(サイカチ物語・第8章・遂志・24)
仙台に向けて東北自動車道を順調に走る。夕食の七時までには家に帰ろう。きっと、母の手作りの料理が待っているだろう。伝えていない仙台行きを母に連絡しておかねば。
呼び鈴になかなか出ない。専業主婦とはいえ事務的な事で父を手伝う母も結構忙しいんだと思いながら一旦切ろうとして、母の声だ。
「ゴメン、今買い物から帰ってきたばかりなの。どうしたの?今日は予定通り帰って来るんでしょ」。
私より先に母の声だ。
「今、仙台に向かっている。仙台市博物館に行って、今行われている『生誕四五〇年、伊達政宗の城』を見学してくる。めぼしい資料等があったら購入するよ。夕食に間に合うよう七時には帰るね。今晩の料理は何?」。
夕食のおかずのことを、いつも事前に聞いていた子供の頃を思い出した。
「昨夜は予定通り大船渡に泊まったんでしょ。多分、お魚料理がメインだったと思うから、今日の夕食はお肉。準が好きだった牛シチュー、それで良い?」。
母らしい気遣いのある応えだ。
「有り難う。七時前には帰るね」。
念を押して電話を切った。前方を見ながら、頬がゆるむのが自分でもわかる。購入したい、めぼしい資料等に何があるだろう。これから見る「伊達政宗の城」のことを思っていて、高校生時代、岩城先生の家で見た先生手作りの古城分布図を思い出した。
先生の部屋の壁に奥州地域の古城分布図が張り出されていた。伊達藩が一六七〇年代頃に領内の「仙台領古城書上」を編纂している。そうだ、古城の所在地を地図に落とし込んだ物があったら入手したい。自分用に購入するだけでなく、岩城先生にプレゼントしよう。明後日、金曜日の午後、梨花さんと一緒に先生宅に挨拶に行く。事前に、結婚式当日のスピーチをお願いしてある。田舎に帰ったら改めて訪問してお願いする予定でいる。博物館に着いたら古城書上関連も詳しく調べて見よう。先生にプレゼントできると良い。
梨花さんが、友達と正月に行って来たハワイで岩城先生御夫妻にとアロハシャツを購入してきている。しかし、郷土史研究に余念の無い先生には矢っ張り地元を語る歴史資料でまだ入手していないものをプレゼントする方がズーッと良い。ふさわしい。博物館から先生に古城書上げ関連の資料を入手しているかどうか、確認も必要かなと思いながら自家用車は若柳金成インターを過ぎた。