドに押し倒した。

 初めてキスをしたあの日から何度も頭の中で彼女を思い、彼女を抱き自慰(オナニー)を繰り返してきた。それがあの日あの時、現実となって温もりのある彼女がベッドで一緒だった。

 頬を流れる涙に戸惑い最初は行為を止めようとした。でも首を横に振り、嬉しいと言ってしゃくり上げ余計に私を放そうとしなかった。白く弾力のある二つの形良い胸の乳首を吸い、そして腰を割ると、キスしてと言った。キスをしたまま結ばれることを求めた。愛してる。そう言葉にして私は美希さんと初めて一つになった。

 

 枕元に白いタオルが置かれていた。それで私はあの日の彼女の決心を知ったような気がした。汚れた体を拭いてあげようとして、彼女は私の動作を止め、首を振った。

 自分も上半身を起こすと、私の左肩に頭を置いて寄っても寄っても寄り切れないように裸の身体全体を押しつけてきた。好き、愛してる、呟くように言う美希さんに、左の胸を軽く愛撫していた私は堰を切った激流のようにまた彼女を押し倒し、求めた。

 ミッキーマウスの壁時計は三時に少し前だった。足下の毛布を引き上げ、寒くないかって聞いた。あの日は日中も肌寒い日だった。そして彼女の顔に唇に軽くキスをしながら毛布の中の裸の背中、腰のくびれ、臀部の膨らみを右手で確認した。

 ぎこちない私の動作だったかもしれない。私の左胸に右頬を乗せ左手を私のお腹に回していた彼女は目をつむり、暫くして、このまま死んでもいいと呟いた。思わず彼女の顔を見て、馬鹿な事を言うなよと言った。口の激しさと裏腹に穏やかな顔をしていた。

 裸身(  からだ)を引き寄せた。細かった。私は今までの(よろこ)びを忘れて急に彼女を失う恐怖に襲われた。私が美希を守る、私が美希を助ける、そう思いながら私はただただ彼女の温もりで彼女の生命力を確かめている気がした。

 

「うん?、どうした」

 私の暫くの沈黙に山口君の言葉が催促に聞こえた。

「あの年の十月二十五日。美希さんと初めて結ばれた」

目の前で山口君と百合さんが顔を見合わせた。

「結ばれたって・・・、体験した・・、セックスしたってこと?」

百合さんの質問に、無言で答えた。

「あの日は平日だ。美希さんは体調不良を訴えて学校を休んだ。それが二時限目の授業が終わった時刻に彼女から私の携帯に電話が入った。休んだ理由を言わないで、今すぐ来てくれるか、来れるかという彼女に緊急事態が発生したのかと思った。

 私自身が風邪をひいて体調が悪い、四時限目が終わったら帰らせて下さいと岩城先生に、学校に嘘の理由の早退届を提出した。

美希さんの家に駆け付けると、彼女自身が玄関口に迎えに出た。小父さん小母さんは用事があって出かけていた。彼女は、夕方にしか帰って来ないと言った。

 緊急事態が発生していると思い込んでバイクを運転していたから、玄関口でお好み焼きを作って一緒に食べようという誘いには正直、拍子抜けした。

 彼女は朝方に体調が悪くて学校を休むことにしたのは本当だと言った。その後に体調が良くなったのも嘘ではないと言った。

 二人で作ったお好み焼きを食べてから誘われるままに彼女の部屋に行った。何度かあの部屋に入っているけど彼女が部屋に鍵を掛けたのは初めてだった。カーテンは引かれたままで薄暗かった。

 キスを交わした後、美希さんは脱がせてと言った。見つめる瞳は真剣だった。私は彼女の背中に回していた手を彼女の両肩に持って行ったけど、それ以上どうしたらいいのか戸惑った。緊張して手が動かなかった。

 彼女は自分から着ていた長袖のポロシャツを脱いだ。下着を通してピンクのブラジャーに包まれた膨らみのある胸が目の前だった。そのままの恰好で私に軽くキスをすると、今度はスカートもシュミーズも脱ぎだした。ブラジャーと同じ色をしたピンクのショーツだった。ブラジャーもショーツも同じ花柄の刺繍だったけど何の花なのかあの時も今も分からない。

 熱いキスを交わした。一時の感情の高まりが収まると、今度は、彼女は私の学生服の胸前のボタンを外し始めた。

私は彼女の手を押さえ、自分で後のボタンを外し、ワイシャツを脱ぎ、ランニングシャツを脱ぎ、学生ズボンを脱いだ。ベッドに腰掛けて靴下も脱いだ。腕時計も外した。横に腰掛けて私の右肩に頬をすり寄せて居た美希さんを振り向きざまに抱きしめた。そのままベッドに押し倒した。

 

 暫くは二人だけの世界だ。足下の毛布を引き上げ、寒くないかって聞いた時は三時近かったと記憶している。

あの日は日中も肌寒い日だった。彼女の顔に唇に軽くキスをしながら毛布の中の裸の背中、腰のくびれ、臀部の膨らみを右手で確認した。愛撫って言った方がいいのかな?。

 私の左胸に右頬を押し付けていた彼女は目をつむったまま、このまま死んでも()いと言った。思わず彼女の顔を見て、馬鹿な事を言うなよと言った。過激な言葉と裏腹に穏やかな顔をしていた。裸身(からだ)を引き寄せた。細かった。私はそれまでの(よろこ)びを忘れて急に彼女を失う恐怖に襲われた。

 私が美希を守る、私が美希を助ける。医学的な処置も治療方法も分からないまま自分でそう思いながら彼女を抱きしめた。あの時、私はただただ彼女の温もりで彼女の生命力を確かめている気がした」

 腕を組み、背もたれに身を引いた山口君だ。椅子が小さな音を立てた。百合さんは沈黙のままだ。