(サイカチ物語・第四章・古城巡り・25)

 

 箸を置いて、しばらくパンフレットの絵図を見ていた梨花だ。

「こうしない?。熊谷君の言うとおり朝から二時間歩くのは止めましょう。ご来光を拝んでキャンプ場から碁石岬までの往復約一

 時間、徒歩と写真撮影は同じ。

  その後、六時頃からここでご飯を炊いて食事を済ます。後片付けと管理所で必要な手続きをする。熊谷君と違うのはその後。

 このパンフレットだと穴通磯の近くにもう一つの駐車場が表示されているでしょう。その駐車場までは距離的に所要時間はバイ

 クで五分。かかったとしても十分でしょ。ここを七時半から八時までに出発して穴通磯側の駐車場に行く。

 駐車場から穴通磯まで徒歩三分とある。穴通磯を見学する。

  穴通磯から北緯三十九度線の標柱のある所までの間が片道徒歩十五分とあるから、穴通磯も標柱も両方見ても駐車場に戻るま

 で往復四、五十分。標柱の先にある赤磯と大浜とある景観ポイントは諦める。それでどうかしら」。 

  良く理解できたかどうかはともかく女性三人は折角来たんだから穴通磯をバックに写真を撮りたい、北緯三十九線の標柱前で

 記念写真を撮りたいと梨花の修正案に賛成だ。

 

「ちょっと地図を見てみよう」。

 熊谷を急かして彼の持っている岩手県地図を広げた。このキャンプ場からの帰り道、小友、脇の沢を通過する明日の予定を変更するとして穴通磯側の駐車場から大原方面に行く街道にどう繋がるのか、大原城址に向かう今泉街道に出る陸前高田の通過予定時刻午前九時とどう違ってくるのか、確認が必要だ。熊谷と一緒に地図とにらめっこした。

 

 梨花の言う穴通磯側の駐車場からは県道三十八号線に出られる。そこから大船渡碁石海岸インターに出て国道四十五号線を行けば、日程表の通りの陸前高田で国道三百四十三号線の今泉街道に繋がる。しかも、穴通磯側の駐車場を午前九時までに出れば、三日目の日程表の陸前高田通過予定時刻午前九時二十分に間に合いそうだ。

 それを確認して、熊谷も俺も梨花の提案に乗る事にした。

 

「待てよ。それで借りたテントの返却はどうなる?。管理事務所は午前九時のオープンだよ」。

 俺が気づいて言うと、熊谷が少し考えて言った。

「畳んだテントを俺のセローの後ろに積んで移動するよ。かなりがさバルけど駐車したバイクの上に置いておくだけだから穴通磯

 の見学にも三十九度線の標柱見学にも問題ない、

  見学した後、穴通磯側の駐車場から管理事務所に俺が戻り、返却手続きをする。

 時間のロスになるから手続きを終えたら俺は戻らずに三日目の日程表の通りに小友、脇の沢に回って陸前高田インターに出る。

 及川は穴通磯側の駐車場から京子と梨花の先頭に立って大船度碁石海岸インターに回れよ。陸前高田インターで合流しよう。合

 流が日程表より五分か十分遅れるかもしれないけど、それで行こう」。

 

 熊谷の提案に何とか出来そうだと女性三人も同意した。それでキャンプ場で朝食を摂ることも決まりになる。熊谷がアジの干物三枚に手を付けなかったのは、何がどうあれここで朝食を摂る事を前提としていたみたいだ。朝のおかずにと考えていたのだろう。時計は夜も九時半を回った。

 金網の上に最後まで残っていたイカゲソを俺が、最後、いただきますと言って口にした。

 

 周りはすっかり暗く、遊歩道を照らす街灯だけが鈍い光を放っている。松林の中に生きる虫たちがその光の周りを飛んでいる。松林の先は闇が深い。色とりどりの張られたテントの明かりだけが転々としている。昨夜と同じように潮騒が遠くかすかに聞こえてくる。 

 近くにある各サイトは後片付けを始め、寝る用意に入った。俺達もそれに習った。ゴミ出し、簡易食器洗い、火落しにそれぞれが協力した。

 十時を回ったところで朝が早いから寝ようとなった。昨夜と同じだ。女性軍が先に寝袋に入り就寝体勢を取ってから俺と熊谷が寝袋に入る。今晩も梨花の良いわよーが男二人がテントに入れる合図だ。

 寝袋に入った女性三人の並びは昨夜と同じだった。美希は俺の右側に髪の毛だけの頭を見せていた。見ているうちに何故かホッとする。睡魔が俺を誘う。