(サイカチ物語・第5章・俺の嫁さん・14)

 

 食後の片付けに美希と並んでキッチンに立って洗い物をするなんて、想像もしていなかった。俺が母を手伝い台所に立つのは年に数回有るかないかだ。手を動かしながら時折、美希とキスをした。美希は明るいグリーンの膝上スカート、靴下も履かない素足で、スリッパは格子縞の緑と黄色だ。

 

 ホットポットを持って美希の部屋に入った。ミッキーマウスの絵柄のある壁時計は二時を回っている。シチューをご馳走になった日にパンダや子犬のぬいぐるみと一緒に本棚の上に見たキャンプの時の五人で撮った写真が無い。

 美希は部屋の鍵を掛けた。何度かこの部屋に入っているけど初めてのことだ。南側も西側も窓のカーテンが引かれてる。照明の無い部屋は陽も遮られて薄暗い。ドア近くに立ったまま美希は俺の首に手を回してきた。抱いてと言う。そのままキスをして舌を絡めた。自分の胸を誇示するかのように、何時もより強く俺の胸に押しつけてくる。我慢できずに唇を離した。

「美希」。

 声がかすれた。

「脱がせて」。

 美希の瞳を見つめ返した。背中に回していた手を美希の両肩に持って行ったけど、そこで止まった。

 美希は自分でピンクの長袖のポロシャツを脱いだ。白いシュミーズを通してピンクのブラジャーに包まれた膨らみのある胸が目の前だ。俺の視線に構わずスカートもシュミーズも脱いだ。ブラジャーと同じ色をしたピンクのショーツだ。ブラジャーもショーツも同じ花柄の刺繍だ。

 俺の首に手を回して、今まで以上に唇を吸い、舌を絡めてきた。そして、俺の学生服の胸前のボタンを外し始めた。

美希の手を押さえると、自分で後のボタンを外した。ワイシャツを脱ぎ、ランニングシャツを脱ぎ、学生ズボンを脱いだ。ベッドに腰掛けて靴下も脱いだ。腕時計も外した。腰掛けて俺の右肩に頬をすり寄せて居た美希を振り向きざまに抱きしめた。

 そのままベッドに押し倒した。今までに何度も想像の中で美希の裸身(はだか)を思い、美希を抱き、自慰を繰り返してきた。今、目の下に温もりのある美希が居る。

 

 欲望は簡単には収まらなかった。美希の頬を流れる涙に戸惑って最初は行為を止めようとした。美希は首を横に振り、嬉しいと言ってしゃくり上げ、余計に俺を放そうとしなかった。

 二つの形良い美希の胸の乳首を吸い、美希の腰を割ると、キスをしたまま二人が結ばれることを求めた。愛してる。言葉にして美希と初めて一つになった。美希の頬を流れる涙を唇で拾った。

 

 枕元に白いタオルが置かれてある。それで汚れた体を拭いてあげようとした。美希は俺の動作を止め、首を振った。上半身を起こすと俺の左肩に頭を置いて、寄っても寄り切れないように裸の身体全体を押しつけてきた。抱きしめた。美希の左胸を愛撫していたけど堰を切った激流のようにまたベッドに押し倒した。求めた。

 

 足下の毛布を引き上げ、寒くないかって聞いた。今朝は五度を切る冷え込みだった。テレビの天気予報は冬を前にこの秋一番の冷え込みと言った。最高気温が十五度ぐらいと言っていた。キスをしながら毛布の中の美希の裸の背中、腰のくびれ、臀部の膨らみを確認した。

 しばらく俺の左胸に右頬を乗せ、左手を俺のお腹に回していた美希だ。目をつむり、穏やかな顔をして居る。そして、言った。

「このまま死んでもいい」。

 思わず顔を見た。

「馬鹿な事を言うなよ」。

 美希の身体を引き寄せた。細かった。今までの(よろこ)びを忘れて急に美希を失う恐怖に襲われた。俺は言葉もなく、美希の温もりで美希の生命力を確かめている気がしてきた。