(サイカチ物語・第四章・古城巡り・1)

 

             第四章 古城巡り

                一

 待ち合わせ時間に間に合うように家を出た。スカイブルーのヘルメットに青い半袖のTシャツ、紺のジーパン、黒いブーツ、薄い黒革手袋のスタイルにした。朝から三十度を超えるという天気予報に合せて軽装にしたつもりだ。出がけに母が気を付けて行ってよと、珍しく玄関口まで送ってきた。

 

 美希は通学の時と同じいつもの場所で待っていた。坂上に小父さんと小母さんが見送りに出ている。三日ぶりに美希との抱擁とキスを期待したけど、さすがにそれは出来ない。 

 美希は赤いヘルメットを小脇に抱えて、ピンク色のTシャツにベージュのスラックス、ピンクのラインが入ったスニーカー姿だ。背にしていたピンクのリュックサックと手にしていたバッグを受け取り、米二キロが入る自分のバッグと一緒に最後尾に重ねて括り直した。 

「行って来まーす」。

 俺は小父さん小母さんに声を投げ、美希が行ってきまーすと続いた。

「気を付けて行って来てねー」。

 坂上で小母さんが俺の母と同じように言った。

「さあ行くぞ」。

 ホンダPCXに跨がると、後ろに声を掛けた。美希は両手を俺の腹の前に回して来た。走り出して間もなく背中に美希の温もりが広がった。俺の高揚感が一層増す。朝から軽く三十度を超す気温だろう。スピードを上げるエンジン音と当たる風が心地良い。

 

 学校の駐輪場に八時少し前に着いた。熊谷が五人分の寝袋だというグレーのバッグ三つと橙色のバッグ二つ、それと梨花のリュックサックだろう、梨花のカブの後尾に重ねて括りつけていた。

 手を動かしながら、道路交通法上、幅、長さとも積載装置から三十センチをはみ出さないようにしないといけないんだと言う。高さの制限もあるけどそれは心配無いと言う。

 熊谷のヤマハのセローには既に紺色の大きなバッグが括りつけられていた。持っていく予定の物は皆入ったと言う。後は京子が来たらこのクーラーボックスの段ボールを括り付けるだけだと、そのダンボール箱を砂利石の地面に置いていた。

見ると箱に高さ三十、幅二五、長さ四十センチと表示されている。小型のクーラーボックスだった。

 

 まだ京子の姿が見えない。梨花は赤と橙の大きなチエック柄の長シャツにピンク一色のパンツ、橙色のスニーカーだ。誰かの駐輪してある自転車の荷台の所に橙色のメタリックヘルメットが置かれてある。それも彼女の物だろう。

 

「皆早いわねー」。

 最後に登場したのが京子だ。スピードを落としながらの第一声がそれだ。俺の腕時計は八時十分を指している。

「最小限の物を腰のポシェットに入れ、バッグとリュックサックをクーラーボックスの上に括ってしまえば体の動きは楽だよ」。

梨花と同じ姿恰好だ。カブから一旦降りた京子は、熊谷の提案に応じた。

 彼女は横文字の入ったグレーのTシャツと白地に紺の柄が飛び飛びに入ったパンツ、紺色に白の縁取りのあるスニーカー姿だ。バッグは花柄だけど、リュックサックも黒い網紐が入る紺地になっている。ブルーメタ(メタリック)のヘルメットが俺のヘルと少し色が被っている。

 京子の分の荷造りが終わった。

 

「これ、及川のバッグに入るか?」

 熊谷が紺色のビニール袋の塊を手にして言った。懐中電灯、ランタンなど小物の雑貨が入っているという。

「ああ、良いよ、入る」。

 俺は受け取ると、それを自分のバッグに押し込んだ。俺と美希の荷物を積み直した。皆でキャンプ用品を手分けして持ったという熊谷の演出だと分かる。

 

 彼は、俺が積み直しをしている間にガソリンの残量確認、エンジンチエック、クラッチの点検などひと通り各バイク周りを点検した。俺はただ感謝するしかない。

 

「さあ、出発だ」。

 掛け声をかける熊谷に俺は言った。

「その前に、体をほぐすための体操だ」。

「そうだね、やろう」。

 一カ所に集まっていた女性三人も素直に応じた。俺のかけ声でラジオ体操第一、その後に首の回転、手首回し、肩回し腰回し、足の屈伸、足首回しをして深呼吸をした。

 

 車列は先頭に熊谷、次に梨花、京子、俺の順で組むことになった。

「付かず離れず車間を取ること。基本は時速四十キロにする。信号で隊列を分断されたときは後続車を待つけど、信号を渡るときは前の車の動向に関わらず必ず自分で左右を確認して通過する。安全の確認・確保は自己管理が優先だ」。

熊谷がリーダーらしく宣言した。

 彼は黒のメタリックヘルメットに白いマフラー、黒のシャツ、黒ズボンに黒皮のブーツ姿だ。地図など小物を入れてあるという背にしたリュックサックはカーキ色だ。